Hot Docs2017 出展作品『RAMEN HEADS』富田 治氏 インタビュー [トロントを訪れた著名人]
Hot Docs2017 出展作品『RAMEN HEADS』
ラーメンを愛し、ラーメン道を極めた日本一の職人
今後もっと日本のラーメンを世界へと広げていくため日々〝自分との戦い〟に挑み続ける
富田 治 氏
バカじゃないとバカを魅了できない」映画の中でそう豪語するほど心からラーメンを愛し、現在では東京ラーメン・オブ・ザ・イヤー4年連続一位に輝く「中華蕎麦 とみ田」の店主富田治氏。ドキュメンタリー映画『RAMEN HEADS』の主役を務めた富田氏が語る、ラーメンを通して見えた「人生観」とは一体どのようなものだったのだろうか。
まずトロントの印象をお聞かせください。
トロントに来たのは初めてだったのですが、まず自分が思っていたよりも現地は寒かったことが印象的です。そして、今回のHot Docs映画祭を受けて、街全体がこのドキュメンタリーの祭典で非常に盛り上がっているという印象を受けましたね。
富田さんのラーメンにかける想いやその職人魂は、人生観そのものだと感じました。富田さんの原動力とは一体何なのでしょうか?
自分の店を開業した当初は「店が有名になってほしい、行列ができてほしい」という気持ちでスタートし、オープンしてから2〜3年が経った頃くらいから、ラーメン業界の各方面より賞をいただくようになりました。
現在は開業してから11年目を迎えますが、そのような出来事が続いていく中、日本のラーメン業界を盛り上げていきたいという思いが芽生えるようになったのです。日本のラーメンを世界に広めていきたいという、使命感のようなものが自分の中で生まれました。自分のことより、今の日本のラーメン界のために頑張りたいというところから、だんだんとそういった原動力を得ているのかなと思います。
撮影が行われていく中で何か大変だったということはありましたか?
テレビなどでドキュメンタリー等の取材が入ることは今までにも何度かあったのですが、このような大掛かりな映画というものは初めてでした。そもそも自分のお店はそのように誰かに撮影していただけるほどのお店ではないと思っていますし、「本当に自分のお店でいいのだろうか?」という気持ちはいつも心のどこかにあります。ただ、映画の撮影が決まった後は、僕を選んでいただいたからには精一杯やろうという、その気持ちを常に持って過ごしていました。
お店の従業員の方やお客様との人間関係を構築される上で、大切にしていらっしゃることはありますか?
結局私たちは同じ人間同士であって〝人と人〟という事実はどこまでも行っても変わらないことです。たとえ僕が社長であっても、従業員であったとしても、そのような肩書きは関係なく、一人の人間として尊重しあっていくことが大切ですし、それはお互いの信頼関係を深めていくことにも繋がっていきます。お客様に対しても全く同じ気持ちです。
作り手の僕らも、食べに来てくださるお客様も人間同士。その人々がラーメンを介して繋がっているのです。ただラーメンを出すというのではなく、ラーメンを食べて落ち込んでいた気持ちが明るくなったりと、そこに言葉が存在していなくてもラーメンを通して何か伝えられることがあるのだと信じているので、思いやりの気持ちを込めて日々ラーメン作りに励んでいます。
今後の目標を教えてください。
このラーメンの素晴らしさをもっといろんな世界へと広げていきたいです。もともとラーメンはそんなに高級な食べ物ではありませんし、どこに行っても誰でも接しやすい食べ物だという確信がありますので、そのようなラーメンの良さを踏まえて世界へ発信していきたいです。
〝自分との戦い〟というキーワードが映画の中でも登場しましたが、誰しも自分と闘わなければいけない局面があると思います。自分と戦い続ける読者の皆様へメッセージをお願いします。
誰の中にも強い自分と弱い自分が存在していると思います。その弱い自分の存在に絶対負けてはいけないというわけではありませんが、負け越していてはいけないのです。弱い自分に負け越さないよう努力を続けていけば、次第に自分に自信が持てるようになっていきますし、それに伴って結果も自ずとついてきます。弱い自分に負けてしまわぬよう、どうぞ悔いのない生活を送ってください。
富田 治
城県出身。つけ麺の生みの親とも呼ばれる東池袋大勝軒の創業者、山岸一雄氏がルーツとなっている「こうじグループ」で修行の後、2006年に独立し千葉・松戸に「中華蕎麦 とみ田」をオープンする。現在は、5店舗と製麺及び販売会社を束ねる店主兼「とみ田グループ」の代表取締役社長を務める。これまでラーメン業界にて数々の賞を受賞、4年連続日本一の称号を手にしている。
『RAMEN HEADS』あらすじ
4年連続東京ラーメン・オブ・ザ・イヤーに輝き続けている日本一のラーメン店「中華蕎麦 とみ田」を営む富田治氏。日本一と謳われるラーメンのレシピや材料に至るまで、富田氏は一切包み隠すことなくすべてをカメラの前に映し出す。ラーメンを愛し抜く富田氏の人生観、職人魂に迫ったドキュメンタリー作品。