アメリカの楽観、日本の悲観
国の通信簿の一つである経常収支と財政収支。国家のお財布である財政収支はアメリカも日本も冴えない。外とのやり取りを評価する経常収支も優等生だった日本はここにきてすっかり落ち込みつつある。そんな状況にアメリカと日本はどう感じ、将来をどう切り抜けるのか考えてみよう。
北米と日本を行き来していると飛行機の中でマインドのスイッチを切り替える癖ができてしまう。日本に飛行機で到着した途端、気持は保守的で悲観的で控えめにして日本の方々との温度差を調整する。一方、北米に来た途端、特にそれがアメリカの場合、なぜここまで楽観的かと思わせるぐらい自信がみなぎった状態になる。
私が大学生の時から言われたアメリカの最大の問題とは双子の赤字、つまり、貿易赤字と財政赤字である。この膨らみ方をみて人々は、アメリカは格下げだ、国債の担い手がいない、挙句の果てに崩壊するという訳の分からない放言まで聞こえてくる。だが、この国がそんな柔なわけがなく、ポジティブシンキングで世界の頭脳と金融と政治と人脈が集中する本質を見落としている。
リーマンショックの時、アメリカの財政赤字は2兆ドルを超えた。悪化の極みである。ところがV字回復というのはその財政赤字にも見て取れる。2013年には1兆2000億ドルの赤字水準まで「回復」し、2014年も7か月を経過した時点で前年比37%も改善している。何故だろうか?
アメリカは前例のない金融緩和政策を取った。それは様々な論争を生んだが結論的には緩い金融が生み出した力強いアメリカ経済の回復となったことに反論のしようはない。失業率は6月末で6.1%と信じられないほど良化し、株式市場では史上最高値にも関わらずアメリカが踊り狂い、世界に対して威圧的な大きな態度をとっているようには感じられない。むしろ、謙虚にそして、しっかり努力しているようにすら見える。
経常収支にしてもそうだ。アメリカが住宅バブルで歓喜し、住宅を担保にしたローンで家具屋と自動車屋が跋扈した時は確かに悪かった。だが、こちらもリーマンショックを契機に明らかに変わってきている。輸入するアメリカから輸出するアメリカへのマインド転換である。
アメリカの賃金は明らかに下がってきている。イエレン議長にとっては一番頭が痛く、それゆえに低金利からの脱却に踏み切れないとされている。だが、これはオバマ大統領がもともと考えていたシナリオのはずだ。アメリカへのレバトリ(自国回帰)そして製造業の復活である。これは着実に進む。あのGMの賃金が他国の自動車メーカーとそん色ない水準になったのは倒産して過去の遺産を清算できたこともあろう。
そして今回、アメリカは最大級の奥の手を打ち出した。それは原油輸出である。これは予想された事態であった。シェールガス革命で日本を始めアジア諸国の膨大なる需要に対してアメリカは少しずつ門戸を開いてきた。だが、本命はガスではなくシェールオイルであった。それは掘削用のリグの数に於いてシェールオイルがガスのそれの5倍もあることが物語っている。何故か?それはガスより儲かるからである。
アメリカが貿易赤字と財政赤字から脱却できる魔法はここにある。関税をかけた原油を輸出し税収を増やし、石油会社がそこで莫大な利益を得ればさらに所得税を徴収できる。双子の問題はこの方法を取れば霧散できるかもしれないのだ。
つまり、アメリカは楽観とポジティブシンキングの中、やはり、うまく切り抜ける道筋を持っているということである。思わず唸ってしまいたくなる。
一方、わが日本はやはり悲観なのだろうか?貿易赤字問題がメディアに大きく取り上げられる。「貿易大国ニッポン」の時代が終焉したがごとく扱われ、日本経済の先行きを危ぶむ声となっている。
では財政赤字はどうか?これは確かに目も当てられない。その中、安倍首相は法人税を20%台まで下げ、国際競争力をつけると力強く発言している。これに対してまたもや外野からは不安を増長する声が大きくなっている。
だが、私は楽観視している。何故か?企業業績が驚くほど回復して税金を払ってくれる状況になっているからである。今年の企業からの税収は、1〜2兆円は増えよう。来年はもっと増えるかもしれない。その上、消費税もある。相続税も2015年から控除水準の4割増しで高齢化の進む「金満大国ニッポン」から吸い上げる準備が完了している。
とはいえ、社会保障制度を抜本的に見直す以外には容易には財政赤字は埋められまい。その中でアメリカのようなウルトラCがあるとすれば海洋資源かもしれない。これは税のかけ放題だからである。
企業が作り上げたものに重税をかければ企業は海外に逃げてしまう。だが、資源は国家が所有するもので中国のように輸出の際に関税をかければよろしい。自由貿易と言えど、入りの防御はご法度になっても出を制するわけではない。
資源がない日本において海洋資源が商用化され、輸出可能となれば日本の潜在的問題が一気に解決するかもしれない。日本は資源が不足しているから輸出することはないと思われるかもしれないが、案外余っているものもある。石油などは消費低迷で制御しているぐらいである。だから資源の輸出は案外夢ではなくアメリカ並みに楽観できるかもしれない。
出来ればこの夢は私が日本の年金をもらえるまでにみせてもらえれば嬉しい。技術進歩はある時、加速度的に進むものだから深海から資源がザクザクとれる日が意外とすぐにやってくるかもしれないと思うのは楽観しすぎか。
了
岡本裕明(おかもとひろあき)
1961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、(株)青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模集合住宅開発事業に従 事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を推進し完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場 管理事業、カフェ事業など多角的な事業展開を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。













