そして父になる 是枝裕和監督

今年5月に行われた第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞で話題となった映画、『そして 父になる』が、トロント国際映画祭スペシャル・プレゼンテーション部門に出品され、9月7日にWinter Garden Theatreで北米プレミア上映を行った。
今上映に際し来加した是枝裕和監督。舞台挨拶を行い、映画祭会場ではカンヌ国際映画祭で審査員を務めた二コール・キッドマンと再会、熱烈な逆出演オファーを受けたという。
今回はそんな是枝監督に、トロント国際映画祭の思い出や撮影方法などについて伺った。
トロント国際映画祭は都市型映画祭が目指す一つの形
トロント国際映画祭は非常に大好きな映画祭で、いくつか理由があるのですが、一つはご飯が美味しいこと(笑)、もう一つは非常にお客さんの質が高く、取材に来るジャーナリストのレベルが高いことですね。コンペティションのない、都市型映画祭が目指す一つの形だと思っていて、そういう意味で言うと一番進んだ映画祭だと思います。
あとやはり北米プレミアとしては一番素相応しい場所だと思います。僕も今回ここをスタートにしてカナダ、アメリカへの公開へと良い形で繋いでいきたいということも視野に入れながらの参加で、そういう位置づけとしても重要な映画祭だと思いますね。どういう反応だろうなと、毎回期待がありますね。
初めて自身の作品が北米へと広がっていった、思い出深いトロント国際映画祭
トロントには8度目です。僕の全作品で呼んでいただいていて、一度、9.11の時だけ来ることができなかったのですが、それ以外では会場にお邪魔させていただいています。
この映画祭に初めて訪れてから18年程経ちますが、その中でも一番印象に残っているのが、一本目の映画を持って訪れた時です。当時は、まだ誰も僕の映画のことを知らず、セールスエージェントやパブリシストもちゃんとついていない状態だったのですが、この映画祭で初めて自分の映画が北米の配給会社に売れたのです。それがとっても嬉しかったです。こういう風に映画って広がっていくのだなということを実感できた場所でした。
シリアスな題材でも、思い出してほしいのは「笑顔」

観終わった後に、たとえば「誰も知らない」で言えば、観た人が後で映画のことを思い出したときに、子供が笑っている表情とかを思い出してほしいなっていう。彼らがちゃんとそこで生きていたよということをむしろ思い出してほしいし、その笑っている姿が悲しいっていうのは良いなと思う。そこでなんかもっと悲惨な状況を描写して、そのことが観た方々の中に残るよりは、笑顔が残りたいっていう風に考えながらあの作品は作りましたね。
今回のもだけど、シリアスな状況でも普通に観ていると可笑しいところが結構あるじゃないですか、人って。だからすごく、その緩急を考えて自分では作っていますね。
物語の前後が想像できる撮り方をしたい
劇映画だけど、たとえば今回で言えば、映画が始まる前までにもあの家族はあそこで暮らしていて、映画が終わってもあの翌日にも家族はあそこで生きていくという、その前と後がちゃんと観た方の中に想像できるような撮り方をしたいなということをいつも思いながら撮っています。映画よりも長い彼らの生活がその前後にあって、映画はその一部を切り取るという。その感覚はこれまで多くのドキュメンタリーを撮ってきたことからなのかもしれないですね。
立場や年齢によって変わる「家族」の描き方
今5つぐらい撮りたいと思っている構想があります。ジャンルを問わず、いろいろやってみたいなと思っていますよ。家族の話は何本かやってみて、非常におもしろいし、自分が息子だったときに撮ったものと自分が父親になってから撮っているもので、やっぱり、少し家族の描き方が変わってきているから、そういう変化を楽しみつつ、60歳、70歳となっていったときに家族のものが撮りたいなというものはあります。
是枝 裕和 (これえだ ひろかず)
映画監督・テレビディレクター。1962年、東京生まれ。87年に早稲田大学第一文学部文芸学科卒業後、テレビマンユニオンに参加。主にドキュメンタリー番組を演出、現在に至る。95年に、初監督した映画『幻の光』が第52回ヴェネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞等を受賞。04年には、監督4作目の『誰も知らない』がカンヌ国際映画祭にて映画祭史上最年少の最優秀男優賞(柳楽優弥)を受賞し、話題を呼ぶ。その後も制作した映画ごとに世界から多くの注目を集め、12年には映画だけでなく、初の連続ドラマ全話脚本・演出・編集を手掛けてもいる。そして最新作『そして父になる』ではカンヌ国際映画祭審査員賞受賞。










