財産代理人や 遺言執行人にふさわしい人とは?|カナダで暮らす-エステート・プラニング入門【第6話】
1.年齢
財産代理人と遺言執行人になることができる年齢は、18歳以上です。
2.居住地
①財産代理人の居住地には、法的制限はありません。しかし、実際問題として、代理人が日本のようにカナダから遠く離れた国に住んでいる場合、代理人の任務遂行が困難になることがあります。
②遺言執行人については、オンタリオ州、もしくはカナダ在住であることが望ましいとされます。もし、遺言執行人がカナダ国外に住んでいる場合、コモンウェルス(Commonwealth)に属する国(イギリス、オーストラリア、インド、ジャマイカ、南アフリカ等を含むイギリス連邦加盟国)の居住者を除き、原則として、遺産手続きを開始する際には、裁判所に保証金(bond)を支払うようを求められます。これは、故人の債権者、及び、相続人の保護を目的とします。したがって、アメリカや、日本、ヨーロッパ諸国のようなコモンウェルスに属さない国に住む遺言執行人には、任務開始に当たり、保証金の支払いを求められます。ちなみに、遺言執行人の国籍は関係ありません。
3.任命する人数
財産代理人も遺言執行人も、単独である必要はなく、二人以上を合同で 任命することができます。先に述べたような、居住地の問題も、現地に住む家族や友人と合同で任命することで、カバーできることも可能です。
4.求められる資質やスキル
次のようなスキルや資質を持つ人は、必要条件ではありませんが、財産代理人や遺言執行人として、より良い仕事をしてくれるでしょう。
①信頼できる人-
どちらの仕事も自分の代わりに、ご自分の財産を扱う仕事であることから、自分が信頼できる人を選ぶことが第一です。
②お金の管理ができる人-
中立な立場で、管理下においた財産を適切に管理・記録できる人が望ましいでしょう。
③事務能力のある人-
政府や銀行への書類の準備、タックスリターンの準備、会計報告書作成など、多くのペーパーワークを余儀なくされます。したがって、事務能力のある人は向いています。
④コミュニケーション能力のある人-
銀行や政府機関、会計士、弁護士、委任者の家族や相続人と連携を取りながら、任務を進めていけるよう、周囲と円滑にコミュニケーションをとることができる人であるといいでしょう。
5.プロに頼むべきか?
財産代理人・遺言執行人ともに、弁護士や会計士などの専門職である必要はありません。むしろ、ご夫婦間、親子間での任命や、親族、友人などを任命する方が一般的です。また、資産内容や家族関係が複雑な人、カナダ国内にお願いできる人がいない場合は、信託銀行(Trust Company)を任命するという選択肢もあります。
6.頼む人には一言声を掛けておこう
財産代理人や遺言執行人の選任については、その旨を選任された方に一言伝えておくと、いざというときにスムーズに事が運びやすいでしょう。なお、オンタリオ州の法律では、原則として、財産代理人・遺言執行人ともに、その任務に費やした時間、手間、苦労に対して、公正で妥当な報酬を受け取ることが許されています。
任務開始の際は、専門家の手引きを
実際に財産代理人・遺言執行人に任命され、その活動を始める際には、一度、専門の弁護士にガイダンスを受けることをお勧めします。任務遂行に当たって、何か問題が生じた場合は、個人責任となりかねません。ですので、財産代理人・遺言執行人としての責任と仕事をきちんと理解しておくことが求められます。
【おことわり】このコラムは、オンタリオ州法に関する一般情報の提供のみを目的とし、著者による法的助言を意図したものではありません。
スミス希美(のぞみ)
福岡県出身。ミシサガ市パレット・ヴァロ法律事務所、オンタリオ州弁護士。中央大学法学部卒業後、トロント大学ロースクールに留学しカナダ法を学ぶ。相続・信託法専門。主に、遺言書や委任状の作成、信託設立などのエステートプラニングや、プロベイト等の相続手続を中心とした法律業務に従事。日本とカナダ間で生じる相続問題に詳しい。