注目の スーパーファン !ドレイクのラプターズ&トロント愛|特集 トロント・ラプターズ
なぜコートサイドに!?ファイナルでもう一人の主役となった「グローバル・アンバサダー」
トロント・ラプターズの試合、特にイーストカンファレンス決勝やファイナルでは、もはや監督ではないかと思うほど観客の最前列に座り、時には飛び跳ね、時にはうなだれ、と一喜一憂していたドレイク。多くのメディアが彼の一挙手一投足に注目をしていて、「お騒がせファン」なんて呼ばれたり、とにかく注目を集めていたドレイクとラプターズ、そしてNBAの深く長い関係、さらには彼のコートサイドでの行動など、様々な視点からドレイクのバスケットボールへの愛を紐解いていく。
ラプターズのグローバル・アンバサダーとして
ドレイクとラプターズの深い関係は2013年にまで遡る。その年の9月、それまで活気と成果ともに不調だったラプターズを活気づけるべく、ドレイクが「グローバル・アンバサダー」という名の公式パートナーとして選ばれたのだ。このポジションには、他のNBAチームにおいても各界の有名人が就任。ニューヨーク州のブルックリン・ネッツはラッパーのジェイ・Z、ペンシルバニア州のフィラデルフィア・セブンティシクサーズは俳優のウィル・スミスがグローバル・アンバサダーを務めるなど、「グローバル・アンバサダー」がいかに重要な役割であるかが分かる。
カナダ唯一のNBAチームであるラプターズのグローバル・アンバサダーに就任して以来、ドレイクは監督かの如くラプターズに深く関わってきた。中でも、2018年より始動した「Welcome Toronto」という名のプロジェクトのもと、ドレイクはラプターズのプロデュースをも行うようになる。まず、自身のブランドであるOctober’s Very Own(OVO)がナイキとコラボし、ラプターズのオルタネイトジャージーをデザイン。黒と金を基調にしたシックなデザインとなっている。「Welcome Toronto」が始動した2018年には、ラプターズの選手がこの新たなユニフォームを纏い試合に挑んだ。
また、「Welcome Toronto」を通してドレイクはラプターズと共に地元のバスケットボールコートをリフォームすべく実に100万ドルを寄付。カナダ・バスケットボールにはさらに200万ドルを寄付し、コミュニティにおけるバスケ文化の活性化を促した。そして、その貢献を称えるかのように、ラプターズの練習用アリーナは「OVO Athletic Center」に改名。ブランドのロゴであるフクロウがアリーナの外壁に大きく描かれている。
「ドレイク・ナイト」―知名度・価値上昇に大きく貢献
また、各シーズンにおいて「ドレイク・ナイト」と呼ばれる試合が開催される。ドレイク・ナイトではドレイクにまつわるグッズが無償で提供されたり、特別イベントが開催されたりするなど、ドレイクのファンにとってはまさにたまらない試合だ。過去には試合の始めにドレイクが選手を紹介したり、彼の有名な曲「Hotline Bling」のミュージックビデオに出てくる光のステージが用意されたりなど、まさにドレイクならではの内容がてんこ盛りだ。
しかし、ドレイク中心のようにも思えるドレイク・ナイトにおいても、ドレイク自身は「僕の名前が付けられているが、これはあくまでもラプターズが中心だ。このチームは素晴らしい。僕はトロントという場所が大好きで、ここまで多くの人が一丸となってラプターズを応援していることを本当に誇りに思うよ。ラプターズが僕を見放さない限り、僕はずっとこのチームについていくつもりだ」とコメント。改めてラプターズへの愛を語った。
チームの価値は2倍に
この効果もあってか、2008年から2016年までの8年間は一度もプレーオフにさえ出場出来ていなかったラプターズが今となってはNBA初優勝を手にしたチームにまで著しく成長。フォーブス誌によれば、ドレイクとパートナーシップを組む前と比べてチームの価値は2倍にもなったそうだ。
なんだかんだ憎めない「お騒がせファン」
間違いなくラプターズの知名度上昇に貢献してきたドレイクだが、試合での彼の行動には首をかしげるファンも少なくない。ここからはそんな「お騒がせファン」の一面を見せる彼の行動をいくつか見ていきたい。
「監督にマッサージ!?」
昨年よりラプターズの監督に新たに就任したニック・ナース氏。彼の隣に座るドレイクはイースタン・カンファレンス決勝戦の対ミルウォーキー・バックス戦にてナース監督の肩を揉んでいる姿が目撃された。ラプターズが波に乗り始めた第4クオーター。フレッド・バン・ブリート選手がスリーポイントを決め、ラプターズが17点差のリードとなった時だ。その瞬間、ドレイクはナース監督の肩に手を伸ばし、喜びを表現するかのようにマッサージを始めたのだ。
ドレイクのこの行動に対し、ファンやメディアの反応は賛否両論。「スポーツマンシップや仲の良さを表現したまでだ」と肯定的に捉える人もいれば、「ラプターズファンにとっての恥」と否定的に捉える人もいたそうだ。また、ファンとしての一線を越えたと批判する人もいるなか、グローバル・アンバサダーである以上、許されるべきではないかと反論する人も。実際、ドレイクは前にも試合への干渉をNBAにより注意された経験があるが、果たしてこれからもこのような行動をとるのかどうか注目される。
「ドレイクが放送禁止!?」
