【第24回】国際結婚における夫婦別姓 2|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話
外国人との婚姻による氏の変更届
カナダ人とカナダで結婚する場合、まずカナダの婚姻手続きを終えなければなりません。めでたくオンタリオ州の結婚証明書を手に入れたら、その交付日から三か月以内に総領事館に届け出ましょう。
日本人同士の婚姻と異なり、国際結婚の場合、夫婦別姓が基本です。もしカナダ人の配偶者の姓に変更したければ、「外国人との婚姻による氏の変更届」を提出しければなりません。
この時、オプションとして複合姓があります。夫の姓を自分の姓をつないだ姓のことです。これも国際結婚をする日本人のみに与えられた選択肢なのです。例えば「山田ジョンソン花子」がこれに当たります。
さて、婚姻届期限の三か月に対し、氏の変更届の期限は六か月です。婚姻届と同時に提出すると手間が省けますね。別々に行う場合は、新しい戸籍抄本・謄本が必要になってしまいます。
期限を過ぎてしまったら
期限を逸した場合でも、日本の家庭裁判所へ氏の変更を申し立てることができます。しかしこれは、変更が必要な理由を具体的に説明するなどの負担を伴います。
さて、ここで特筆したいことは、家裁が一旦氏の変更を認めてしまうと、簡単に旧姓に戻れない、ということです。在外交官で期限内に行った氏の変更であれば、離婚届と一緒に届け出れば旧姓に戻ることができます。しかし、家裁の判断で氏が変更された場合、離婚時の届け出で旧姓に戻すことはできません。どうしても旧姓に戻りたいなら、再度家裁に申し立てることになります*。
期限内に「氏の変更届」を提出することの重要さ、ご理解いただけたと思います。
夫と妻の姓が違うと不便?
「夫と妻の姓が異なると、正式に結婚していないと思われるのでは?」と話す女性がいました。逆に「日本人から偏見の目を向けられない日本の姓をキープすべきだ」という意見もあります。結婚後に名乗る姓を決める時、社会規範が気になるのは無理もないでしょう。
しかし、実際に夫婦同姓の女性たちに話を聞くと「何も考えなかった」「夫婦同姓がフツーだから」という返答の多さに驚きます。一方、夫婦別姓の女性たちは、「夫婦別姓に不便はない」と言います。それは、次のような便宜が図られているからかもしれません。
子供の姓の選択肢:カナダ用と日本用
カナダでの国際結婚においては、カナダの出生届は夫の姓で、日本のそれは母親の姓で、という選択肢があります。しかも、日本のパスポートにカナダの姓を併記することも可能です。山田(ジョンソン)花子がその一例です。これは、カナダの姓と日本の姓が異なっていても同一人物であることが簡単にわかるようにという配慮でしょう。
しかし、重国籍の子供が日本のパスポートでカナダに入国するときは、入国管理官からカナダのパスポートを入手するよう指示を受けることがあります。これが煩わしくてカナダのパスポートも作った、という方もいます。
夫婦別姓を考えるとき最も気にかかることは、子供への影響でしょう。しかし、体験者の話から、子供たちは、成長に伴い臨機応変に二つの国籍と二つの姓を使い分けていることもわかりました。例えば、日本語学校では日本の氏名を使うけれども、卒業証明書には、カナダの氏名を明記してもらうなどです。
国際結婚における夫婦別姓についての理解を深めることは、国際結婚をする日本人にとってとても大切なことです。後悔のない選択ができると良いですね。
国際離婚経験者のピアサポートグループAPJW(NPO)
野口洋美 心理学名誉学士(HBA)、コミュニケーション学修士(MA)
オンタリオ州公認パラリーガル、国際離婚経験者のピアサポートグループAPJW(NPO)理事
別居や離婚を経験することになった日本女性の相互支援(ピアサポート)団体(web:apjw.info)の代表として、自立に向けての様々なテーマで勉強会を毎月開催。国際離婚関連の執筆多数。離婚駆け込み寺(日加タイムス)、ひとり親のつぶやき(mamma、日系ボイス)など連載。2014年、国際離婚とハーグ条約をテーマにヨーク大学にて修士論文を発表。法律通訳としても活躍中。