カナダで暮らす素敵なヒント 為替編
テレビやラジオで1米ドルのカナダドルの価値が70セントから68セントに下がった、72セントに上がったなどのニュースが日々流れていますが、このような為替の変動を実感する機会は、旅行や里帰りなどでカナダ以外の国を訪問する際に両替する時や、オンラインで日本から本を購入する時くらいでしょうか。
しかし、通貨の価値の変動は日常の思ったより多くのモノの価格に影響を与えています。カナダドルは2010〜2012年に1米ドル=1カナダドル以上の価値があった後は、下がり続けています。(縦軸 カナダドル・対米ドル)
昨年からのカナダドル価値下落は、スピードが早く変動率も大きいため、カナダの日常生活に今までにない程に目に見える形で影響を与えています。米国などからの輸入が大半である野菜や果物の値段が急騰しているのが1番わかりやすいですね。不動産価格の上昇はどうでしょうか?カナダドル安進行が海外からの不動産投資増加の一因であることは否めません。これら野菜、果物、不動産そのもの自体の質はあがっているでしょうか。モノの価値が上がったというより通貨の価値が減価された状況です。
私が昨年6月にトロントに移住してくるまで20年近く暮らしていた香港の状況を例に挙げます。香港はイギリス植民地から1997年に中国に返還され、返還後香港の中国本土化が急速に進みました。中国が世界的にも影響力を強めるに連れ、香港ドルと人民元の通貨価値もあっというまに逆転し香港に買い物にくる中国大陸の人達が急増。中国大陸からの不動産買いも強まり不動産価格は高騰。不動産を持たない香港地元の人々は、どんどん狭い場所、都心から離れた場所へ引っ越しせざるを得なくなりました。購買力をもった中国本土の人達の力は、香港の学校、病院施設の利用へも広がり、地元の子供たちの入学枠が減少、一時地元の人達が出産する場所を確保するのさえ困難になりました。もちろん、このような現象は、中国経済の発展、政治的な力の通貨価値の他にも様々な要因に起因していますが、購買力が弱くなる側の権利があっという間に奪われる姿を目の当たりにする経験でした。
こうした為替レート変動の暮らしへの影響を知ることで、例えば、今まで購買していたモノや場所を変えてみる、現在保有している資産や負債への影響を計算してみる。また、高価だから良いという安易な判断をやめ、通貨の減価による影響なのかどうかも考えてみる。現状を把握し見直した上で、リスクをコントロールをしていく。そのようなプロセスはまた新たな学びの機会でもあり人生をより豊かにしていくための一歩だと考えます。
取材協力:佐藤智子
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