【日本酒の人気拡充へ期待の一歩】LCBO3ヶ所目の東アジアコレクション登場
日本と韓国、中国の多様な酒を取り扱った特別コーナーである「East Asia Destination Collection」が、「LCBO」のシェパード・ヤング店に開設された。初日の3月15日にはオンタリオ州の酒造関係者らゲストを招いたセレモニーがあり、LCBOの誇るアジアの酒がゲストたちの前でお披露目された。
日本酒へのアクセスを高める機会に
「East Asia Destination Collection」が置かれるのは、LCBOで3店舗目。アジア系の人口の多いマーカムの第1店舗目をはじめ、2店舗目にスカボロー、そして今回シェパード・ヤングが新たなロケーションとして選ばれた。
シェパード・ヤングは東アジア系のレストランが立ち並ぶエリアであり、LCBOとしてはターゲットの多いロケーション。アルコール商品を販売する店舗を置くことで、食事にさらなる選択肢を加えることを期待して今回のコレクションが置かれることになった。同店舗では店舗奥の大きな棚2つをメインに、日本など3カ国の酒だけを集めたスペースを設置。この他の店舗でも東アジアの酒は販売されているが、シェパード・ヤングでは希少価値の高い商品や人気のある商品を仕入れて陳列している。
ゲストを招いて開かれたセレモニーでは、まずLCBOのジョージ・ソレアス社長が挨拶。「東アジアの商品はLCBOのデスティネーション・コレクションの売り上げの40%を占めている」とした上で、「今回のコレクションを通して、地理的にも文化的にも多様で食の素晴らしい東アジアへとお客様をバーチャルでお連れしたい」と語った。
続いて在トロント日本国総領事館の松永健総領事が登壇し、「洗練を極めた製造方法が、日本の酒の最高の味を生み出している。3店舗目となるコレクションの始まりは、日本からの美しいアルコール製品の入手可能性を高める新たなマイルストーンになる」と話した。
セレモニーでは日本の伝統である「鏡開き」もあり、純米吟醸「玉乃光」の樽をソレアス社長や松永総領事らが掛け声に合わせて小槌で割り、会場は歓声に包まれた。乾杯の音頭で酒もふるまわれ、今回のコレクションの始まりを祝いながらアジアの酒を堪能した。
100種類もの多様なブランド
今回のコレクションに登場したのは、山口県の旭酒造の純米大吟醸「獺祭」や新潟県の発泡にごり酒「八海山」、奥の松酒造の「奥の松 大吟醸」、岩手の吟醸や純米大吟醸酒「南部美人」、チョーヤの「梅酒」「ゆず酒」、アメリカで製造されている純米吟醸「MOMOKAWA」、会津ほまれ酒造の「ライチにごり酒」、中埜酒造のフルーツ酒「國盛 みかんのお酒」など多岐にわたる。
LCBOによると、シェパード・ヤング店ではこれらの日本酒と共にソジュやマッコリなどの韓国酒、白酒などの中国酒を合わせて約100種類のブランドの酒を店舗内に並べている。また、オンライン上では店頭に並ぶものに加えてさらに150種類もの酒を購入することができ、うち122種類は日本酒だという。
LCBOの同コレクション担当者であるコートニー・ドーソンさんは「日本酒というのはそれ自体が非常にユニークな商品。近年は新しいスタイルの日本酒が登場し、LCBOとしても新たな顧客獲得に繋がっている」と話し、今回のコレクションに大きな期待を寄せる。その上で、「日本酒は料理のお供に最適で、日常的な飲み物として楽しむことができる。希少価値の高いプレミア商品などをぜひ手に取って楽しんでほしい」と、来店を呼びかけた。
シェパード・ヤング店は、午前10時~午後9時まで営業。日曜日のみ午前11時~午後6時。
在トロント日本国総領事館 松永健総領事
―3店舗目のコレクションが始まったことについて、どう感じていますか?
