2026年、トロント日本食市場の転換点|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第90回
昨年は12月に家系ラーメンの町田商店がオープンし、丸亀製麺もオープン間近(12月11日現在)となりました。家系ラーメンも丸亀製麺のうどんも、昔からお客さんとして大ファンなので、日本の味がここトロントで味わえるのはうれしい限りです。
ただ飲食店経営者として、この2店舗の出店を単なる話題店のオープンとしてではなく、象徴的な出来事として受け止めています。
町田商店と丸亀製麺は、どちらも日本で上場している大手の外食企業です。そんな有名な麺料理のブランドが、同じタイミングでトロントに進出したということは、トロントの日本食市場が「挑戦の場」から「投資の対象」へと変わりつつあることを表していると思います。つまり、今までは新しいことに挑戦する場所だったトロントが、今ではしっかりと利益を見込める市場になった、ということです。
日本国内で熾烈な競争を勝ち抜き、独自の強みと仕組みを磨いてきたプレーヤーが、トロントに出店したということは、日本人による日本食のマーケットが、十分なリターンを見込めるほど成熟したという証でもあるのです。
同時に、これからの新規参入は「賭け」ではなく、「再現性」を前提にしなければ成り立たない段階に入ったことも意味しています。
ただし、この動きは既存のプレーヤーにとって、必ずしも悪いことばかりではありません。いまのトロントで新たに飲食店を立ち上げることがどれだけ大変か、それは以前にも増してより厳しくなっています。特に、カナダの移民政策によって人材確保のハードルが上がったのは紛れもない事実で、日本から熟練のシェフを連れてくる、といった典型的なやり方はかなり難しくなりました。
そういった状況下で、人材や顧客、オペレーションというアセットを持っていることと、それをゼロから構築することの差は、
ますます大きくなっています。
上場企業が参入してきたという事は、十分なリターンを見込めると同時に、裏を返せば、それだけの体力や仕組みがなければ簡単には参入できない、つまり参入障壁が一段と高まったとも言えるでしょう。

ここまでの話はあくまでもメインストリームの話です。大通りをはずれた路地裏には、静かに、それでも力強く、脈々とながれるサブストリームが存在するものです。
差別化や独自性という観点で最近考えているのは、海外の日本食市場で、特にローカルに根付いた飲食店は、「日本の味をどれだけ正確に再現して現地で提供するか」という価値観から解放されることで、まったく新しい価値を創出できるのでは
という予感です。
日本の味を忠実に再現することには、参照点がある以上、ある意味で天井があります。 一方、ローカルの街に育まれてきた店には、まったく別の進化の過程があるように思います。 日本の外にあるからこそ生まれる、「日本食」の形。それは、規模や資本ではなく、思想や一貫性によって育っていくものかもしれません。
大手の参入によってある意味で市場が均質化し、大きなプレーヤーが定型を提示し始めたいまだからこそ、小さな店が小さな挑戦を積み重ねる意味は、むしろ大きくなっていると言えます。
海外の日本食は、都市ごとに違った進化をとげてきました。そこには、日本国内とは異なるガラパゴス的と言える固有の土壌が存在します。つまり、まだ誰も定義していない新しい地平を切り開く余地は、たしかに残されていると感じています。
2026年、海外という環境の中で日本食がどのような進化をとげるのか、その可能性を信じて、ラーメン雷神はチャレンジを積み重ね、一歩一歩、着実に歩んでいきたいと思います。





