Michael Moriさんインタビュー
TORJA New year Special Interview
Juno Award受賞者!!カナダ国内最年少の33歳で歌劇団Tapestry OperaのArtistic Director(芸術監督)に就任した
Michael Moriさん
20年以上パフォーマーとして幅広く活動し、その内8年はトロント、バンクーバー、ダラスなどでディレクターとしても活躍してきたMichaelさん。若々しいユニークな視点から古典オペラに現代のエッセンスを織り交ぜていく。初めての公演を終えた感想とオペラについて語ってもらった。
子供の頃から音楽に慣れ親しんで育つ。オペラの他にもジャズやオーケストラの演奏者、ダンスや演劇などのパフォーマーと幅広く芸術関連に携わる。オペラパフォーマンス(学位)とミュージックパフォーマンス(修士)をブリティッシュコロンビア大学で取得した。その後はバンクーバーのMusica Intimaに在籍中Juno Awardを受賞し、ヨーロッパ、カナダツアーを行う。Tapestry Opera前Artistic DirectorのWayne Strongmanと意気投合し、2012年にTapestryに参加。2014年春にカナダ国内では最年少の33歳でArtistic Directorに就任した。
数多くある舞台の中からオペラを選んだ理由は何ですか?
選んだというよりはオペラが選んでくれた感じです。11歳ぐらいの時に所属していた男子合唱団でソロを歌う機会を得ました。それがきっかけでステージに立つことにより興味を持ち、オペラ以外にもオーケストラでフレンチホルン、ジャズでトランペットなどをやっていました。ジャズではミュージックディレクターも経験しました。どれもステージに立つ人と観客、両方とコミュニケーションをするという点で非常に楽しかったですね。非日常的なものを創り出して何千人もの人とコミュニケーションをするというのはすごく面白いです。
トロントに移り、Tapestry OperaのArtistic Directorに着任したいきさつは?
とてもシンプルな理由です。前に僕がバンクーバーにあるMusica Intimaに所属していた時、Juno Awardというカナダの音楽賞にノミネートされてヨーロッパやカナダ国内を回りました。それでトロントに来た時にTapestryの前のディレクターと出会っていろいろな話をする貴重な機会があり、意気投合しました。オペラはすごく“歴史的でゴージャス“という話が出て、それはすごくいいことだけれど同時に大きな問題でもあると思いました。古典オペラも創られた時には当時の思いや出来事を反映していますが、それは現代とリンクしていないので、今の、特に若い人にとってオペラをとても近寄り難いものにしています。僕は歴史的でゴージャスなオペラに現代的なジャズや、ロック、ヒップホップなどを混ぜてもいいのではないかと思っています。今新たなものを創り出していかないと未来に”古典オペラ“は存在しなくなります。それはオペラが無くなってしまうことだと思うのです。そこにTapestry Operaが賛同してくれて、一緒に活動していくことを決めました。2年間Associate Artistic Directorとして活動し、2014年の春にArtistic Directorに着任しました。
新しい形のオペラを作っていく上で何が大変ですか?
今回のBooster Shotsは全部で10種類のオペラから12シーンを上演しました。通常シーンが変わる時にはカーテンを引き舞台セットを変えますが、今回はシアターの中をお客様が移動している間にセットを変えていきました。もらったフィードバックによると40歳以下の人はとても気に入ってくれて55歳以上の人はどうしてこういった形にする必要があるのかあまり理解できなかったみたいです。僕としてはカーテンが引かれている間に舞台セットが変わっても新鮮味が無いと思うのです。せっかく別のオペラのワンシーンなので劇場に初めて入った時の何が起こるのだろうという高揚感を演出するためにこの方法を使いました。ただ新しい要素ばかりだと高い年齢層には好まれにくく、伝統的な要素も取り入れなければなりません。わかっていましたが、両方のニーズに応えるのはなかなか難しいです。
観客の反応や年齢層に関してどのように感じましたか?
観客の平均年齢は40~45歳くらいで、中には30前後の人も多いので僕たちは十分に若い層からも支持を得ていると思っています。だから単純にもっと観客数を増やせるように頑張りたいです。反応の良かったオペラはThe Whisky Opera、The Blind Woman、そして人種変換手術を受けたアジア人と白人カップルのThe Fetishist。R.U.Rは大好きな人と大嫌いな人のどちらかだったのでそれはとても興味深かったです。
オペラが時代と共に変わっているように感じますか?
オペラの変化は観客の変化と関係していると思います。Booster Shotsの時のように若い人もいますが、統計によると全体的にオペラを観ている人は変わらずただ平均年齢が上がっているだけです。それは1940〜60年代に15〜25歳ぐらいだった白人のカナディアンで、彼らの音楽を聴ける機会はテクノロジーの関係でとても限定されていました。なので今でも当時慣れ親しんだオペラ、特に古典オペラを好んで観に来るのです。ですが彼らは現在の大多数を占めるカナディアン人口に当てはまるわけではありません。現代の人はウォークマンで聴きたい時に音楽が聴けて、ネットを繋げば世界中の動画を見ることが可能です。時代や国籍を問わず、様々な音楽が身近になりましたが、生演奏を聴く人は減ってしまったと感じています。オペラは歴史的だからこそ現代音楽の持たないテクニックを持っていて、新たなものを学べる場でもありますが、現代の人にとって興味を見出しづらいのも事実です。それは現代と過去で生活が違うのでストーリーに共感できなかったり、単純に長時間生演奏を聴く習慣が無いのかもしれません。ですから若い年齢層の人がどんな音楽を聴いていて、どういうストーリーに共感できるのかをいつも頭に入れて考えています。
TORJA読者へ一言お願いします。
英語でも他の言語でも、海外で言語を学ぼうとする時、より生きた言語を身につけたいのならば、それに影響を与えている文化なども同時に学ぶべきだと思います。だからオペラや舞台などのシアターに行くことをおすすめします。小さなインディペンデントシアターでは$16ぐらいからチケットが購入できる場所もあり、そういう”生もの”の現場に行けば様々な人に出会えるチャンスも訪れます。そういう出会いが言語を学ぶのを助けてくれると思うので、興味がある人も無い人も是非一度は行ってみてほしいです。