素晴らしいです。ロケーション的にも日本人が多く住んでいる地域ですし交通の便も良い場所なので、日本人以外にもカナダの方に日本酒に親しんでもらえるようなすごく良い機会ができたと思っています。LCBOのソレアス社長は実際に日本で日本酒にも触れていらっしゃるとのことで、日本のお酒に対して非常に高い評価を持っているようです。LCBOとしても日本のお酒をもっと売っていきたいという姿勢が強く感じられますので、引き続き協力していきたいです。
―日本酒に対する期待は何かありますか?
日本は地域によって気候も違いますし、蔵元の特色もさまざまなものがあって、それがお酒の種類の豊かさにも反映されていると思います。カナダの人には、ぜひ日本酒のたくさんのテイストに触れていただきたいですね。今回のセレモニーでも「こんなにおいしいお酒を飲んだのは初めてだ」と言ってくださった方がいらっしゃいました。いろんなお酒を楽しんでもらえたら良いと思います。
OZAWA Canada/Sake Institute of Ontario(SIO)
小沢彰太郎社長
―3店舗目のコレクションが始まったことについて、どう感じていますか?
このデスティネーションシリーズはもともと、お酒が一般の人にも広がっていくことを作戦の1つにしています。マーカムのお店で初めてコレクションを始めた時、他地域のお酒よりも売れ行きがかなり良くて1年で400%の利益があったと聞いています。そこからスカボローに2店舗目を置いて、私たちとしては次はもう少しダウンタウンに近いミッドタウンにコレクションを置いてほしいと考えていました。パンデミックの影響で計画に遅れは生じましたが、地下鉄が近くにあるこのシェパード・ヤング店舗が新しいロケーションに選ばれて嬉しく思います。
―カナダマーケットにおける日本酒の未来、期待はどこにあると感じていますか?
マーケットでの量をもっと増やしたいですね。世界の日本酒輸出マーケットとして、カナダは現在7位です。そこを6位、5位に上げていきたいですし、カナダのパートナーたちと協力して国内マーケットを広げたいです。日本酒メーカーや蔵の方からも、特に日本人以外の人に酒をエンジョイしてもらいたいという声をよく聞いています。
―トロントの人に日本酒のどういったところを楽しんでもらいたいですか?
バラエティーに富んだ日本の酒の種類をまずは楽しんでほしいです。うまみの深い日本酒もあれば淡麗辛口もあり、味の幅が広いのが魅力だと思いますし、蔵によって方針も歴史も違うからこその多様なお酒が生まれるのがおもしろいと思っています。酒を楽しんでもらいつつ、日本酒の味をみなさんに知ってもらえたらと思います。
オンタリオの地酒「泉酒造」ビジネスマネージャー水貝絵理香さん
アジアのポピュレーションが増える中、LCBOが需要に応じてアジアの酒のコレクションを始めてくれたのは嬉しいです。日本のお酒を購入する方も増えてきていますし、購入する層が広がっていることを実感しています。アジア人以外のマーケットを広げて日本酒がワインのようなカテゴリーになるためにも、今回のコレクションは日本酒がもっと一般的に受け入れられるようになる良いスタートだと思います。弊社からはフルーツ酒5種類、純米酒3種類を置かせていただいております。泉の酒は、トロントの地元で日本の伝統的な製法に基づいて手作りしていることが特徴で、新鮮なお酒を販売できるのは強みだと思っています。カナダはダイバーシティの国なので、新しいものを受け入れていく文化がありますよね。日本の寿司や食文化が受け入れられたように、お酒も同じように広がっていくことができると期待しています。
Kado Enterprise 宮下直尚社長
日本酒を販売する場所が増えることはとても良いことだと思います。このロケーションで日本酒の人気がどうなるか1,2年は様子を見ないといけないでしょうが、伸び代は十分にあるはずです。ワインと比べるとまだまだ人気が低い日本酒ですが、まずはお店を増やすところからがスタートです。今回のコレクションは、その一歩として良いものだと思います。これからカナダ市場でもっと日本酒を増やすのであれば、例えばカナダの人が好むようなお酒をもっと仕入れるべきだと思います。高級なお酒だけではなくて普通のお酒ももっと扱うようにして、そういった普通のお酒までカナダで飲まれるようになるよう私たちが頑張っていきたいですね。