北米に進出する日本のゲーム業界その戦略は?

参考文献:JAPAN INTERNET COM japan.internet.com/busnews/20130213/3.html
今、バンクーバーのデジタルメディア関連企業が熱い。現在ブリティッシュ・コロンビア州は世界中から1,100を超えるデジタルメディア関連企業が集結し、一大デジタルメディア産業の拠点として拡大している注目の地域だ。雇用者は2万2000人に上り、利益は年間33億ドルを生み出している。バンクーバーにおいては、EA(Electronic Arts)や Disney Interactive(Club Penguin)、Pixar、Microsoftなどの大手企業が拠点を構え、日本からも近年デジタル分野で成長をし続けているDeNA、GREE、SEGAなどが進出を果たした。北米のIT関連ビジネスの拠点と言えば、アメリカのシリコンバレーが代表と言われていたが、近年各企業がブリティッシュ・コロンビア州に積極的に進出をするのにはこの地ならではの様々なポイントがある。今回は、そのポイントをご紹介するとともに、実際に進出を果たした3つの日本のゲーム会社の北米での戦略について覗いていきたい。
ブリティッシュ・コロンビア州の魅力とは?
暮らしとビジネス、双方にとって理想的な地理環境
ブリティッシュ・コロンビア州の魅力のひとつは、地理的な環境が整っている点だ。特にバンクーバーは、安定性や医療、文化、環境、教育、インフラの良さが評価され、雑誌「The Economist」で毎年発表される最も住みやすい都市「most livable cities」のひとつに幾度も選ばれるほど。そのことに加え、移民を積極的に受け入れていることから、世界中の国や地域からさまざまなバックグラウンドを持つ人々が集まりやすく、多言語を話せる人材も豊富だ。またバンクーバーは、北アメリカ大陸の中でも西海岸に位置し、時間帯はアメリカ・カリフォルニア州や同・ワシントン州と同じ。日本との時差は、冬時間だとマイナス17時間で、例えば日本が午前9時の場合、現地は午後4時となることから、日本と現地とのビジネスアワーの相性も良く、メールのやり取りやミーティングの設定がしやすいという利点がある。さらに、アメリカへの距離も近く、アメリカ・サンフランシスコには飛行機で約2時間。そのほか、国際便が豊富であることから世界中の国々へ容易にアクセス可能だ。加えて、カナダのカントリーリスクは、信用格付け会社 Moody’s の評価によると、最高ランク AAA(トリプルA)であり、現地企業が負うリスクへの不安も少ないという。
産官学の連携で即戦力を育てる
ブリティッシュ・コロンビア州のデジタルメディア産業の特長のひとつは、人材の豊富さにもある。その土台となっているのは、教育機関や研究センターで提供されるデジタルメディアに特化した専門的な教育プログラムだ。例えば、4大学(ブリティッシュ・コロンビア大学、サイモンフレーザー大学、エミリーカー美術デザイン大学、ブリティッシュ・コロンビア工科大学)が共同で運営する大学院専門大学「センター・フォー・デジタルメディア」では、生徒がチームを作りプロジェクトを進めていくといった実践的な教育プログラムが提供されている。このほか主な教育機関の多くがデジタルメディア産業と関連しており、最先端の研究施設、教育、研究サービスを民間セクターに提供。実に毎年約3,000名の学生が高等教育を受け、デジタルメディア業界に就職するという。だが、教育機関だけが充実していても、受け皿となる企業に生徒が就職できなければ意味がない。教育機関では、企業の現場の人間が実際に教えることで、即戦力となる人材の育成に努めている。
企業進出をサポートする税制度
ブリティッシュ・コロンビア州の税率は、北米でも最低の税率となっており、税制度の面において政府のサポート体制も整備されている。例えば同州の投資家および州内で起業した企業の連邦法人税率と州法人税率の合計は25%と、G7 諸国(日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ)の中で最も低い税率が採用されている。さらにアメリカ各州と比較しても低い水準となり、企業にとって経済的負担が比較的少ない。そのほか、カナダおよびブリティッシュ・コロンビア州では、税額控除や課税免除などの優遇制度を設けており、事業投資とイノベーションを奨励している。例えば同州では、映画制作やゲーム開発など特定の産業を対象とした、「BC 映画優遇制度」や「ブリティッシュ・コロンビア制作サービス税額控除」などさまざまな優遇制度も用意している。