第2回「バレエは本当に“誰も気にしていない”のか」|トロントのバレエ教室から
最近、俳優の Timothée Chalamet のバレエに関する発言が話題になったのをご存知でしょうか。
I don’t want to be working in ballet or opera where it’s like, ‘Hey! Keep this thing alive, even though no one cares about this anymore.
「バレエやオペラのようなものは、もう誰も気にしていないのではないか」
という言葉です。実際にその映像を見てみると、少し驚かれる方もいるかもしれません。
沢山のバレエ団やダンサー達がすぐに反応し、私が教えているスタジオにもCNNが取材に来られました。どう思うかと聞かれましても、私が寝ても覚めても夢中になっていることを 「No one cares」と言われたら、やはり少し寂しい気持ちになります。けれど同時に、「そう感じている人がいる」という現実も、どこかにあるのだと思います。
バレエは15〜16世紀のルネサンス期の宮廷舞踊を起源とし、フランスで舞台芸術として体系化され、ロシアで現在私たちが「クラシックバレエ」として学んでいる技術体系が大きく発展し、確立されていきました。500年以上の歴史を持つ芸術です。時代とともにバレエの技巧は磨かれ、進化を続けてきましたが、Marius Petipaなどの振付家によって生み出された作品や、チャイコフスキーやミンクスなどの音楽は、今も尚、多くの舞台で大切に踊り継がれています。
例えば、白鳥の湖は1877年に初演されてから、150年近くの時を越えて、今も世界中で上演され続けています。
これほど長い年月を経てもなお人々を魅了し続けているということ。それはただ「変わっていない」のではなく、「変える必要がないほど大切にされてきたもの」がある、ということなのかもしれません。
バレエは決して簡単なものではありません。身体も心も使い、長い時間をかけて少しずつ積み重ねていく、とても地道な世界です。「踊りたい」「見てほしい」「伝えたい」「残したい」と願う人たちによって、今日まで受け継がれてきました。
バレエには、言葉にしきれない美しさに出会う瞬間があるんです。踊っている時も、そして自分が観客であるときも。
バレエは、世の中的に大きな話題になるものではないかもしれません。映画のように誰もが熱狂する世界ではないかもしれません。けれど、出会った人の心の中に静かに残り続ける芸術なのだと思います。そしてその美しさや、ダンサーたちの努力が、ふとした瞬間に、誰かを支えていることもあるのではないでしょうか。

緒方理穂
Ogata Ballet Schoolディレクター 子どもから大人まで、初心者からプロまで、一人ひとりのバレエと向き合う時間を大切にしながら、日本人・カナダ人を問わず丁寧な指導を行っています。 Website: ogataballetschool.caInstagram: ogata_ballet_school














