ササキ・ミキコ監督 インタビュー
岩手県盛岡市を拠点に活動を続けている一人のプロレスラー、グレート・サスケ。覆面レスラーとしてその名を馳せるが、その実態を知る人は多くないのではないだろうか。今回そのグレート・サスケにフォーカスしたドキュメンタリー映画製作に携わった一人の女性監督がいた。ササキ・ミキコ監督。アメリカ・サンフランシスコに基盤を置き、エディター・プロデューサーとして活躍している。
サンフランシスコ、ワトソンビル、ロサンゼルスでも上映し、他にも様々な場所で注目を集めている“The Great Sasuke”、10月16日には、みちのくプロレスのファンでもあるJapan Foundation、Kate Scullinさんの協力の元、トロントでも上映会が行われた。五年間の製作期間をかけて作られた今回の作品が、初めての長編映画となるササキ監督に、本作の製作背景や映画への情熱などお話を伺った。
ササキ監督が映画に興味を持たれたきっかけはなんだったのでしょうか?
映画好きな姉の影響もあって、小さい頃から映画オタクで、邦画・洋画・ヨーロッパ作品、ジャンルを問わずたくさんの映画を観てきました。中学生になる頃には、映画に携わる仕事に就きたいと思っており、自分は役者タイプではないと感じていたので、制作側を目指すことにしました。
高校生の時にドキュメンタリー映画“Hoop Dreams”という高校生のバスケットボール選手を主題にしたシカゴの映画を観た時にはとても感動して、それが一番影響を受けた作品ですね。他にはドキュメンタリー作品ではありませんが、〝ターミネーター〟といった、絶対に現実では起こらないだろうという映画を見るのも好きですね。観ていて楽しい気持ちになるので、観客の方々にもこんな気持ちになってもらいたいと思える作品です。
ドキュメンタリー作品を作りたいと思うようになったきっかけを教えてください。
私は自分でストーリーを書くことがあまり得意ではなく、でも他の人を見ていると中には私では思いつかないような興味深い人生を歩んでいる方もいて、フィクションを作るよりもドキュメンタリーの方がいいな、と思うようになりました。また、通常の映画では既に作られた脚本通りに撮影するだけですが、ドキュメンタリーの場合は撮りながらその人の人生や物語が見えて来て、それをパズルのように組み替え、当てはめる作業が大変なのですが、好きですね。さらにドキュメンタリーは実際に撮影してみなければどう転ぶかわからないギャンブルのような部分もあり、そのスリルも楽しい部分だと思います。
今回のドキュメンタリー映画を作るきっかけはなんだったのでしょうか?
アメリカのドキュメンタリー製作会社で働いていた時に、その時の上司が「お前の出身地に面白いやつがいるぞ」と声を掛けてくれたのがきっかけです。同じ出身地だったので、どこかでつながっているのかもしれないと思い、サスケさんのことを友人に聞いてみたら、それからトントン拍子で話が進んで、私の帰国に合わせて直接会う機会を得ることができました。
そこでは少しお話をという感じで、映画に関してどんなストーリーになるのかなど、全く分かりませんでした。ただ、サスケさん自身がとても独特な方で、再度選挙に出ようと思っているということを聞き、この方の人生を少し覗いてみたいと思う気持ちからプロジェクトが始まりました。
今回の撮影で、ササキ監督の一番印象に残ったことはなんでしょうか?
たくさんあります。サスケさん自身とてもミステリアスな人で、私も最初はどんな人なのか分からなかったのですが、撮影の合間にたくさん話をしている内に、共感できる部分や自分自身と重なる部分が多くみつかりました。サスケさんはプロレスに関して本当に真剣で、自分が有名になりたいわけではなく、ただたくさんの人に楽しく生活してもらいたい、そんな純粋な希望から活動している方だとすぐにわかりました。その部分をみさなんに見てもらいたいと思いましたね。
長編映画は今回初めてになるのですが、改めて登場人物がとても大切だと思いました。特にサスケさんは周囲の方々に慕われていて、その方々のおかげで映画がとても面白くなりました。
トロント以外での観客の反応はいかがでしたか?
とても良いですね。プロレスが好きかとか、サスケさんのファンとか関係なく、上映後に話に来て下さる方がとても多かったです。ワトソンビルで上映した時に、プロレスに興味なかったけれど、なんとなく面白そうだから見に来てみたらとても良いストーリーだった、とお言葉をいただけたのがとても嬉しかったです。ファンとしてもサスケさんのパーソナルな部分を見る機会になったとおっしゃってくださることもありました。
今後思い描いている展開を教えてください。
今後も長編映画に挑戦していきたいと思っていますが、その準備ができるまで、今はアメリカに住んでいる女性たちに焦点を当てたショートフィルムを撮っています。職業も、国籍も、人種も、年齢もバラバラです。女性の生活を通して、アメリカのいろんな人生を伝えたいと思って作っています。
最後にTORJAの読者へコメントをお願いします。
諦めてしまうと夢はそこで終わってしまいます。失敗を何度してもとにかく前を向いて頑張ってください。私自身も自分に常に言い聞かせています。何に関しても諦めないで、夢を追い続けてください。
Mikiko Sasaki
サンフランシスコ大学で映画学科を専攻し、UCLAにて博士号を習得。その後、ロサンゼルスを中心にエディター・プロデューサーとして活動する。ショートフィルム作品“Story of a Businesswoman”で賞を受賞し、数々の映画祭で上映され、注目を浴びる。現在はLieberman Productionsにてエディターとして活躍中。