金利って何だろう?
確定申告の時期が近づくと銀行はRRSP向けにGICなどの金利を引き上げ、是非とも当行に預金を、という宣伝が目を引くがこの金利も2%台を見かけることはあまり無くなったはずだ。ましてや日本の定期預金など雀の涙にもならず、銀行に預ける意味を思わず問い返したくなるものだ。今月はそんな金利について考えてみたい。
1992年にカナダに来たばかりの頃、出来たばかりのある日本人の知り合いが全く仕事をせずに悠々自適の暮らしをしていた。彼は確か当時20代後半にかかるところだったと思う。当時は金利が大幅に下がってきている時代であったがそれでも定期預金の利息は8%ぐらいあったと思う。家が裕福な彼曰く、「ここに自分で所有するコンドミニアムがあってあと貯金が50万ドルあれば金利で暮らせるからもう一生働くこと無し!」と豪語し、旅行をし、贅沢な外食を繰り返していた。それから10年ほどたって再会した時、彼は「暮らせないから働いている」とぽそっと言ったのが鮮明な印象となっている。
日本も昔は金利が高かった。アメリカもカナダも高かった。当時、高齢者はそれまでに蓄えた貯蓄を銀行の定期預金にしておけば少ない年金の足しになるとして大いにもてはやされたものである。だが、低金利化は日本を端に世界の先進国で瞬く間に進んでいった。多くの欧米の専門家は「金利は必ず上がる」と言い続けたが残念ながらオオカミ少年であったかもしれない。
今から10数年前、多額の事業資金買い入れを含む財務も担当していた私は、バンカーズアクセプタンス(銀行引受手形)で毎月借り換え、借り増ししていたため、市中金利の動向の読み方次第で金利負担は大きく変わる状況にあった。その金利の読み方についてことあるごとに私はカナダ中央銀行は利上げに踏み切らないと読み続け、当時の私の師は「金利は景気が良くなれば上がる。カナダはそろそろ金利が上がる」と言い張った。私は何度もそのバトルでほとんどすべて金利が上がらない方に賭け、勝ち抜いた。
なぜ金利は下がり続けたのだろう?
私の基本的な金利目線は国の成熟度である。GDPで見てもよいだろうし、一人当たりのGDPでもよい。だが、一番重要なのは一国の所得分布において中流層の所得が十分引き上げられているか、住宅の所有率は高い水準か、国民は幸せで政治は安定しているか、など総合的に判断している。そして、いわゆる先進成熟国であれば金利が10%にもなることはもはやあり得ないのである。
なぜかといえばインフレになる主因は下流、中流層がランクアップを目指し、働き、賃金が上昇し、高い消費性向を示し、最終的に一般家庭の最大の購入物である家を買ったかどうかなのだと考えている。このダイナミックな動きの中で経済は高揚し、ヒートアップし、金利政策によりその熱さましをすると考えてもよい。だが、家を買えばモーゲージが待っている。消費は当然抑えなくてはいけない。つまり、消費性向は下がるのである。
アメリカで住宅ブームのピークが2006年に終わったもののいつまでたっても金利が上がらない理由の一つはここにある。カナダも家計の負債率はリーマンショック前のアメリカよりも酷い最悪の水準にあり、家計はローンで首が回らない状態が続いている。こんな状態で金利が上がる訳がないのだ。
では、モーゲージが終わったらどうなのだろう?これは富裕者層に聞けば答え一発である。「家、高級車の次はボートかな?でもそれから先はない」。旅行とか、美食という答えを期待していた向きには申し訳ないのだが、たかがうまいものを食べたり、旅行に行ったぐらいでは大してお金は使えるものではない。毎日、フレンチのフルコースを食べていたら痛風になることは請け合いである。
話がそれてしまった。金利は国家が成熟すれば基本的には上がらない。なぜならばインフレになるほど消費が盛り上がらないからだ。その上、技術革新にネットショッピングによる価格破壊、グローバリゼーションが進み、物価は下がる傾向が続く。唯一、価格が不安定なのが生鮮品やガソリンなどの「商品」と言われる相場に左右されるものである。
それでもガソリンは燃費の良い車が多く開発され、車を使わないライフも様々な形でサポートされている。生鮮食料品についても今後、例えば植物工場がより普及すれば天候に左右されず、安定した収穫が期待できよう。となれば、インフレになる要因は為替変動による輸入物価の上昇であってこれは同じインフレでも景気が良くないのに金利が上がるスタグフレーションというカテゴリーになりやすい。
この為替の不安定さについては人的問題であるから将来、安定感を持たせる方法はあろう。私は米ドルが基軸通貨から自国経済を優先したローカルカレンシー化したとし、通貨バスケットなど新たなる安定手段を作り出すべきだと主張している。ビットコインはそのボイスを反映したもののひとつであるとも言えよう。
もちろん、中央銀行による金利操作は今後もあるだろうし、「調整」という意味では上にも下にも行くはずだ。だが、一般的には戦争や天変地異でも起きない限り、金利で生活するという夢はビリオネアでなければかなわぬ時代となったようだ。
了
岡本裕明(おかもとひろあき)
1961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、(株)青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模集合住宅開発事業に従 事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を推進し完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場 管理事業、カフェ事業など多角的な事業展開を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。













