世界で磨き上げたバーテンディングの技術と知識 鈴木敦氏に聞く‘甘いカクテルのいろいろ’
17歳からバーテンダーの世界に入った鈴木敦氏。ニューヨークのAngel’s Share、ロンドンの64th&Socialで働いたのち現在トロントURSAでバーテンダーとして働いている。
そんな鈴木氏に今回甘いカクテルについていろいろ聞いてみた。
中世ヨーロッパで愛されたスイートカクテル“Atholl Brose”
15世紀にスコットランドで生まれたカクテル。スコットランドのブレンデッドウィスキーをベースにしたカクテルでオートミール、蜂蜜、クリーム、卵が入ったカクテルだ。日本人にはあまり馴染みのない卵の入ったカクテルだが、昔はデザートカクテルとして飲まれていた多くのカクテルに卵が入っていたようだ。多くの人にとってどこか懐かしいこのカクテル、「今でもとても人気があるのです。昔は家庭でも作って飲んでいたようですよ。氷は無しで、最後にナツメグなどをかけて飲みます」、そして鈴木氏は Atholl Broseの他にも2つの有名なクラシックカクテルを教えてくれた。
1つはコーヒーを使わないCoffee Cocktail。冷たいカクテルでブランデー、ポートワイン、卵をよくシェイクして作られる。色味がコーヒーに似ているところからこの名前が付いたそうだ。そしてもう1つがOld Fashioned。ウィスキーやブランデーで作られることが主だが、それぞれが自分の好きなお酒をベースにして角砂糖を入れて食後にゆっくり楽しむお酒だ。
今カナダ人に人気の食後酒“Fernet Branca”
イタリアのお酒でAmaroと呼ばれるリキュールが食後酒としてよく飲まれている。Amaroはイタリア語で苦いと言う意味なのだが、お酒自体は香草系の味で甘みと苦みがうまくバランスされている。アルコール度数も16%から40%と種類によって幅がある。
鈴木氏曰く「Amaroの中で人気なのはこのFernet Brancaです。これはJagermeisterに少し似ていて、食後にショットで飲んだりする方が多いですね。またはデザートカクテルの代わりに、それぞれ好きなAmaroをストレートやロックで飲む、というスタイルが流行っていますね。」
懐かしさ感じる、カルピス風カクテル“The Claremont”
多くの日本人にとって懐かしさ感じる味わいのカルピスは、日本食が広まる今、北米の人にも人気が出てきた飲み物だ。鈴木氏もカルピスを使ったカクテルを上司に出したところ非常に反応が良く、この夏改めてメニューに取り入れた。ただ、カルピス入手が困難だったためにお店でカルピスの代わりに作られたものがHousemade Citrus Horchata。
「Horchataは基本的にはライスミルクにスパイスを入れたものです。でもこれはカルピスを作りたくて始めたので、スパイスの代わりに砂糖、蜂蜜とシトラスのエッセンスを足して作ったのです。結構カルピスっぽい味になったでしょう。カクテルとして日本の要素を足すのに、シソを漬けたウォッカを使ってあとはHoney Kombuchaを使っています。これは1980年代の日本で起こった健康ブームで出てきたものなのです。この場合だと蜂蜜を発酵させたものになります。少し酸っぱい感じの、消化にも良いので体にも良いですよ」
味は少しカルピスに似た甘いカクテル。懐かしい味がいろいろな思い出を連想させてくれる。これはアルコールなしでも作ることができるのでお酒が苦手な人でも、子供でも楽しむことができる。
今新しい日本人に試してもらいた甘いカクテル“Masugarita”
「夏と言ったらテキーラ、テキーラと言ったらマルガリータでしょう!!」と言うイメージから、この夏URSAでは日本の要素を取り入れたオリジナルマルガリータを作った。その名“Masugarita”
「名前の通り、木の升の中でマルガリータを作りました。テキーラはそのままにMezcalというテキーラに似たメキシコのお酒、先ほどのHoney Kombucha、Limepocalypse Juice、柚子シロップとにがりが入っています。普通のマルガリータではグラスのふちに塩が付いているのですが、それをにがりに代えて升の香りと一緒に楽しんでほしいです」
フルーティーなすっきりとした甘さのカクテル・Masugaritaはこの夏にぴったりだ。
家で楽しむ簡単お洒落カクテル
家でも簡単に楽しめるカクテルはないかと聞いてみると、「何かを漬け込んでみるのが、変わっていていいと思います」と、鈴木氏。「お酒に何かを漬けこんでみたり、例えば、ジンにシソを入れたりですね。1晩半冷蔵庫で寝かしてから、お酒と香りが一体になったところでシソを取り出します。タイミングは季節や物によって変わってしまいますけどね。こうやって作ったジンでジントニックを作るだけでも普段と違ったお酒になりますよ。季節のフルーツやハーブ、スパイスそれとコーヒーやティー類などがお勧めです。ルールがないので自由な発想でいろいろやっている人が多いですよ」
バーを気軽に楽しむコツ
「バーを気軽に楽しむには、聞いてしまうのが一番です。カクテルの名前を知らなくても、甘いものが飲みたい、炭酸が入っている方が良いのか、無い方が良いのか。フルーツ系なのか、クリーム系なのか…自分の飲みたいものを伝えて、コミュニケーションを楽しんでみてください」
URSA
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