新たなるページへ – Toronto Metropolitan University -|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情
一年程のプロセスを経て、今年4月下旬にRyerson UniversityがToronto Metropolitan University(TMU)と大学名称を変更しました。この改名は、Egerton Ryerson(エジャートン・ライアーソン)から由来している前大学名の負のレガシーを乗り越え、将来を見据えるためのいくつかのステップの一つである、と位置づけています。
Ryerson氏はカナダの先住民寄宿学校制度の創設に携わった人物であるとされ、昨年数ある寄宿学校跡地から、墓地のない215人もの子供の遺骨が発見された影響を受けて大きな批判を集めていました。
TMU大学歴史学部のCatherine Ellis教授は、「私たちは一大学機関として、19世紀の植民地統治の歴史を追悼していくことを本当にしたいのかどうか確認していく必要があります」と述べています。そして「私たちは、新しい未来に目を向けた改名だと思っています。新しい大学名には、次の7つのジェネレーションへ、という先住民族の意味も含まれています。そして、この大学名には、私たちはどんな祖先になりたいのか?という答えも含まれています」と述べています。
2020年の秋、TMU大学のプレジデントであるMohamed Lachemi氏は、Ryerson氏の負の遺産に対応するために、Standing Strong(Mash Koh Wee Kah Pooh Win)特別委員会を設立しました。Ellis教授は、TMU大学専属の先住民族の長老Joanne Dallaire氏と共に、Standing Strong特別委員会の共同議長を務め、去年の8月に大学名称変更案を含む22の提案書を作成し、大学の理事会で可決されました。
大学名称変更案に関しては、諮問委員会が設置され、3万以上に及ぶ市民アンケート結果の中から約2千のユニークな名前が選ばれ、パブリック・コンサルテーションを経て決定されました。「私たちは、市民アンケートを通じて沢山のアドバイスをいただきました。殆どの皆さんからは、新しい大学名には場所、大学のミッション、ビジョン、価値観などを反映して欲しい、との事でした」とEllis教授は付け加えています。
一時期、「X University」と先住民族の学生運動によってブランド変更された同大学の名前があります。これには、白人至上主義への反対やRyersonという名前の権力などを取り除くための様々な意味が含められており、新しい大学名称変更案には時間を要したそうです。同大学所属の社会学者で先住民族のEva Jewell教授は「私たちは、今は亡き先住民寄宿学校制度の創設者へ非難し続けることへの意味を考えると共に、将来私たちが植民地開拓者たちを称えることのない世の中になるように希望していきたい」と述べています。
Ellis教授とJewell教授には、大学名称変更以外にもまだ沢山やらなければならないことがあります。例えば、同大学のキャラクターであるEggy the RamはRyerson氏の名前と星座から由来しています。そして、新しい副専攻Black Studiesの計画や、Anti-Black Racism反黒人種差別や Truth and Reconciliation Commission真実和解委員会への誓約などがあります。Jewell教授は最後に、「私たちにはまだ先が待っています。A new chapter(新しいページへ)は私たちのスローガンでありますから」と述べていました。