ろくでなし子さん インタビュー
自身の経験から、日本社会への疑問を漫画などのアートを通して訴え続けるろくでなし子さん。今回参加するTCAFに期待することや、活動の原動力はどこから来るのかについて伺った。
初めて来たトロントの印象はどうですか。
そもそも被告人が外国にいくのがすごく大変で、入れるかどうかわからない状態でカナダまできたので、とにかくカナダに着いただけで一仕事終えたという気持ちでした。たくさん書類を準備していたのですが、意外とスムーズに入国することができてよかったです。ナイアガラの滝ツアーにも参加しましたが、まだ実感がわいていなかったので、呆然としたまま滝のしぶきを浴びてましたね。
「ろくでなし子」という名前の由来が活動内容とどのような関係があるのかを教えてください。
初めに女性器、性的な内容をかくということを家族に知らせると嫌がると思ったからです。たまたま思いつきでこのテーマを決めて、内容もろくでもないしと思ったのがきっかけでした。でも、その後も変えようとは思わなかったですね。皮肉な意味もこめてあるので。
今回のイベントに期待することはなんですか?
日本ではファンの方に会ったことはありますが、海外のファンに会えるのは今回が初めてです。今まで海外に作品を出展したことはあったのですが、作品を送っただけで実際にその場所に行くことはできなかったので、どのような反応があったのか知りません。なので、今回お会いできるのが楽しみです。
日本と海外で、活動のとらえ方に違いはありますか。
ありますね。海外の記者にインタビューされる時、なんでこれが罪なのか?と問いかけられますが、それは私が聞きたいですね。海外ではこのようなポジティブな反応を得ることができますが、日本ではこれは悪いことだ、という一点張りの人が圧倒的に多く、間に立つ人がいない状態です。日本国内でも男女問わず支持してくださる方々はいますが、まだまだ少ないです。
活動をおこなっていくうえで大切にしていることはなんですか?
作品の原点になっているものは、自分の身に起こったことや経験したことで腹立たしいことなどの〝怒り〟ですが、怒っている人の言うことはただうるさいだけで相手まで届きません。なので、笑いというかユーモアで怒っていることを吹き飛ばしつつ、注目されて、みんなで考えるきっかけをもってもらえればと思っています。エンタメ的な感じでやっていくことを心がけています。
さまざまな意見があるなかで、それでも前を進み続けられる行動力はどこから湧いてくるのですか?モチベーションの維持のしかたを教えてください。
もともとすごく頑固な面があり、子供の頃は空気を読め、と言われていました。この言葉は日本人特有のいいかたで、私はとても苦手です。おかしいと思ったことを「なんで?」と問い続ける愚直さが一番活かされたのが警察で取り調べを受けたときでした。信念を最後まで曲げずにいられたのはこの性格のおかげだと思います。おかしいと思ったことは投げ出さない。今後もより自分に自信を持って、空気を読まないようにしていきたいです。
自分の意見を貫き通せる強さの源を教えてください。
人は間違えることもあります。私の意見が正しいかどうかはわからないですが、私が疑問に感じている限り、この意見は変わらないです。女性器が猥褻だという意見も否定はしません。ただ、女性器は私の体だから私にとっては猥褻ではないのです。いろんな意見があるのが当たり前で、私の意見も認めてほしい、それが表現の自由だと思います。
今後の目標を教えてください。
まず、最高裁までいって無罪を必ず勝ち取ることです。この事件を通して様々な分野でダブルスタンダードになっている問題が浮き彫りになりました。例えば、アート界では芸大も出ていない私が作品を作るとあんなのアートじゃないという意見がありますが、芸術に学歴は必要なのか、芸術的価値とは何なのか?と感じてしまいます。さらに、一部フェミニストの意見として、フェミニズムは学問として学ぶもの、この意見は他のフェミニストが何年も言い続けていることだから古いというものがありました。しかし、実際は私を含む一般にはこの問題は届いていませんでした。これらを突き止めていきたいと思います。
最後にワーキングホリデーで頑張っている読者にアドバイスをお願いします。
一年間の海外生活でやりたいことが見つけられたらラッキーだと思います。やりたいことを見つけることは簡単ではないので見つけられなくても落ち込む必要はありません。ここでの経験が一番大事だと思います。やりたいことを見つける方法の一つとして、様々な経験をしていく中で、長く続けられて、これが自分にあってると感じるものを選べばいいと思います。
ろくでなし子
6d745.com
漫画家、造形作家。日本性器のアート協会会員。漫画や自らの女性器を型どりし、デコレーションした立体作品「デコまん」など多岐にわたる作品を国内外で発表している。現在、女性器をかたどった作品やデータの違法性が争われた裁判にて一部無罪、即日控訴をし「女性器はわいせつではない」ことを主張し続けている。