藝○座 花柳源九郎さん インタビュー
3月1日には2017年北米ツアーの一環で、唯一のカナダ公演としてトロント日系文化会館を訪れる藝○座のみなさん。TORJAではその公演に先駆けて、藝○座の特徴や見所、海外ツアーにかける思いなどを語ってもらった。
昨年結成10周年を迎えられましたね。おめでとうございます。トロントの読者に向けて簡単に藝○座の紹介とこれまでの軌跡をお聞かせください。
ありがとうございます。藝○座は2006年に東京藝術大学、日本舞踊専攻の卒業生により結成された舞踊集団です。日本舞踊において一つの学校を母体とした集団は非常に珍しく、これまで様々な舞台、メディア、また海外では、スペインやメキシコなどでも公演を行って参りました。そして昨年8月、東京において10周年記念公演を開催させていただくく事ができました。
今回の北米ツアーはメキシコ公演から7年、このタイミングでの海外公演を行われる特別なきっかけなどがあれば教えてください。
藝○座に所属している私が2014年に、ニューヨークのジャパンソサエティで踊った折りに、プロデューサーの塩谷陽子さんとの出会いがあり、日本舞踊についての様々な話へと広がりました。そこから「藝○座」というユニークな日本舞踊の集団に興味を持っていただき、今回の北米ツアーへと繋がりました。
日本公演とは違い、海外公演にあたって特別意識することはありますか?何か特別なパフォーマンスなどあるのでしょうか?
基本的に日本公演と中身は変えておりません。ただ、今回のツアーにあたって、特に意識した事と言えば、これまで海外では録音した音源を使用する公演もありましたが、 今回は全て生の演奏にこだわり、我々と共にたくさんの演奏家に来ていただく事でした。その上で、特別なパフォーマンスとしては、我々からの希望で、演奏のみにスポットをあてた演目も組み込んでいただき、日本舞踊には欠かせない和楽器の魅力も存分に楽しんでいただけたらと考えました。
海外では日本と比べて観客の反応に違いが見られますか?
日本舞踊というと、かえって日本の方が敷居を高く見られてしまう事もありますが、海外では、そういった壁はなく、とてもストレートな反応をいただきます。また、思わぬところに興味を持っていただく事も多く、それらの反応や興味が、我々にとって海外公演での一番の刺激や勉強になります。
トロントや北米現地の人々に向けてどんなことを伝えたいですか?
恐らく着物や和楽器という事で、非常に日本的であり、伝統的な印象を与えると思います。しかし、実際に表現する我々は、普段は洋服で生活をし、洋楽を耳にし、インターネット社会の現代日本で生きている表現者たちです。その現代の感性を持って、伝統と対峙し、それらを乗り越え表現する舞台に、時代を越え、洋の東西を越えたパワーを感じていただければと思います。
藝○座では古典作品だけでなく、これまでにオズの魔法使いのような洋書を基にしたものや創作作品など幅広い演目を披露されていますが、作品はどのようにして選ばれ、創られるのでしょうか?
意外に思われるようですが、日本では戦後から現在まで、日本舞踊の新作、創作と言えば、洋楽で踊ったり、コンテンポラリーダンスのような作品あり、ありとあらゆる実験的作品が無数に作られてきました。
しかし、我々は改めて日本舞踊の価値観を見直し、「着物」「和楽器」「言葉(歌詞)」、この3つのポイントに重点を置き、作品を作ってきました。それらを踏まえた上で、題材に関してはその度にテーマを決めています。例えば「オズの魔法使い」では、子供たちにも楽しんでもらえる作品、さらに西洋独特のメルヘンで夢のある世界を、如何にして日本舞踊に料理するか?をテーマにしました。
作品が決まると、まずは脚本、演出プランを様々なアイデアと共に練り上げます。そして和楽器の演奏者たちとの音楽作り。古典的手法を活用したり、和楽器の演奏に合わせ歌いながら踊るミュージカルのようなテイストも取り入れ、試行錯誤の末、完成へと導きます。毎回、様々な方向性の作品を作りますが、実験に終わる事のないよう、再演され、残っていく事を最大の目標に作っています。
10年間の活動を通して世間の日本舞踊に対するイメージなどに変化は見られますか?特別手応えを感じていることなどあれば教えてください。
少しづつではありますが、10年間の「藝○座」の活動を通して、洗練された古典作品がある一方で、エンターテイメント性がある日本舞踊の在り方も広がったかと思います。それこそ、今回の北米ツアーにも繋がった事が、何よりも大きな手応えとして感じています。しかし、まだまだ日本では、敷居の高い世界というのが一般的で、そのイメージを良い方向で変化させて行きたいと思っております。
今後挑戦していきたいことや目標があれば教えてください。
すでに次回を目指した目標になりますが、先程のお話にもありました、 藝○座で日本舞踊化した「オズの魔法使い」など大掛かりな作品なども是非、海外公演で上演してみたいと思います。何よりも、日本舞踊、和楽器にしかできない魅力ある舞台を、日本はもとより、海外の大勢の方に届けたいと思っています。
トロント公演にいらした際、トロントで何かしてみたいことや楽しみにしていることはありますか?
トロントには数多くの劇場があると伺っています。それだけ文化が盛んであるということで、その土地に流れる文化に触れる機会があればと思っています。あとは、我々の楽しみと言えば、やはり食です!今から各自、食べたいものを、必死で調べ探しています(笑)。
トロント公演に向けてTORJA読者へのメッセージ、また意気込みをお願いします。
今回「藝○座」は初めてトロントの地を踏ませていただきます。我々は「伝統」と「現代」という、ある意味、両極の中で模索を続けながら世界に誇れる日本文化を発信しております。是非、このTORJA読者の皆様と、このトロントの地で、同じ空間、空気を共有し、より多くの方々と出会える事を願っております!
藝○座
geimaruza.com
藝○座は1993年に五世花柳芳次郎(現・四世花柳壽輔)の長年の文化庁への働きかけにより設立された東京藝術大学の日本舞踊科(音楽学部邦楽科・日本舞踊専攻)卒業生が集まり、2006年に結成された集団で、日本舞踊を幅広い世代に広げ、今までにないエンターテイメント性溢れる舞台を創る事を目標として活動している。「まるく・楽しく・わかりやすく」をモットーに、老若男女世代を超え、国境を超え、美しい日本文化をダイナミックな「和楽器オーケストラ」の生演奏と共に躍動感溢れるスタイリッシュな舞踊を披露し、新しい作品を作り出す一方で、日本舞踊の基盤であり、大切に受け継がれてきた古典作品にも、意欲的に取り組み、年々その活躍の場を広げている。
トロント公演
日にち:3月1日(水曜日)
場所:日系文化会館
時間:午後7時〜
チケット:JCCC会員 45ドル, 一般 50ドル
お問い合わせ: 416-441-2345 ※要予約