トロント・ライフスタイルを豊かにするオンタリオ州を中心としたBIGニュース
2017年ももう2月、今年はどんな一年になるのだろうか。編集部では長くグレーゾーンだった嗜好品大麻の合法化や5年前に閉鎖されたオンタリオプレイスのリニューアルオープン、ワンダーランドの新アトラクション、車の自動運転実験など今年注目を浴びているBIGなNEWSに注目。
2012年、再生計画のため一部を残し閉鎖となってしまったオンタリオプレイスが2017年夏、都市型複合公園施設として待望の再開園を果たす。
もともとオンタリオプレイスは、オンタリオ湖に浮かぶ3つの人工島にまたがった広大なエンターテイメント・パークとして1971年にオープンした。ピクニックサイト、野外コンサートホールやマリーナを擁し、トロント市民の憩いの場として長年親しまれてきた。しかし、2012年当時、オンタリオプレイスを閉鎖することで、オンタリオ州は年間2000万ドルもの資金を節約することができ、施設維持のためにはパークの刷新が必要として、州は一時オンタリオプレイスの閉鎖を決定。建国150周年を迎える本年2017年の再開園を目指し、これまで開発が進められてきた。
今回の再開発の目玉は、7.5エーカーにも及ぶ広大なウォーターフロントパークとウイリアム・G・ディビストレイルという遊歩道の設置で、今年の夏に一般公開される。建国150周年を祝して、ライブやフェスティバルなどの様々なイベントも催される予定だ。
長きに渡る再開発を経て生まれ変わったオンタリオプレイスは、オンタリオ湖とトロントの街並みを上手く融合させた、まさに都市型自然公園といえるだろう。オンタリオプレイスの再開園により、トロント市民の生活がより充実したものになることは間違いない。
Ravine with Moccasin Identifier
パークの入り口となる峡谷。ここからオンタリオ湖を垣間見せることで、来園者の期待を膨らませる。
The Pavilion
オンタリオプレイスの象徴的な野外パビリオン。美しい庭園に囲まれ、様々なアクティビティやイベントに利用できる。
William G. Davis Trail
オンタリオ湖畔沿いに設けられた遊歩道。オンタリオプレイス開園当時の州首相であったBill Davis氏の名に由来する。遊歩道からはオンタリオ湖とトロント市街地が一望できる。
Upper trail
常緑樹に彩られた、サミットにつながる遊歩道。
Rocky Beach and Fire Pit
トロント市街地の夜景を眺めながら焚き火ができる、なんとも贅沢な岩場のビーチ。
Summit
公園の南端にある高台。緩やかなスロープで登ることができ、オンタリオ湖を一望しながら眺める夕日は格別に違いない。
#2:F1カナダグランプリ、2017年もモントリオールで開催決定!
circuitgillesvilleneuve.ca
モータースポーツの最高峰であるFormula One(通称F1グランプリ)。1年間最多21戦で争われるチャンピオンシップレースで、2017年もFormula 1 Grand Prix Du Canadaがモントリオールのジル・ビルヌーブ・サーキットにて開催されることが決定した。これでカナダグランプリは2010年から8回連続の開催となる。
もともと今年のカナダグランプリは開催自体が危ぶまれており、昨年9月にF1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が発表した2017年の暫定スケジュールにおいて、カナダグランプリはドイツ、ブラジルと共に保留扱いとなっていた。2014年に2024年までの10年開催契約を結んでいたにも関わらず、である。これは開催契約に盛り込まれていた、老朽化したサーキット施設の修繕が予定よりもかなり遅れていたためとされている。
しかし昨年11月、モントリオールのドニ・コデール市長がTwitterを通して「F1とプロモーターの間で基本的に合意が成立した。2017年にカナダグランプリは開催される」とコメントを発表。同日、主催者側は昨年11月24日からカナダグランプリのチケットを発売することを明らかにした。今年、F1カナダグランプリは初の開催から50周年を迎える。弱冠18歳のカナダ人ドライバー、ランス・ストロールがF1デビューを果たすことも決定しており、主催者側は「ランス・ストロールと共にカナダでのF1、150年目を祝う」というタイトルの声明も発表、節目の年に久々のカナダ人F1ドライバー誕生を喜ばしいことと語っている。
開催地となるジル・ビルヌーブ・サーキットはもともとサーキット・イル・ノートルダムと呼ばれており、セント・ローレンス川の中州にある人工島に1967年に建設された。初開催となった1978年のレースで優勝したカナダ人ドライバー、ジル・ビルヌーブが1982年に事故死すると、彼の偉業を讃えてジル・イルヌーブ・サーキットと改名された経緯がある。トリッキーなヘアピンカーブに超ロングストレートが配置されたコースで行われるレースはエキサイティングで見応えがあり、F1の中でも人気の開催地の一つとされている。
