(続)10K PHDS PROJECT 博士号取得者の就職事情 | University of Toronto|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

 先月号に引き続き、今回も「10,000 PhDs Projects」の調査結果の中から私が気になった項目をいくつか取り上げていきたいと思います。

1.学問分野別によって異なる就職先

 前回でもお伝えした通り、トロント大学PhD取得者は様々な仕事に就いていますが、分野別に比べるとどのセクターへの就職率が高いのかなどの傾向がよく分かります。

 表1では4つの学問分野別(Humanities、Social Sciences、Life Sciences、Physical Sciences)による就職先の傾向を表したもので、Tenure-stream Faculty(大学等の教職員)への就職率が最も高い分野はHumanities (36%)とSocial Sciences(36%)のみで、Life SciencesではPost-secondary Education(PSE)(大学などの高等教育機関)への就職率が最も高く(29%)、Physical SciencesではPrivate Sectorへの就職率(34%)と最も高い傾向が見られます。

2.民間企業へ就職したPhD取得者

 Public Sectorへの就職が最も高い分野はSocial Sciences(10%)とLife Sciences(15%)で、PhD取得者はカナダ政府(連邦、州、自治体)や病院などへ就職をする傾向が見られ、その多くはリサーチまたは政策などのプロジェクトに関わる仕事に就くようです。

 トロント大学PhD取得者がPrivate Sectorなどの民間企業に就職する傾向が年々増加しています。表2では民間企業の中でPhD取得者が最も多い職種はBiotechnology/Pharmaceuticals(バイオテクノロジーと製薬業界)(26%)で主にLife Sciencesからの卒業生が多く就職しています。次に多い職種はEngineering/Computing Technology (14%)、Information Technology(10%)とBanking、Finance and Investment (10%)で主にPhysical Scienceからの卒業生がカナダ国内大手銀行や投資銀行などへ就職しています。特にIT企業への就職先はGoogle、Microsoft、Intel、IBMなどでカナダ国内やアメリカで就職をするケースが多い傾向があります。「Other」(深緑色で表示)とされた職種(12%)は主に一般企業で働く心理学者やソーシャルワーカーなどとなっています。

3.世界へ羽ばたくトロント大学PhD取得者

 トロント大学PhD取得者はその知識と能力を生かし、なんと97か国で仕事に就いています。表3のグラフはPhD取得者のステータス別(留学生、永住者、カナダ人)にカナダ、アメリカ、その他国で就職した割合を表したもので、留学生と永住者はカナダ国内で就職する割合が多いですがアメリカやその他国で就職するケースも見られます。カナダ人PhD取得者は国内での就職率が最も高く、アメリカで就職する場合はポスドクとして仕事に就く傾向が多いようです。

 Tenure-track(テニュアトラック)と呼ばれる若手研究者が大学での終身雇用を目指す制度で、トロント大学PhD取得者の60%がカナダ国内の60以上の大学で雇用されており、University of Toronto、York University、Ryerson Universityがトップ3大学としてランキングされており、地域性の出る結果となっています。またトロント大学PhD取得者の24%はアメリカでテニュアトラック、16%が中国、香港、シンガポール、中東などでテニュアトラックの教員として雇用されています。

参照: https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0209898
https://www.sgs.utoronto.ca/wp-content/uploads/sites/253/2019/06/SGS_Overview_10KPhDsProject.pdf

Yukari

 トロント大学環境学部で博士号取得。カナダ北部の環境問題や温暖化について研究中。カナダの大学学部、大学院留学、ポスドクの経験を元にカナダのアカデミアについて情報発信していく。