また、今年のイースタン・カンファレンス決勝戦が行われていた最中、ミルウォーキーのラジオ局がドレイクの曲を放送禁止にしたことにも注目が集まっている。「バックスがラプターズを倒すのを願いながら」という理由で放送禁止にしたものの、惜しくもバックスはラプターズに負け、イースタン・カンファレンス優勝を逃した。
その後、決勝戦が開始するやいなや、対戦相手のゴールデンステート・ウォリアーズの地元であるサンフランシスコ・ベイエリア(サンフランシスコとオークランドを含む湾岸地域)のラジオもドレイクの曲を放送禁止に。「ウォリアーズへの愛がないドレイクを見逃すわけにはいかない」とラジオ局の担当者がコメントしたそうだ。
「相手チームのプレイヤーを威嚇!?」
2016年11月のこと。決勝戦で対戦したゴールデンステート・ウォリアーズとの試合でもあったドレイク・ナイトでのドレイクの態度が話題を呼んだ。ウォリアーズのエース選手であるケビン・デュラントに向かって挑発的な視線を送ったのだ。ラプターズが得点を決めた際、ドレイクは自分の席から立ち上がり、デュラント選手に向かって振り返った。すると、「今のを見たか!」と言うかの如く彼の顔をまじまじと見つめた。この様子がラプターズの公式ツイッターに投稿され、「面白い」と言うファンもいれば「ドレイクの態度にはもうこりごりだ」と言うファンもいた。
果たしてドレイクはウォリアーズを嫌ってこのような行動をとったのか。しかし、その予想とは裏腹に試合前の会見でドレイクはデュラント選手に向けてエールを送っていた。公私ともに仲が良いことで知られている二人。デュラント選手がウォリアーズに移籍したことに対し意見を求められたドレイクは「彼がゴールデン・ステートへ移籍したのは素晴らしいことだと思う。友人が喜んでいるのを見ると僕も嬉しいよ」と二人の親しい関係性を明らかにした。ファイナルで怪我をおして出場し結果途中退場となった痛々しいデュラント選手を気遣う姿は記憶に新しい。
他にもデュラント選手と彼のチームメイトであるステフィン・カリー選手の背番号をタトゥーにするなど、ラプターズに限らずNBA全体への愛が深いこともよく分かる。
「言葉を発さずとも…!?」
言葉を巧みに扱うラッパーのドレイクだが、彼の挑発的な態度は言葉を要さない。中でも話題を呼んでいるのは彼が時折試合の際に着用した服の数々だ。まず、NBA決勝戦の第1戦目では、ウォリアーズのステフィン・カリー選手の父親でラプターズの一員でもあったデル・カリー選手の当時のユニフォームを纏い、アリーナに登場。また、第2戦目ではデュラント選手の下の名前である「ケビン」をネタに、映画「ホーム・アローン」の主役・ケビンの驚いた顔が描かれたパーカーを着て試合を観戦した。これらの挑発的な行動を繰り返し行うドレイクはまさに「お騒がせファン」である。
史上初の優勝にドレイクは…!?
そしてラプターズがチーム設立以来初めてNBA優勝を手にした6月13日の夜、ドレイクはジュラシック・パークにてファンとともに試合を観戦。もちろん、地元のチームによる快挙達成にはドレイクも喜びを爆発させていた。さらに、ラプターズが優勝を手にして間もなく自身のインスタグラムを更新し、翌日14日に新曲をなんと二曲リリースすると発表。この発表にトロント市民はより一層盛り上がりを見せた。
また、インタビューにてドレイクが口にした言葉が早速話題と笑いを呼んでいる。試合終了直後、ドレイクは「I want my chips with the dips, and that’s all I know」とコメント。直訳すると、「チップスと共にディップが欲しい、ただそれだけだ」となるが、この謎めいたコメントに各メディアは困惑している。果たしてドレイクは何を訴えていたのか。これからこのコメントの真相が明らかになるのか、注目していきたい。
優勝がかかった世紀の一戦はなんとNBAから出禁に!
注目を集めたコメントといえばもう一つ。試合終了後にドレイクが配信したインスタライブではNBA側から安全のために試合に来ないで欲しいと頼まれていたことを明かした。やんわりと出禁になっていたことをほのめかしたことも話題になったほどだ。
「ドレイク・カース」と呼ばれる因縁の「呪い」は解けたのか?
さらにラプターズの優勝で話題になったのが「ドレイク・カース」と呼ばれるドレイクによる「呪い」。この「呪い」というのは、ドレイクがかつて応援してきたチームや共に写真を撮った選手がことごとく敗戦することから、「ドレイクは負けを呼び寄せる」という噂が広まった。かつてこの「呪い」にかかったチームや選手には、サッカーのマンチェスター・ユナイテッド、総合格闘家のコナー・マグレガー、そして今回の決勝戦の対戦相手だったゴールデンステート・ウォリアーズも含まれる。先ほど例にも挙げたミルウォーキーやベイ・エリアのラジオ局がドレイクの曲を放送禁止にしたのにはこのような理由もある。
しかし、今回ドレイクがグローバル・アンバサダーを務めるチームが優勝を手にしたことにより、「ドレイクの呪いはついに解けたのか!?」とネットでは早速盛り上がりを見せつつある。果たしてこれから「ドレイクの呪い」を再び目の当たりにすることはあるのか、こちらも注目したいところだ。
今回、NBA決勝戦初出場・初優勝という二つの偉業を同時に成し遂げたラプターズにより注目が集まったドレイク。チームのグローバル・アンバサダー、そしてファンとしてその行動が常に話題になるまさに「お騒がせファン」だが、これからもラプターズそしてカナダのバスケットボール文化に引き続き貢献してくれることを願う。
写真: ラプターズ公式フェイスブックより