2017年カナダグランプリの開催は第7戦目6月11日。チケットはオンラインで購入でき、本戦が行われる11日のチケットは99ドルから。一時危ぶまれた開催からの反動と、久々のカナダ人ドライバーの参入とあって、今年のカナダグランプリは一段と盛り上がることに違いない。
#3:嗜好品用マリファナ解禁
近年日本でも何かと話題の大麻。カナダでは既に医療用大麻は合法になっており、昨年のマリファナデーである4月20日、世界の薬物問題に関する国連の特別会合で、2017年春をめどに嗜好用大麻も合法化する意向をカナダ保健相大臣のフィルポット氏が発表した。
AFP通信が入手した発言録によると、フィルポット氏は「合法化は多くの国の現状と相いれないが、若者を守り、公共の安全を高める最善の方法だと確信している」と説明。大麻使用を禁止するカナダや他国の法は厳しすぎ、効果もないことなどを理由に挙げた。また、嗜好用大麻合法化は、もともとジャスティン・トルドー首相が総選挙の際に公約に掲げていた事案の一つであり、トルドー首相自身も過去に使用した経験を認めている。
今回の法改正では、大麻を子どもから遠ざけること、大麻販売で違法に利益を得ている犯罪者を取り締まることなどを草案に盛り込むことで、既に暗黙の了解的に蔓延している(14年の調査によると、人口約3500万人のカナダにおいて、100万人もの人が日常的に大麻を使用しているとの報告がある。)嗜好用大麻を「経済に取り込み、正しく扱う」ことが目的となっていることが伺える。
ロイター通信によると、カナダにおける嗜好用大麻の市場規模はなんと226億ドルにものぼり、生産量は医療用大麻を遥かに凌ぐとのこと。隣国アメリカでも昨年11月、新たにカリフォルニア、マサチューセッツ、ネバダ州も嗜好用大麻を合法化し、首都ワシントンをはじめ嗜好用大麻合法化の州が増加しつつある。そんな中アメリカへの大麻輸出も検討されており、カナダにとっては大きなビジネスチャンスといえるだろう。
カナダ人の多くがこの合法化案に肯定的のようだが、現段階で専門委員会の見解は40%が賛成派、36%が反対派、残りは未決定とのことで、今後も目が離せないトピックとなっている。
日本では医療用大麻ですら違法とされる現在、私たち日本人もここカナダで、大麻とどう向き合っていくのか考えていかなければならない。
#4:2017年カナダへの移民増加か
先のアメリカ大統領選の結果に伴い、一躍注目を浴びることとなったカナダ。アメリカに住み続けることが難しくなった人や、新政府の方針に反発を覚える人々がカナダへ大量移住してくるのではないかと各方面で予測がされている。昨年3月に開催されたハフィントンポスト・カナダ社主催のグローバル・タウンホール・ミーティングでは、ジャスティン・トルドー首相が「トランプ氏が大統領に当選したら、カナダに逃亡しようと考えているアメリカ人を歓迎する」と冗談交じりに発言した一幕もあった。そして、ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に当確直後、カナダの移民サイトがダウンしたアクシデントも記憶に新しい。
そんな中、カナダ政府は2017年、30万人もの移民を受け入れると発表した。2011年から2015年までの移民数は平均して年間約26万人。4万人もの押し上げとなる。
現在のカナダの人口は約3500万人。移民局長であるジョン・マッカラン氏は、「さらなる移民の受け入れは、カナダの人口統計学上良い政策方針である」と述べている。移民受容はカナダ国民の高齢化による労働力の減少を相殺し、世界経済に対して競争力を保つ重要な役割を担っていると考えられている。
ただし、上記のように、カナダ移民受容の目的はより経済力を高めることにある。そのため、カナダ政府が発表したクラス分類別移民受容予定人数によると、2016年と比較して2017年は技能を持った人々やビジネスに付随する移民、即時にカナダ経済に貢献できる人材とそれに伴う家族の受容予定人数は増加しているのに対し、難民としての受容予定人数は減少している。これにより、2016年に対して2017年の経済的移民数は7%増加すると予測されている。
また一方、政府は移民政策に肯定的な中、Mainstreet Research社が行った世論調査によると、トランプ氏が大統領になったことにより、カナダに移住するアメリカ人を受け入れるか否かというアンケートに対して、全体の7割以上が否定的な意見であるということが判明した。アメリカの大統領選以前から、冗談も交えて「トランプ氏が大統領になったらカナダに移住する」と公言している人々が多く見られるが、実際は気軽に移住することはやはり難しいようだ。
#5:カナダズ・ワンダーランドに新アトラクション登場
1981年にオープンし、200種類以上ものアトラクションが楽しめるトロント随一の巨大アミューズメントパーク、カナダズ・ワンダーランド。今年、その大人気遊園地に待望の新アトラクションが加わる。
・Muskoka Plunge(ムスコカ・プルンジ)
巨大なプールエリア、スプラッシュワークスゾーンに加わるウォータースライダー。高さ18メートルからフリーフォールのように一気にスライダーを急降下し、S字カーブや一回転するチューブの中を駆け抜ける。最大速度はなんと時速40キロ!!
