数字で見るカナダ&トロント
住めば住むほど味が出て多くの人に愛されている私たちの都市の魅力をいくつかのカテゴリーで数字で見てみましょう。
カナダが移民国家であることは言わずと知れた事実であるが、他の国からの移民達が国にもたらす利益というものは計り知れない。政府は今後も移民受け入れ数を増やす方向で、その理由は高齢化が進む中で、経済成長を持続させるためである。
研究者たちは現在から2100年までの人口分布と労働力の変化、医療システムや年金保証システムの政府の支出額などを調査した報告書の中で「カナダの高齢社会化は、カナダが潜在的に秘める経済成長に大きな衝撃を与えることになる。今よりも緩やかな経済発展が投資支出の低下を引き起こす中、労働力の低下は家計支出額を低下させることにつながるだろう」と警告し、また「移者数を増やすことはカナダの労働力の成長を長い期間支えることにつながり、より大きな経済成長を引き起こすことになる」とも述べた。
カナダ産業審議会の調査によれば、現在では毎年120万人の人口増加が見られるが、着実に増えている死亡者率や出生率の低下により、数年後にはこの数値は徐々に下がっていくとみられており、移民受け入れ増加はその減少率低下の一端を担う。同時に現在の出生率などから予想される年間経済成長率2%も2.3%まで上昇する見込みだ。しかし、政府は高齢化社会を食い止め、カナダ経済の発展を進めていくにはこれから先25年間の間に、移民受け入れ増加以外にも策を打つことが重要としている。
優れた学校が集まるエリアベスト10のうち9つはブロアーストリートよりも北に位置している。
上記エリアを見るとNorth Riverdale以外はブロアストリートより北に位置し、実際にカレッジ・大学への進学率を比較すると東西では大差はないが、ダウンタウン平均が76%であるのに対しアップタウンでは82%。更にハイウェイ401以北、Willowdale Eastエリアでは86%まで上がる。そしてTDSB内で最も進学率のいい高校はBathurst ManorにあるWilliam Lyon Mackenzie CIだ。数学やテクノロジーに力を入れており実に95%以上の生徒がそのままカレッジや大学に進学している。
また、トロント市内では大卒者が多いエリアと少ないエリアとに分かれる傾向があり、少ないエリアはあまり治安が良くない地域として認識されている。
世界経済フォーラムが行っている国際競争力ランキングの中の、世界で最も堅実な銀行部門でカナダは8年間連続して1位を獲得した。2016年の最新版では惜しくも3位となったが、依然として国力を図る上で大きな指針ともなる金融情勢の安定性を見せている。
このランキングからも世界的に見てカナダの銀行がどれほど信頼性の高いものかということは一目瞭然だ。現在カナダが直面している住宅価格の高騰問題も認識した上で、それでもなおカナダの銀行の堅実性、安定性が評価されている。
1930年代の世界恐慌や2008年のリーマン・ショックが起こった時、カナダ内で倒産した銀行は1つもなく、受けた影響も世界に比べて少なかった。IMF(国際通貨機関)も、他国と比べてカナダには銀行のためのしっかりとした規制システムがあることを認め、OSFI(Office of the Superintendent of Financial Institutions)とFCAC(Financial Consumer Agency of Canada)という2つの機関が主に取締りを行っており、カナダの銀行法は5年ごとに見直され、産業の変化などに相応しいものであるかをその都度確認し、変更が必要となれば更新される。そういった努力が今回の結果に結びついているのだと言えよう。
カナダの若者たちにとって「将来何になるか?」という疑問は、学生の時だけではなく大人になってからも続いているようだ。Statistics Canadaは2000年、15歳のカナダの若者達に将来どういった職に就きたいと思われるかを調査、また2年ごとに同じ質問をし、彼らが25歳になる2010年まで統計を取り続けた。
十代の頃から進路が決まっている若者は全体の15%ほど(10%が15歳から一貫しており、5%が17歳から一貫している)で、多くの若者が大学を卒業した後も自身の進路について迷っている。また、大学進学に重きを置いている両親や、社会的経済地位の高い両親の元生まれた子ども達は、そのような家庭環境で育たなかった子ども達と比べ、若い頃から大人になるまで一貫して同じ職を希望し、また大人になった時の職の決定率が高いといった結果も出ている。
若者が仕事を決められない理由の一つは同じ学校の卒業生や自身の周りで取得した学位と関係のない仕事に就く人が多く、キャリア形成に不安を感じているからだ。その不安は若者の離職率をあげ、結果として失業率の上昇につながっている。大学を出たばかりの若年層にとって経験・能力重視のカナダ社会の中で職を手に入れることは非常に厳しく、本来の希望職ではない非正規雇用の仕事に就く人や、復学し新たなスキルを求める人も少なくない。この状況の中、一体どのようにしてキャリア形成していけば良いのだろうか。決定的な打開策がない限り、カナダの若者達の葛藤は今後も続いていくとみられる。
トロント大学付属大学院ロットマンスクールマネジメント校の戦略経営科で教授を務めるサラ・カプラン女史は「現代に至るまで、カナダの文化としてはあらゆる角度から多様性を重要視してきているのにもかかわらず、男女の給与格差といった問題の解決においてはかなり遅れており、現在は停滞期に入ってるといえるでしょう。」と述べる。
