拡大するラーメン市場、業界再編のうねり|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第85回
先月、帝国データバンクによる日本のラーメン市場の調査レポートが発表されました。2024年度のラーメンの市場規模は7900億円に到達する見込みで、10年前と比べて56%も成長しているそうです。ラーメン業界がいま、活況を呈していることを示す内容でした。
吉野家ホールディングスや、磯丸水産などを展開するクリエイト・レストランツHDといった企業が、M&Aを通して次の収益の柱としてラーメン事業に本格参入しており、売上高上位50社のチェーン店に限っても、店舗数は10年前に比べて約1200店増加し、はじめて6000店を超えました。
増えるラーメン業態への進出。その構造的な理由は?
また、ラーメン屋としてカウントされない回転ずしチェーンやファミレスといった他業態までもが、有名ラーメン店とコラボして期間限定ラーメンを提供するなど、ラーメンに注力する動きが広がっています。ラーメンを主力に据える企業がこれほどまでに増えているのは、単なるブームを超えた、構造的な理由があるように思います。
回転率が高くて利益率が良い、券売機や厨房オペレーションの標準化が進んでいてDXとの親和性も高い、インバウンドの受け皿としての需要も高く、日本食ブランドとして海外展開もしやすい。こうした魅力に加え、ラーメン屋は不況に強いという定説もあります。
景気が悪くなると、ラーメンは生活必需品と嗜好品の間に位置する手頃な贅沢として選ばれやすく、過去の不況やコロナ禍でも一定の需要を維持してきました。企業にとってはリスクヘッジにもなり、堅実な収益を見込める業態なのです。しかし、忘れてはならないのは、市場の拡大は競争の激化も伴います。特にラーメン屋は参入障壁も比較的低く、個人店から大企業までが同じ土俵で戦わなければなりません。つまり、活況の裏で、生き残り競争はむしろ厳しさを増しているのが実情です。
一方で増えるラーメン屋の倒産
ここまでラーメン業界の前向きな動きを見てきましたが、2025年上半期のラーメン屋の倒産件数は、過去最多だった昨年に続き過去2番目の高水準となったことが、東京商工リサーチの調査で明らかになっています。これは、資本力を持った大手の参入が相次ぐ一方で、競争力を持たない中小・零細のラーメン店が販売不振により淘汰されている状況を物語っています。
長年続いてきたラーメン屋が暖簾を下ろすのは、やはり寂しいものです。けれども、視点を少し引いてマクロに捉えると、すべてがネガティブとは言い切れません。こうした大手のラーメン業界への参入の流れは、経済アナリストのデービッド・アトキンソン氏が語る「中小企業の再編によって市場全体の生産性を上げる動き」と捉えることもできるからです。
アトキンソン氏は、企業数が多すぎることによって人材や資本が分散し、生産性が上がらないという課題を指摘してきました。そのうえで、一定の規模を持つことで生産性を向上させ、経済全体の底上げにつなげるべきだと主張しています。
いまラーメン業界で起きている、大企業による中小店の買収や、他業態とのコラボレーションといった動きは、まさに氏の言う「中小企業の再編」によって生産性が高まり、結果として市場の拡大につながっていると見ることもできるでしょう。
淘汰は厳しく、時に理不尽に感じられるものですが、それにどう向き合うかが店の強さを決める要素にもなります。抗う意志や工夫の積み重ねがそのお店の強さを形作り、ひいては、その集積が市場全体を次のフェーズに進めるという進化のプロセスなのかもしれません。