BC 映画優遇制度では、基本控除として、適正な人件費の35%の税額を控除(ただし、制作費全体の60%が上限)」し、デジタル・アニメーションまたはビジュアルエフェクト業務についても、適正な人件費に対する17.5%の税額を控除する。また、ブリティッシュ・コロンビア制作サービス税額控除では、制作サービス控除として適正な人件費の33%を税額控除するなどしており、企業の税負担を軽減することで、人材確保や事業拡大が容易にできる環境を整えているのだ。また、ブリティッシュ・コロンビア州政府は、実際に現地で事業展開する前の企業に対するサポートにも力を入れている。具体的には、「インベストメント・サービス」という部門があり、税や法律、労務などを相談できる機関を紹介する。また、現地駐在員を派遣する際のワークパーミット(労働許可証)が比較的下りやすいのも特徴だという。
一言で北米展開と言っても、それは容易に成功できるものではない。人材の確保、マーケットリサーチ、組織作りなど、時間と労力をかけた準備をしなければ、日本でどんなに成功していても海外で同じ成功を収めることはできない。その足掛かりにするには、しっかりと根を下ろしてビジネスを作り出すための環境が不可欠なのだ。北米へのゲートウェイとして、バンクーバーは魅力的な街といえる。企業を設立して3年、5年のうちに経験と実績を積み、ビジネスの土台ができれば、そのままバンクーバーでビジネスを拡大していくことや、他の街に拠点を移すこと、シリコンバレーに進出することなどさまざまな選択肢が広がる。今後新規事業の展開が期待される中、ブリティッシュ・コロンビア州はますます世界の企業に注目される土地になっていくに違いない。
海外進出概要
株式会社ディー・エヌ・エー(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:守安功氏、以下DeNA)は、DeNAグループ全体のソーシャルゲーム開発・運営体制のさらなる最適化の一環として、カナダのバンクーバーにDeNAの100%子会社「DeNA Studios Canada Ltd.」(以下「DeNA Canada」)を設立した。主にDeNA連結子会社のGameview Studios, LLC(ゲームビュー・ステューディオズ、本社:米国カリフォルニア州マウンテンビュー、CEO:Irfan Virk)によるスマートフォン向けソーシャルゲームの開発・運営サポートを行うとして2012年2月2日に上内容の声明を発表。また、この買収で北米のDeNAグループ各社に対しても、ゲームの企画・開発・運営に関するサポートが可能な体制を構築していくとして積極的な姿勢を示している。
日本で大ヒットしたモバゲータウン。次なる市場は北米へ
モバゲータウンのような独自のアバター・コミュニティサービスを強みにスマートフォン市場に挑戦するDeNAは、この分野の海外進出において最も早い段階で踏み出し、成功してきた企業のひとつである。日本で「怪盗ロワイヤル」が爆発的な人気を集めて以来、数年の間でソーシャルゲームとアバター・コミュニティサービスの一体化という新しいサービス形態の地盤を築きあげた。DeNAの北米進出は、「MiniNation」と呼ばれるモバゲータウンのシステムやノウハウをふんだんに盛りこんだ、海外向けモバイルゲームとコミュニティ機能をメインとしており、この独自のサービスで新規市場の獲得を目指す。バンクーバーを足掛かりに今後は北米全域に向けてサービスを展開していくことを考えると、バンクーバーでの成功は今後の北米進出を左右する大きな鍵となる。
海外進出概要
グリー株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:田中良和氏、以下「グリー」)は、さらなるゲーム開発、運営体制強化の一環として、2012年07月20日付でカナダのバンクーバーに子会社GREE Canada, Ltd.(以下「GREE Canada」)を設立した。最大169ヵ国でシームレスにアプリの配信が可能となった「GREE Platform」を世界市場に導入し、グローバル展開を加速してゆくとのこと。一方、すでに米国、中国をはじめ世界9拠点体制を構築し、各国での市場調査やソーシャルゲームの開発、運営、現地パートナーとの提携なども積極的に推進している。バンクーバーはシリコンバレーと時差がないため、グリー米国子会社GREE International, Inc.(以下、「GREE International」)とスムーズな連携を行うことができ、自社ソーシャルゲームの企画および開発のスピードアップや運営体制の安定化を実現していくものとしている。
大手SNSを一括するプラットフォームの展開で世界のGREEを目指す
