日系文化会館(JCCC)でお正月会が開催
東京オリンピック期間中は「ジャパン・ビレッジ」として五輪の放映が決定!
多くのボランティアの方々に支えられているお正月会
1月26日のお正月会では伝統芸能のパフォーマンスやデモンストレーションが数多く行われ、子供からお年寄りまで幅広い世代が参加。トロントにいながらとても日本らしいお正月が味わえる貴重な機会となった。
お正月会の開幕を彩ったのは、JCCCの太鼓クラブ「響和太鼓」によるパフォーマンス。力強い音色とリズムで会場を虜にした。その後、お正月会実行委員長を務めた新日系コミッティー(NJCC)の福島次郎代表による開会の挨拶が行われ、「このお正月会を十分にお楽しみください」と述べた。
東京オリンピックの期間中、JCCCはカナダの公共放送局「CBC」と提携
次に登壇したのはJCCCの理事長であるゲーリー・カワグチ氏。日本語で「皆さん、あけましておめでとうございます」と挨拶をした後、伊藤恭子総領事をはじめとした来賓に歓迎の言葉を述べ、「多くの家族の顔が見られて嬉しい」と会場の活気に喜びをあらわにした。また、JCCCの運営に携わっているスタッフと1100人ものボランティアにも感謝の言葉を述べた。
さらに、カワグチ理事長は「2020年はJCCCにとって盛り沢山の年となる」と期待を口に。今年開催される東京五輪の期間の間、JCCCはカナダの公共放送局「CBC」と提携。五輪の様子をJCCCで放映することになると言う。「日本に行かずともオリンピックを楽しめる」とあり、多くの人に参加してほしいと呼びかけた。そして最後にJCCCの「文化」と「友情」に重きを置いた精神を改めて強調。「会館のもと、文化がわかる、心が通う。これからも多くの人々と交流の輪を広げ、日本の文化や価値観、そして日系カナダ人の歴史を分かち合っていきます」と日本語で述べた。
お屠蘇やお雑煮、さらには獅子舞や書き初めなど多くの体験が一度に出来ることは素晴らしいことだと称賛
来賓として招かれた伊藤恭子総領事は、「あけましておめでとうございます。いよいよ令和初めてのお正月が明けました」と新年の挨拶を述べた上で、2020年の重要性について言及した。2019年は日加外交関係の90周年ということもあり、多くのイベントがあったものの、2020年はJCCCが「ジャパン・ビレッジ」として東京五輪を盛り上げることが期待されると語った。また、五輪は「2011年の東日本大震災からの復興、そして持続可能・インクルーシブな社会を日本から発信する」重要な機会になると加えた。
さらに、「日本では一度にこれだけたくさんのことを味わうことはなかなか出来なくなっている」と述べ、運営に携わったJCCCや新日系コミッティーNJCC、そしてボランティアに対して感謝の意を表した。最後に「日本よりも日本的なお正月を皆さんに味わってもらいたい」と加え、2020年が幸せと繁栄の年になるよう願いを込めて挨拶を締めくくった。
NJCCのハーモニーと芯の強さで今年もトロントの日系コミュニティーに貢献していきたい
最後に登壇したのはNJCCの代表を務めるラシュトン・美紀さん。新年の挨拶を述べ、来場者に感謝の言葉を述べた。次に、令和二年そして2020年であるということもあり、「二」という数字について言及。「二」という数字は「平和・ハーモニー・芯の強さ」という意味があり、これらはまさに日本を象徴する意味合いだと加えた。これを元に、「NJCCのハーモニーと芯の強さで今年もトロントの日系コミュニティーに貢献していきたい」と決意を口にした。
「屠蘇(とそ)」のデモンストレーションや餅つき、さらには「かっぽれ」の家元、鈴乃家梅奴氏によるパフォーマンス、伊藤総領事による琴の演奏など様々な演芸で会場は大盛況
会場では、正月の伝統的な祝い酒として知られる「屠蘇(とそ)」のデモンストレーションが行われた。薬用酒の一種であり、無病息災を祈るためにいただくお屠蘇。デモンストレーションでは、お屠蘇をいただく際には目下のものから目上の者へ順に進めることや、その理由として「若い者のエネルギーを受け渡していく」または「目下の者が毒味をする」意味が込められているなど、一つ一つの決まりについても詳しく解説がされていた。
さらに、餅つきでは伊藤総領事をはじめ、国際交流基金トロント日本文化センターの清水優子所長やトロント日本商工会の遠山達也会長も参加。JCCCを代表して理事長のゲーリー・カワグチ氏、館長のジェームズ・ヘロン氏、そしてアドバイザーのシド・イケダ氏も大勢の掛け声に合わせて餅をついた。
さらに、会場にいた子供たちも列を成して餅つきを体験。つかれた餅はその後、来場者に振る舞われた。餅つきをはじめ、お正月会の随所にはゲームコーナーや書き初めなど、子供たちも楽しめる内容が一日を通して多く開催。また、紙芝居師による「浦島太郎」や「へっぽきよねさま」の紙芝居も上映されるなど、日本でもなかなか触れる機会がない伝統的な体験が数多く実施されていた。
お正月会の後半には、パフォーマンスが数多く並んだ。トロント芸能愛好会の企画による多種多様な「演芸プログラム」の始めには、はるばる日本よりやってきた「かっぽれ」の家元、鈴乃家梅奴氏によるパフォーマンスが行われた。江戸芸の一つである「かっぽれ」は、民謡などに合わせて踊るもの。他の舞踊では見られない「赤いタスキ」を付け躍るのが特徴だそうだ。そんな「かっぽれ」の家元である鈴乃家さんは三味線と横笛を演奏したのち、福岡県の民謡である「黒田節」や仮名手本忠臣蔵の一部である「笹や節」にのせ踊りを披露した。
中でも特に注目を浴びていたのが伊藤総領事による琴の演奏。箏曲家としても有名な宮城道雄さんによる「さくら変奏曲」を披露した。その他にも、トロントを拠点に活動するよさこいグループ「桜舞」によるダンスや「うらら民舞会」による阿波踊りからJCCCの居合道クラブによる「試し斬り」まで、幅広い演目が披露されたのが印象的だった。
日本の「お正月」の伝統が一度に幾つも味わう場を提供したJCCC・NJCC共催のお正月会。トロントにいながら日本の文化に触れることができたのは来場者、そして主催者にとっても意義のあるイベントになったのではないか。2020年はオリンピックイヤーということもあり、トロントにおける日系コミュニティーにとって重要な年。その核となるJCCCとNJCCの活動を通して多くの人たちが交流できることを願ってやまない。