忘れがちな水の大切さに気づかされる ドキュメンタリー映画「Watermark」監督インタビュー
世界中10ヵ国で20ものエピソードのなかで、人と水との在り方を記録したドキュメンタリー映画。エピソードでは、膨大な量の水を使うアワビの養殖池や、ヒンドゥー教の祭典クンブメーラでは5万人以上の人が同時にガンジー川へ押し寄せることを映し出しながら、100万年前に形成された氷河の一片から紐解かれる歴史を紹介する。
人は水を使い、水に惹かれ、水から学ぶ・・・。当たり前に存在する水の大切さを様々な角度から追求しているドキュメンタリー。
昨年公開された水のドキュメンタリー映画「Watermark」生き物は水がないと生きてはいけない。人間は一日の中でさまざまな形で何度も水と関わっている。観た人の水に対する考え方をひっくり返してしまうような深いテーマの映画。今回TORJA編集部が監督のJennifer Baichwalさんをインタビューした。
映画作りを始めたきっかけ
私は映画監督になるために映像の勉強をしていたわけではないの。学校では哲学と宗教に関した神学を専攻していて、大学院までいって勉強したわ。その時に私はもっと研究員らしくない、今までとは違う方法で自分の問題と向き合いたいと思っていたの。それで映画を作り始めた。自分で勉強しながら、やりながらいろいろ覚えていったわ。それから今まで、もう20年以上映画を作っているの。
Watermarkを撮ろうと決めた理由
私は2006年に「Manufactured Landscape」という、中国での産業革命をテーマにしたドキュメンタリー映画を作ったわ。それが、こんなにも世界中の人たちに影響を与えるなんて思っていなかったの。でも私たちの予想をはるかに上回って、世界中で反響があったのが事実。たくさんの人たちにそれぞれの廃棄と消費について考えるきっかけになったわ。例えば、普段は見る機会がないような、リサイクル工場で私たちが捨てたものがどう変わっていくのかなど、実際には捨てた人たちに関係している場所に映画を通して連れていく感じね。
それが私とEdwardが一緒に仕事をした映画、今回また何かを一緒に創りたいと言う話になって、テーマに水を選んだの。理由は私たちが持っている資源の中で近い将来一番必要とされていくからよ。カナダでは特に水辺の近くにできている掃き溜めが問題になっているし、それは世界中の国々でも問題になっている。問題提起のしやすいテーマだわ。私たちは映像の中で世界中の人がさまざまな形で水の使い方や廃棄水の処理と関わることに注目して、見る人の水という資源に対する意識や自覚を高めたかったの。
創ることへの挑戦
全てこのことが挑戦的だったわ。世界中10か国を旅したし、その中のロケ地では街から離れていたり、非常に行き難い場所にあったりしたの。実際ロケ地についても、そこでの撮影が難しい時もあったわ。例えばインドでのクンブメーラという宗教のお祭りでは、道が通行止めになるから5日前までに歩いて街の中心部に行かなきゃいけなかったわ。さらに、撮影現場まではにスタッフ全員でカメラなどの撮影道具を持って約2時間のハイキング。こんなことが行く先々であったのよ。
観客の反応
カナダでは2つの大きな賞を取ったわ。一つはCanadian Screen Award。もう一つのToronto Film Critics Association AwardsでBest Canadian Filmに選ばれたのはとても嬉しかったわ。他にもGabrielleやThe Dirtiesなどのドキュメンタリー以外の映画もあったのに、審査員はそれでも私たちの映画が優れているって思ってくれたのね。観客にとっても映画はとても感動的だったみたい。
‘水’への意識
とても大きく変わったわ。水がなかなか手に入らないところに行ったり、汚染されてしまって使えない場所に行って、カナダで飲み水がすぐ手に入るというとに対しての感謝の気持ちが強くなったわ。それに日々の水の使い方も少し変わったわね。それにオンタリオ湖の水質保護運動にも参加しているわ。世界中に提携団体がいて水を悪用しようとする人たちを止めているの。活発に活動しているいい団体よ。私もできる限り時間を作って活動しているわ。
映画つくりは私の天職
20年以上映画を作っていて、これは仕事と言うより、使命という感覚の方が強いわ。学校を卒業して初めての映画を作った時に、自分がすべきことを見つけた感覚があったの。その感覚を持てたことが本当に幸運だと思うし、映画作りを通してできるさまざまな経験はとても特別な恩恵だわ。私は自分の仕事が大好きよ。
読者へのメッセージ―Watermarkを見る時に―
環境問題をテーマにした映画で、いきなり問題提起をしてもうまくいかない時もあるの。辛い事実を見ることによって、落ち込んでしまったり、その事実から目を逸らそうとするでしょ。でもこの映画はそうじゃない。いろいろなカメラを使って、ヘリコプターからの撮影や、違う解像度の画像をつかったりと視覚的な言語がすごく強い、雄大なエピソードをつくっていったわ。この映画をみることは、疑似体験に近い感覚よ。世界中の人の水とのやり取りを見て感じてほしいし、映画を観終わった時にはより深い理解と水に対する敬意をもっていてほしいの。