オックスファムカナダとカナダ代替政策センターはこの格差に対し、男女の労働時間の差や教育、経験などいずれに基づくものでもないと分析する。原因の一つとして男女間で就く職種の違いが挙げられている。97%が男性を占めるトラックの運転士が年間平均45K稼ぐのに対し、97%が女性を占める保育士は年間平均25Kなど。しかし、同じ職種であったとしても、ナノス・リサーチが1000人のカナダ人に行った調査では、男女ともに大多数がこの給与格差を認識しており、そのような給与格差がある会社では働きたくないと考えているという結果が出た。ジャスティン・トルドー首相が新内閣発足の際、男女比率を同じにしたことは記憶に新しいが、カナダに根強く残る男女の給与格差問題は今後どのように解決への道を辿るのか、ぜひ注目したい。
クラブやレストランなどエンターテイメントが多く集まるエリアで、トロント平均の約2倍の暴力沙汰や器物破損などの事件が起きている。その内約900件以上が暴行事件で、被害者の半数以上は男性。ちょっとしたイザコザから喧嘩に発展してしまうケースが多いのでガラの悪い人に絡まれないように気をつけたい。
暴力や薬物使用によるトラブルが原因の事件はダウンタウンに集中しているが、空き巣や窃盗はトロント各所で起きており、どのエリアが安全ということはなく戸建、コンドミニアム問わず被害に遭う可能性があるので十分注意したい。ただ、上記表にあるようにトロント西に位置するエトビコ、特に空港付近の北部では強盗事件や車の盗難が他の地域に比べ件数が多いので注意したい。
トロントは比較的安全だが、2016年は過去10年間の間で最も銃犯罪の多い年となり、殺人事件も2010年の61件と並ぶ60件(内29件が未解決)と悪い意味での記録を残す年となった。その背景には一般人が短絡的に起こした事件ではなく、組織的に計画された犯罪が増えているからだ。今年も3月に入るまでで既に60件以上の銃犯罪が起こっており、これは昨年とほぼ同じペース。それを受け、トロント警察では銃犯罪に対する対応の仕方を変更するとともに、3年間の雇用凍結と組織改革で多様化するトロント社会に対応していく方針だ。
過去10年近くに渡り、トロントの不動産価格は著しく上昇しており、一部で不動産バブルだという意見も出ているが、またその一方でグローバル化に伴いカナダ最大の都市であるトロントに移民や投資家の注目が集まっている現状がある。現在も高層コンドミニアムの建設は続き、ウォーターフロントなど一部のエリアでは住居の8割近くがコンドミニアムで占められ、戸建ての価格はさらに上昇し続けている。
ダウンタウンの方が平均が低いのはコンドミニアムブームに影響を受けており、不動産管理会社SkyViewSuitesが行った調査を元に作られた不動産価格マップを見ても、トロント市内で最もコンドミニアムが多いウォーターフロントエリア(ユニオン駅)はダウンタウン内でも比較的値段が低い傾向にある。
しかし、家賃の価格平均マップを見るとダウンタウンの方が若干高いだけで、全体的に価格に大きな変化は見られない。冬が長く厳しいトロントでは駅近くという利点は誰にとっても譲れないポイントのようだ。トロント市内で比較的家賃が低いエリアはやはり交通の弁があまり良くない部分に集中している。
通りを歩けば、美術館やたくさんのアートを見かけることも容易いトロント。そんな芸術と文化に溢れた街は、現在、重大な問題を抱えている。今年トロント芸術文化振興会は、市が2017年までに一人あたりの芸術資金調達額を$25に到達させる取り組みを続けることに対して称賛の意を示した。しかしながら、この$25ドルという数字は2003年の時点で、すでに目標としてあげられていた数字でもあり、言い返せば、未だにその数字に達していないことになる。
他の州と比べると、モントリオールでは一人あたりの芸術資金調達額は2012年時点で$55まで成長しており、バンクーバーやカルガリーでは2013年時点、一人あたりの芸術資金調達額は$40を超えている。
Hill Strategies Researchによると、芸術家達はカナダの標準レベル教育よりはるかに高い水準の教育を受けているにもかかわらず、彼らの収入はカナダの平均収入よりも約1万5千ドルも低いことが判明した。都心部では生活費も嵩むため、こうした低収入問題は彼らをより一層悩ませており、もしトロントが市としてこの問題を対処することができなければ、これまでどおり彼らがアートを通して市に貢献し続けることが難しくなるのは目に見えている。トロント芸術文化振興会は、新たな目標と芸術家達のニーズを満たすような資金調達に対する展望を話し合いたいとして、市に声をあげ続けている。
2016年9月にカナダ観光局が出した統計によると、世界各国からのカナダへの旅行者数は前年と比べて12.6%増加したとの報告があった。特に2016年7月、8月の旅行者数はそれぞれ53万9千人、53万7千人を記録し、これらの数字は1972年から続く調査の中で最高記録と2番目に高い数値となった。これら2ヶ月間の数値の前年比は、それぞれ17%増、18%増とかなりの増加率である。
そして注目すべきは数字だけではなく、その内訳である。国別の旅行者数の変化をみると、以前より旅行者数が多いアメリカではなく、その他の国の旅行者数の増加が目につくことだろう。2016年10月時点での変化を見てみると、中国や韓国といったアジア諸国からの旅行者割合が高まっていることが判明した。
これらの理由としては近年のカナダドル安傾向も、海外からの旅行客の増加に一役買っているのだと予想されている。また、カナダ政府は11月、カナダに空路で入国する際に必要とされる電子渡航認証eTAの性別欄に男性、女性、そして“その他”の欄を設けたことが話題になった。性別に関する様々な議論がなされるこの時代、カナダの首相ジャスティン・トルドー氏がLGBTに理解を示していることは有名である。そのリーダーが率いる国家全体も性別にとらわれず、いろんな国からの渡航者を受け入れる体制が整ってきていると言え、世界規模で見るとまだこうした国はほんの一握りであることが現状である。このようなカナダの観光業の勢いを絶やさぬためにも、カナダ環境産業協会の副会長であるロブ・テイラー氏は引き続き政府からの支援を求め、長期に渡る促進活動が必要だと語気を強めた。