もしトラ?もしドラ?具体と抽象を往来する|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第70回

今年は世界的な「選挙イヤー」と言われており、年明けの台湾総統選を皮切りに、3月にはロシア大統領選があり、4月は韓国で総選挙がおこなわれ、現在はインドの総選挙の真っ最中です。そして中でも世界から注目を集めているのが11月のアメリカ大統領選挙です。
日本では「もしトラ」という「もしトランプが再選したら」の略語が世間をにぎわせており、ついにアメリカのメディアでも「moshi-tora」というワードが紹介されました。この「もしトラ」は、2009年に出版されて大ベストセラーになった小説「もし高校野球のマネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の略称「もしドラ」が元ネタとなっているのですが、今回はひさびさに読み返したこの「もしドラ」についてです。
大ベストセラー小説「もしドラ」
先日、創業からラーメン雷神の店舗運営を支えてくれていたマネージャーが退職し、ついに創業メンバーが自分だけになってしまいました。11年も経てば、組織にとって新陳代謝が必要になってくる時期ではあるので、若いメンバーにマネジメント教育を行いながら、みんなで新たな体制を築いていこうと奮闘しています。そんな中で、自分も創業当時に悩まされたマネジメントについて、従業員にも勧めるうえで「もしドラ」を再読したのですが、マネージャー1年生の当時は気がつかなかった事が見えて、非常に有意義な読書体験となりました。
「もしドラ」はそのタイトル通り、公立高校の弱小野球部マネージャー・川島みなみが、マネジメントの父とも呼ばれるピーター・ドラッカーの名著「マネジメント」に出会い、その組織管理手法をもって甲子園を目指すというストーリーです。マネジメントについては本書にその説明をゆだねるとして、新たに得た気づきはその構成にあります。マネジメントという抽象度の高い難解な名著に書かれている原理原則をはじめに提示し、その原理原則が野球部を運営していくなかで具体的な行動に変換されます。小説を読み進めるにつれて、この具体と抽象の行き来を自然と繰り返し、思考のトレーニングにもなっていることに気づかされました。
思考の抽象度を上げる

こういったいわゆるビジネス本、特に歴史的名著や重厚なビジネスや経営、経済について書かれた本は、往々にして抽象度が高く難解です。しかし、マネジメントや経営の手法とは得てしてそういうもので、これを具体的な行動に移せてこそ価値があるのですが、この具体と抽象の狭間でつまずく人が多いのもまた事実でしょう。
現場の最前線でラーメンを作るのは、決まったオペレーションをこなせばいつも同じ味の商品が出来上がりますが、給料が上がり、役職がついて、オペレーションを構築する、さらには店舗のコンセプトを考えたり新規事業を立ち上げたりする場合には、どうしても抽象的に物事を考えることが必要になります。
仕事のレベルを上げるということは、自分たちの創出している価値と売上や利益といった数字を横断することであり、ミクロの視点を持って1グラムの調味料を調整しつつ、マクロの視点を持って業界全体を俯瞰して自分の立ち位置を確認することであり、つまりは、思考の抽象度を上げることだと言っても過言ではないかもしれません。
というわけで、巷には具体と抽象のトレーニングといったようなビジネス本、ハウツー本ももちろんあふれていますが、今回はドラッカーのマネジメントをかみ砕きながら、さらに具体と抽象を行き来する頭の体操にもなる、一粒で二度おいしい「もしドラ」のお話でした。