日本国内で携帯電話のソーシャルゲーム市場を牽引するグリーはアジア圏のみならず北米に対しても勢力を拡大している。グリーは2011年にOpenfeint社(US)を買収して以来、世界最大級のスマートフォン向けソーシャルプラットフォームとして勢いをつけ、アプリに対戦機能を組み込むOpenfeintのサービスを足掛かりに市場を拡大している。(※Openfeintのサービスは現在は終了)
このオプショナルなプラットフォームサービスのノウハウを活かしたグリーのサービスは、世界中で膨大なユーザー数を獲得しており、今後も有力なSNSを繋ぐプラットフォームとして次なる戦略が期待される。近年は米国を中心にスマートフォン向けアドネットワークを運営するMillenium Mediaの協力を得るなど、北米でのネット広告事業にも力を入れている。今後も成長が期待される産業だけに、グリーが日本国内やアジアで培ってきたノウハウがどのような形で活かされ、北米で浸透していくのか目が離せない。
海外進出概要
株式会社セガ(本社:東京、代表取締役社長COO:鶴見尚也氏、以下セガ)は、欧米地域におけるPC ゲームの開発力を更に強化するため、THQ Canada Inc.(本社:カナダ バンクーバー、以下:THQ Canada)の全株式と、THQ Canada の親会社であるTHQ Inc.が保有する一部知的財産等を2013年1 月24 日に取得した。セガは、欧米地域において既に3 つの開発会社を保有しており、PC 向けオンラインゲームをはじめ、スマートフォン向けゲームやソーシャルゲーム等、急速に拡大しているオンラインゲーム市場への対応を進めている。今回のTHQ Canada 買収により、セガが持つ高いコンテンツ開発力や蓄積された開発ノウハウを活かして、PC オンライン向けゲーム市場での存在感を高め、魅力的なエンタテインメントコンテンツの提供をより一層進めていくものとしている。
THQ買収で影響力のあるオンラインゲーム開発拠点をカナダに
国内ゲーム最大手のセガは、常に新しい事業に挑戦する姿勢からこれまでも様々な新事業に介入してきた。国内でもPCゲームの開発を強みにしていたが、今回の買収を機に欧米でのPCゲームの開発力を強化するとして、日本のトップとしての存在感を一層アピールしている。これまでにも、2005年にアメリカのアミューズメント施設チェーンのゲームワークス(Game Works)を買収し、米国のオンラインゲーム会社Three Rings Design, Inc.を買収するなど、幅広い事業展開を遂げてきた実績があるが、今回のカナダでの買収はSEGA OF AMERICAやオンラインゲーム開発のThree Rings Design(シアトル)、コンシュマーゲーム開発のSPORTS INTERACTIVE(英国・ロンドン)などに並ぶ開発拠点をカナダに作ることを目指している。この新事業が成功すれば、前身の世界有数のゲーム会社であるTHQの影響力とも相まって、より一層北米でも影響力のあるゲーム会社として伸し上がることが期待できそうだ。
カナダ進出企業 番外編
UNIQLO カナダ進出のウワサはホント?ウソ?
2012年秋頃から噂になっては消え、消えては噂が再燃し…を繰り返すユニクロのカナダ進出。去年の11月に各メディアでニュースが出回って以来、今は下火になっているものの、日本でここまで著しい発展を遂げているユニクロの話題だからこそ注目度が高い。実際のメディア報道によると、今年の4月にThe Bayがユニクロとパートナーシップを締結し、ユニクロのカナダオープンに向けて計画が進行中とのこと。Hudson’s Bay Co.の CEO であるRichard Baker氏はコメントの中で「We think UNIQLO is a dynamite company and it is very logical that they should be able to come and grow with us like Topshop」と述べており、世界的なファストファッションブランドであるH&MやZARAに並んで競合するのに十分なブランド力を持っていると期待している。一部の報道によると、ニューヨーク発のKleinfeld Bridalサロンが2014にトロントにオープンするのと同時にクイーンストリートに位置するThe Bay内に大規模な店舗を構え、トロントにもユニクロが2013年秋にオープンする計画が進行中だとか。また、別の報道メディアによると、トロントの他にモントリオール、カルガリー、バンクーバーでも新店舗のオープンを検討しているとして、モントリオールではSt.Catherine Hudson Bay内に店舗を構えるなど、かなり確信的な噂まで広がっている。













