真壁幸紀 監督インタビュー
2015年に伊藤淳史さん主演で公開された「ボクは坊さん。」。本作品は、24歳で住職になった白川密成氏の随筆「坊さん。 57番札所24歳住職7転8起の日々。」を実写化した映画だ。「踊る大捜査線」や「ALWAYS 三丁目の夕日」で助監督を務めた真壁監督の初の長編映画監督作品だ。今月9日にJCCC(Japanese Canadian Culture Center)で行われる上映会に先駆けて真壁監督に本作品に対する意気込みや、映画に込められたメッセージを語ってもらった。
監督は「踊る大捜査線」や「ALWAYS 三丁目の夕日」などの監督助手を務め、この作品が長編映画の監督デビュー作になります。初めての長編映画の監督ということで、製作前の意気込みなどがあれば教えてください。
もちろん全力で取り組もうと意気込みましたが、力が入り過ぎて周りが見えなくなってしまってはいけないので、逆に力を抜く事を心がけました。
今回の作品は、「ALWAYS 三丁目の夕日」のスタッフで製作されたと聞いております。同作品は大ヒットとなった映画ですが、そこから学べたこと、「ボクは坊さん。」に生かせたことなどはありますか?
単純に役者さんの良いお芝居を撮るという事の重要性です。「ALWAYS 三丁目の夕日」は昭和を再現したCGや美術などがトピックとして取り上げられる事が多いですが、何よりも役者さんのお芝居が素晴らしいからヒットした作品だと私は思います。良いお芝居を引き出すには、どうすればいいのか。それを第一に考えながら、演出しました。
この映画は白川密成さんの本をもとに映画化されました。この本を映画化してみようと思ったきっかけ、理由はなんでしょうか。
はじめに映画化しようと思ったのは今作のプロデューサーで、私は監督をしないか?という打診を受けて本を読みました。仏教を全面に押し出す本ではなく、一人の若者の成長物語の中に、仏の教えを散りばめるという非常に読みやすい本でした。これを映画にしたら、多くの人に受け入れてもらえるのではと思いました。
主演に、伊藤淳史さんを起用された理由をお聞かせください。
これも私じゃなくプロデューサーですが、伊藤さんご自身の誠実な人柄が、主人公・光円にピッタリだと感じたからです。
映画に込められた「ぼくにはできないことがたくさんある。でも、自分だからできることがある」というメッセージで、視聴者に伝えたかったものとは何でしょうか?このメッセージの背景とは何でしょうか。
同じ事の繰り返しに見える毎日を丁寧に生きる事で、「少しずつだけど成長していけるんだ」という想いを映画に込めています。劇的な変化を求めて、自分が出来ない事に手を出すよりかは、自分の置かれている状況や環境によく目をこらし、自分だから出来る事を考え、そこに一歩を踏み出す事で、道が開けていけるのではないかというメッセージです。
カナダを始め海外の人々がこの映画に対して感じる魅力とはなんでしょうか。
世界遺産である高野山・奥の院での映画撮影許可が下りたのは、史上初めてです。また主人公のお寺である栄福寺は四国お遍路57番目のお寺であり、お遍路さんが途絶えない人気のお寺です。日本の文化を知る事ができ、そして現地にも足を運びたくなる映画になっているかと思います。
真壁監督の今後の展望をお聞かせください。
世界中で観てもらえる映画を作る事です。
5月のJCCCでの上映で、「ボクは坊さん。」の鑑賞を楽しみにしているTORJA読者へのメッセージをお聞かせください。
難しい映画ではないので、お子さんでもご年配の方でも楽しんで頂けると思います。上映時間は99分です。ご家族・ご友人を誘って、気軽に上映会に足を運んで頂けると、嬉しいです。
映画のあらすじ(公式ホームページより) bosan.jp
白方光円、24歳。突然の祖父の死をきっかけに、四国八十八ヶ所霊場、第57番札所・栄福寺の住職になったばかり。この寺で生まれ育ったけれど、住職として足を踏み入れた”坊さんワールド”は想像以上に奥深いものだった。初めて見る坊さん専用グッズや、個性豊かな僧侶との出会いにワクワクしたり、檀家の人たちとの関係に悩んだり。お葬式や結婚式で人々の人生の節目を見守るのはもちろん、地域の“顔”としての役割もある。職業柄、人の生死に立ち合うことで“生きるとは何か?死ぬとは何か?”と考えたりもする。坊さんとしての道を歩み始めたばかりの光円に何ができるのか。何が伝えられるのか。光円は試行錯誤を繰り返しながら、人としても成長していく…。
真壁 幸紀(まかべ・ゆきのり):1984年生まれ。「踊る大捜査線」、「ALWAYS 三丁目の夕日」などの助監督を務め、のちにディレクターデビュー。2012年にショートフィルム『THE SUN AND THE MOON』が、Louis Vuittonが主催する国際的映画コンテストJourneys Awardsで審査員グランプリを受賞。2015年公開の「ボクは坊さん。」で長編映画監督デビューを果たす。