TORJAイラストレーター置鮎志織が3年前のあの日と向き合う。
今年で東北沖大地震から3年が経ちます。私は当時、東京で震災に遭い、今まで味わったことのない体験をしましたが、やはり時が経つに連れて鮮明だった記憶も薄れていきます。インターネットや報道番組で、震災や津波のビデオを見る度に胸が締め付けられ悲しい思いになり、言葉では言い表せられないなんとも言えない感情になります。しかし今回3.11を振り返り、これからも忘れずにいたいと思い絵を描かせて頂きました。
地震を体験した時に感じたイメージです。
就業中に震災に遭い、立っていられない状態になりました。
大地がうねり地底から何かが上がってくるという感覚は
今までにないもので強烈な印象でした。
鉄筋のビルが地震でユラユラゆっくり動いてます。
高層になるほどその迫力は凄まじいものです。
下からの揺れと襲いかかるかもしれないビルを見上げ
動けなくなってしまう人の様子を描きました。
混線する電話。
携帯電話や固定電話はしばらく繋がらなくなり
家族や友人を何時間も心配しました。
すぐにつながる時代に生きているせいか
安否をすぐ確認できない状態に苛立ちました。
支援物資や義援金で震災に遭った人々を
助けてくれた世界の国々を描きました。
辛く、寂しい思いをした人たちにとっても温かい
プレゼントだったと思います。
from Shihori
東北大地震を東京で体験した私にとってはそれを絵にするという事はあの大災害と向き合うチャンス、そして生まれ育った日本とも向き合う事に繋がるのではないかと思いました。しかし時間が過ぎていくにつれ、あんなに恐ろしいと感じていた記憶も霞んでいき人々の心からも離れていってしまうという悲しい事実があります。正直な気持ちとしては地震の恐怖という抽象的な感情を一枚の絵、それも動かない平面で表現するなんてとても惨めな気持ちになるし何の為になるのかと思っていました。しかしこうして体験者が出来るだけ正直に当時の事を残していく事が大事だと思うのです。地震があった衝撃から災害時の不便さでいかに恵まれていたかを体験した方も少なくないはず。そんな中、世界中の方々が日本を支援してくれた事は消して忘れてはいけません。私も出来るだけ自分の気持ちに素直に描きました。この出来事を忘れない様に。
置鮎志織(おきあいしほり) shihoriokiai.com
東京生まれ。イラストレーター。横浜美術短期大学グラフィックデザイン学部卒業。卒業後はグループ展や武蔵野美術大学映像科の生徒とのコラボレーション等で活動する。長沢節のイラストに憧れ一般事務のOLとして働きながらもセツ・モードセミナー夜間部へ入学。人物デッサンや水彩を勉強した。夢の一つであった海外生活をする為に2012年にワーキングホリデービザで渡加。キングストンで語学勉強をした後トロントへ移る。TORJAでは岡本裕明氏のコラムを中心にイラストを描いている。趣味は音楽鑑賞。バレエや舞台を観に行く事も好き。