・Soaring Timbers(ソーリング・ティンバーズ)
北米では初となるタイプの世界有数の絶叫マシン。乗客を乗せた2台の大きなゴンドラが、空中で360度回転しながら弧を描く。これまでの絶叫マシンにはもう飽きたという方も、心臓がぎゅっと掴まれるようなスリルを満喫できること間違い無し。
さらに新アトラクションとしての学生・ユース向けイベントも企画されている。絶叫マシン設計に欠かせない数学や物理学を学ぶセミナーやマーケティングなど実際にカナダズ・ワンダーランドにある設備や経営経験を通して経験することが可能。
この他にもワンダーランドでは学生・ユース向けプログラムが多く企画されており、詳細はワンダーランドホームページで確認可能。
今年の開園日4月30日が待ち遠しい。また、スプラッシュワークスゾーンは天候によってオープン初日が決められる。通常は5月末頃の予定。
編集部Pick Upイベント情報『Soaring Timbers Day』
■ 日時:5月5日
■ チケット価格:27ドル43セント(税抜き・入園料含む)
■ イベント内容:9〜10時、2015年に加わった大人気アトラクションSkyhawk(スカイホーク)の乗車。10時30分〜、ワンダーランドシアターにて、ソーリング・ティンバーズの制作に関わったエンジニアやデザイナーによるセミナー
#6:BlackBerry社、車の自動化運転の実験に着手
日本でも小型スマートフォンとして、一時ビジネスマンを中心に普及したBlackBerry。実はカナダの会社(本社はオンタリオ州のウォータールーに所在)だということをご存知だろうか。
2006年、NTTドコモから販売が開始された日本でのBlackBerryだが、iPhoneをはじめとした相次ぐ他スマートフォンの台頭による市場激化により規模は縮小。2010年度には4700万人を越えた同端末の総加入者数は、2012年度の市場シェアでは世界市場でわずか3.4%、アメリカでは2%にまで落ち込んだ。日本でも残念なことに今年3月31日をもって、サービスが中止されることが発表された。
しかし、BlackBerry社はスマートフォンの開発のみを取り扱っているわけではない。同社の子会社「QNX」は自動車業界においてセキュアOSを供給する大手サプライヤーである。2016年12月にAutonomous Vehicle Innovation Center(AVIC)と呼ばれる自動車の自動化運転実験施設を立ち上げ、このオープニングセレモニーにはジャスティン・トルドー首相も参加し話題となった。また同社は最近、オンタリオ州運輸省から自動化運転車をオンタリオ州の公道にて試験する承認も受けており、これらに伴いBlackBerry社は現在継続中、また今後浮上してくるであろうプロジェクトに向けて、地域のソフトウェアエンジニアを採用する予定と宣言しており、カナダの雇用にも大きく貢献するとみられている。
自動車サービスを取り巻くインフォテインメント(情報と娯楽を融合したもの)やテレマティクス(移動体に携帯電話などの移動体通信システムを利用してサービスを提供すること)システムの分野では、Tesla Moters社の速度を監視し安定させるシステムに加え、既存のタクシーではなく一般人が自身の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶサービス「Uber」、Googleの持ち株会社として設立されたAlphabet社が自動化運転プロジェクトを進めている。これらに対してAuto Forecast Solutionsの分析者であるSam Fiorani氏は、「BlackBerry社のソフトウェアはすでに世界中の何千万台もの自動車に搭載されおり、同社が安全性まで証明できるならば、自動化運転車両の市場を完全に独占することができるだろう」と述べている。
安全性に対する懸念やコストの面でまだまだ問題はあるが、イノベーションの世界的リーダーとしてカナダの存在感を今一度示すため、是非とも成功させて欲しいプロジェクトである。
#7:カナダグースが早ければ今月上場予定評価額2000億円前後か
高級ダウンブランドとして有名なカナダグース。“Made in Canada”がポイントの同社は1957年にMetro Sportswear Ltdという名前で創設され、1970年代に作られたスノーグースというラインアップがカナダ北部やシベリア、アラスカといった極寒の地で生活する人や南極探検隊などのプロフェッショナルに製品が提供され、そこから得られたデータを活かして改良、生産されたものが現在のカナダグースである。
1着1000ドル近いカナダグースのダウンはラグジュアリーブランドに分類され、カナダ国内のみではなく、世界各地でもその名を広め続けている。そんなカナダグースがIPOに向けて準備中であるとウォール・ストリート・ジャーナルやファイナンシャル・ポストで昨年10月に報道された。
カナダグースは2013年に主な株式を投資会社Bain Capital LLCに売却し、新しい経営方針の元、2014年には年間二桁成長を遂げた。また、昨年はヨークデールモールやニューヨークに旗艦店をオープンし、国内だけでなく国際的なセールスも大きく飛躍を遂げている。
年が明けた1月17日現在、未だにカナダグース、Bain Capital LLC双方からのオフィシャルコメントは発表されていないが、Bloomberg NewsやThe Globe and Mailなどビジネス各紙は早くて2月、または3月には上場予定であると報道し、カナダグースは上場の際には自社株の10%〜15%ほどをカナダ・アメリカ両国で販売する予定で、評価額は2000億円前後になると予想されている。
過去10数年でIPOを行なった服飾関連会社は10社ほどであり、昨年上場し460億円を獲得したAritzia Inc.や2007年に上場し377億円を獲得したルルレモンに続くカナダ企業の活躍に注目したい。