カナダで暮らす素敵なヒント 駐在 – 奥様編
夫の駐在に伴い帯同家族として海外へ。
その間、妻は専業主婦として生活するケースがほとんど。
世に言う「駐妻」が見て感じたカナダ・トロントとは…。
Miwakoさん
(トロント生活4年、今月本帰国予定)
■ 初めての長期での海外生活はいかがでしたか? 戸惑いや困ったこと、慣れていく過程での発見を教えてください。
海外生活はこのカナダが初めてで、文字通り右も左もわからない状態からのスタートでした。海外で困るのはまずやはり言葉ですが、とにかく外に出てトライ&エラーを繰り返し、何とかある程度コミュニケーションできるようになりました。トロントの人は根気強く聞いてくれることが多かったので有り難かったです。
また時間や対応のルーズさやモノの質の悪さといった「日本では当たり前であったことが当たり前ではないこと」にもたびたび戸惑いました。これはだんだんと「そういうものだ」とゆったり構えられるようになりました。トロントでの生活を軌道に乗せるにあたっての日本人同志の情報ネットワーク、助け合いの力は本当に大きかったです。
■ トロントは世界の中でも駐在員および駐在員奥様の格差があまりなく、とてもみなさんフレンドリーだと聞きますが、実際いかがでしたか?
ご存知のとおり様々な職業・勤務先の方がいます。そしてそれぞれ様々な条件(勤務先での規定であるとか、家族の構成や年齢など)のもとで生活しているので、「違い」は当然あります。ですが、私の経験では、意識的に「格差」を突きつけられるような発言や態度を耳にしたり感じたりすることはほとんどありませんでした。そのようなことをしても意味が無いことを多くの方が承知していると思います。そしてそれに関わってくる話はするべきではないという、暗黙のルールのようなものがある気がします。
■ 世界各国、コミュニティの中では駐在組と永住組のように仕切りをつける傾向もあるのですがどのように思いますか?また日本人の方々とのお付き合いはいかがでしたか?
数年の駐在と永住とではそれぞれ生活上の関心事や悩みは異なってくると思うので、どうしても分かり合える者同志、そのようなグループに分かれることはありますが、永住の方の暮らしを知ろうとする駐在の方もいますし、その逆もあります。もちろん最初から距離を置こうとする方もそれぞれにいます。メディアで時々双方の溝を強調させたり、面白おかしく対立させていたりする記事を見かけますが、それらを鵜呑みにしてお付き合いする前から偏見を持つべきではないと思います。
私の場合、永住の方から聞いた経験談や情報は貴重なものでしたし、生活をしていく上でとても役に立ちました。少なくとも私が生活したトロントは近所に住む日本人同志、駐在や永住関係なく、助け合いの精神が根付いているように感じます。家族が病気になった時や災害時(2013年12月のフリージング・レインによる大停電の時など)は本当に心強かったです。
■ お子様の教育についてお聞かせください。日本語教育や現地校の勉強はいかがでしたか?
我が家の子供は現地校と補習校両方に通っています。親のサポートは必要不可欠です。補習校に通われていない家庭の方も様々な方法で、やはり二人三脚の日々だと聞きます。ただ英語については現地校で子供が自力で体得してきた感があります。子供にとっては大変な4年間だったと思います。不自由な思いもずいぶんさせましたが、頑張ってついてきてくれたことに感謝しています。
また、人種や文化の多様性を自然に受け入れられているのはトロントでの生活の賜物だと思っています。教育を超えた、社会からの学びだったと思います。日本語は家庭内の会話やマンガやゲームなど、とにかく触れさせる・使わせることを心がけました。補習校では読書を奨励し、作文の宿題も多かったので、読み・書き共に鍛えて頂いたと思います。
■ Miwakoさんはトロントにとても馴染んでいるように見えましたが、帰任が決まったときのお気持ちを教えてください。
そろそろだとは思っていましたが、実際具体的な話が出た時は「とうとう来たか…」と思いました。出会った人たちと別れる寂しさと、すっかり愛着のわいたトロントを離れなければならない寂しさの両方でいっぱいです。心残りの無いように過ごしたいとは思っていますが、引越や新生活の準備もあるので今は体も心も忙しいです。
我が家はこれまで住んでいた地域に戻る形になりますが、それでもどうしても浦島太郎のような感覚、アウェーの感覚に直面することになると思います。そんな中どう新しい環境に馴染んでいくかがこれからの課題だと思っています。
■ カナダと日本、すでに比べることのできない両国だと思いますが、Miwakoさんの場合どちらがフィットする感じでしょうか?
日本ではいろいろなことが便利にできていると思うのですが、システム化・マニュアル化されすぎていて時々息苦しさを感じます。トロントでは例えば、レストランやショップの接客がスタッフひとりひとりの個性が活かされていて、気さくな感じが気持ちよかったです(ごくたまに酷い対応をされることもありましたが…笑)。それと、街のあちこちで感じる、人々の小さな思いやりや寛容さは、日本ではここのところ失われつつある気がします。行政においても長期休暇中のキッズキャンプや、高校生の地域でのボランティア活動が学校の単位として計上される制度、大人が息抜きできて地域経済にも貢献できるリシャスなどはトロント市の素晴らしい政策だと思います。
住めば都という言葉の通り、カナダと日本どちらも愛着があり、どちらが好きかは決めがたいですが、トロントには日本にもあったらいいなと思うことがたくさんありました。
■ 今トロントで生活している、もしくはこれから生活する駐在員の方々に一言お願いします。
世界中のあらゆる人々・文化にこんなに触れられる街は他にはなかなか無いと思います。日本人が多い街なので全国から来た様々な人との出会いもあります。この特別な縁と時間を大切にしてほしいです。
自然が豊かで個人でも家族でも暮らしやすいトロントでの生活をぜひ楽しんでください。私がいた4年の間にもトロントは日系の飲食業・小売業が多数進出したり、交通網が整備されたりと、大きく変わりました。今後も街はどんどん変貌していくことでしょう。限られた期間、このトロントで生活する中で自分が充実できることを見つけ、深めて、帰国後も続く皆さんの暮らしや人生を豊かなものにしていってください。そして日本人コミュニティの助け合いのバトンをこれからも繋いでいってください。よろしくお願いします。