駐日カナダ大使のイアン・バーニー氏、伊藤恭子・在トロント日本国総領事らが登壇『CPTPP: EXPANDING YOUR BUSINESS HORIZONS』
2月14日、CPTPP(包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定)に関するセミナーがToronto Region Board of Tradeで開催された。CPTPPの発効を踏まえこれからカナダと日本、そしてアジア太平洋の国々がいかにしてビジネス関係を強めていけるかについて議論された。
始めに登壇したのはカナダのチーフ・トレード・コミッショナーであるアイリッシュ・キャンベル氏。アジアに拡大を考えているカナダのビジネスパーソンがいかにして成長出来るかについて言及した。中でも、カナダ・トレード・コミッショナー・サービス(TCS)が提供するサービスを強調。新たな市場・顧客を開拓するのは誰でも不安なことだ。そこで、あらゆるビジネスパーソンが第一歩を踏み出すための手助けをしていきたいと語った。中でも、CPTPPは様々な国で構成されている。そんな中、各国への輸送費・国ごとの規制・顧客の見つけ方など、TCSが協力できることは多様であると語り、多くの人にアジアという新たな市場を開拓していってほしいと期待を寄せていた。
続いて登壇したのは伊藤恭子総領事。主催者および参加者に謝辞を述べた後、CPTPPがこれから日本にもたらす効果に期待をしていると語った。CPTPPは今世紀におけるビジネスそして社会に対して高い基準を設定するとした上で、その中でも経済力のある日本とカナダに特に好影響をもたらすのではないかと語った。ITなどの最新技術はもちろん、知的財産なども新たに対象の「品目」となるCPTPP。そんな新たな貿易協定のもと日本とカナダの貿易、さらには直接投資(FDI)を通してさらに経済関係を強めていくのではないかと述べた。
さらに伊藤総領事は日本の経済力を改めて強調した。世界第三位の経済力を誇る日本。人口もカナダの三倍であり、国内総生産(GDP)は過去六年間で10%もの成長を遂げた。その中でも特に著しく成長しているのがITであり、人工知能(AI)やInternet of Things(IoT)、さらにはロボット業界において日本は存在感を増しつつある。これを踏まえ、伊藤総領事は日本の社会的および経済的発展にはイノベーションが不可欠であると述べ、そのためにもまだ世界的に名を知られていない日本の中小企業に目を向けるべきだと強調した。
しかし、そんなビジネスチャンスを掴むためにはスピードも欠かせないと伊藤総領事は指摘。その理由として、今年2月1日に発効した日EU経済連携協定(EPA)を挙げた。カナダの経済力は強いものの、日本でのビジネスを成功させるためにはEUの国々と競争しなければならないと語り、そのためにも迅速に行動することが鍵となると加えた伊藤総領事。今回のようなセミナーが必要な知識を得る機会となってくれればと願いを込めた。
次に挨拶を述べたのはジャパン・ソサエティの理事を務めるデビッド・ウォーツ氏。世界中の国々で保護貿易主義の政策がとられる中、CPTPPのような先進的な協定は貿易の安定を図るためにも重要であると語った。そしてこの協定が発効となった今、カナダのビジネスコミュニティがいかにNAFTA加盟国以外の国との貿易を増やしていくかがビジネスを発展させるための鍵となるのではないかと加えた。CPTPPの他にも、EU・カナダ包括的経済貿易協定(CETA)など様々な貿易協定を通じて様々なビジネスチャンスを掴んでもらいたいと結んだ。
当日は、駐日カナダ大使のイアン・バーニー氏も登壇。CPTPPが日加両国にとっていかに重要な協定であるかを強調した。CPTPPは貿易協定の中でも特に注目すべき協定だとした上で、同時にカナダの地理的位置もこれからの日本との貿易をさらに活発なものにしていくのではないかと述べた。しかしながら、CPTPPが発効したことにより他国と日本の間の貿易も活発になると指摘。カナダは優位的な立場にいるものの、この位置を保つためには素早く行動することが不可欠であると強調した。
同時に、カナダとアジア各国の市場は5億人にも達する巨大な市場であると指摘。保護貿易主義の政策が多く見られる中、自由貿易や自由市場を推進するこの協定は世界の貿易に対して新たな基準を設定することになると述べた。さらに、NAFTAやCETAにも加盟しているカナダにとってもアジアにおける貿易やアジアの国々との経済的関係性においてCPTPPは重要な分岐点となると加えた。
バーニー氏は次にCPTPPの利点について語った。中でもカナダと日本は特に恩恵を受けるのではないかと指摘。特に、日本はカナダにおけるCPTPPによる関税撤廃の八割を占めると述べ、その経済力はCPTPPでも群を抜いていると述べた。日本はカナダにとって第四位の貿易相手であり、FDIにおいてはアジア第一位だ。実際、既に多くの日系企業がカナダに拠点を置いていて、これから先は特にテクノロジーの分野においてさらなる発展が見られるのではないかと期待を寄せていた。その他にも日本からは農業や漁業、オンタリオ州からはワインや加工食品、さらには金属や鉱物など幅広い分野において発展が期待出来ると語った。さらに、ここ数年は日系企業が特にカナダへの投資に力を入れている。これを踏まえ、CPTPPはこれから日本とカナダの経済協力において安定性を確保するためにも重要になると指摘。日加関係90周年を記念するにも相応しい協定ではないかと結んだ。
最後に登壇したのはToronto GlobalのCEOを務めるトビー・レノックス氏。CPTPPがカナダにとってどのように重要なのかを説明した。まず、注目すべき点はカナダの地理的位置。日本はもちろん、オーストラリアやニュージーランド、マレーシアやシンガポールなどアジア太平洋地域の加盟国へのアクセスが容易であることが利点であると指摘した。この位置関係のおかげで柔軟性にも長けると加えた。さらに、これから先の経済協力においても重要な役割を果たすのではないかと指摘。CPTPPにはいくつかの規制もあり、この規制のおかげで過度な干渉をせずとも互いに貿易や経済協力をすることが可能になったと加えた。さらに、レノックス氏はCPTPPが取り扱う分野の広さについても言及。中でもITやインフラ関係のビジネスにどのような影響がもたらされるのか期待したいと述べた。
世界中から注目されているCPTPP。伊藤総領事やバーニー駐日カナダ大使が述べた通り、この協定には新しい点がいくつもあり、これから先の国際経済にも影響を及ぼすことだろう。日本はもちろん、アジア太平洋の国々がいかにしてカナダとの貿易をこれから発展させていくのかこれからも注目していきたい。