世界がアートで満たされていったなら第22章
第22章「WASHOKU みんなで残そう、無形文化遺産!」
「危機感への喚起!」。都内某所で開催されたレクチャーで外務省国際文化交流審議官の斎木尚子氏はそう語った。WASHOKUがユネスコの無形文化遺産に登録された。やった!と手放しで喜んでいいては、、、どうやらいけないらしい。
日本の文化外交戦略において、「和食からの日本文化の発信」が重要な位置づけをされている事に他ならないが、、、さて、無形文化遺産とは何なの?ユネスコって何なの?皆さんはご存知でしたでしょうか?
ユネスコとは、国際連合教育科学文化機関の事。第二次大戦後イギリスで発足し、現在の本拠地はフランスのパリ。戦後日本がはじめて加盟した国際機関である(1951年)。国連加盟国が134カ国であるのに対して、ユネスコには195カ国が加盟している。ユネスコは、条約などストラクチャーの正当性が評価され最も普遍的な国際機関であると言われている。加盟国による分担金で運営されている。日本の分担金は10%強で約30億円。これは2011年までトップだった米国が、パレスチナの加入により分担金をストップさせたために、加盟国全ての中で最大。現在の事務局長はブルガリアのイリーナ・ボコバ氏で、99年〜09年は日本の松浦晃一郎氏が務めた。
無形文化遺産とは、2003年に採択された無形文化遺産保護条約によるもので、世界で282件、日本からは22件登録されている。その定義は、「慣習、描写、表現、知識及び技術並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間であって、社会、集団及び場合によっては個人が自己の文化遺産の一部として認めるもの」である。年間50件まで採択されるが、国(文化審議会)としては一年に一件しか申請できない。
選考基準は、①たぐいない価値を有する無形文化遺産が集約されていること、②歴史、芸術、民族学、社会学、人類学、言語学又は文学の観点から、たぐいない価値を有する民衆の伝統的な文化の表現形式であること。考慮基準は、①人類の創造的才能の傑作としての卓越した価値、②共同体の伝統的・歴史的ツール、③民族・共同体を体現する役割、④技巧の卓越性、⑤生活文化の伝統の独特の証明としての価値、⑥消滅の危険性、があげられている。斎木氏によると、世代から世代へと継承して行くこと、多様性を保つ事が重要であり、特に「和食」に関しては、「消滅の危険性」がある故に努力して守らなくてはならないと言っている(なので、冒頭のような表現)。 今回の登録は、「おめでとう」というよりは、「なんとかしなきゃ」というものなのだ。日本には、文化財保護法(2009年より本格化運用、3カテゴリー:重要無形、選定保存技術、民族無形)があるが、和食のユネスコ登録への継承の動きは、NPO日本料理アカデミーより立ち上がったという。作り手から始まった残そうという運動なのだ。
斉木さんによると、文化とは人と人が繋がって感動を呼び起こすもの全ての総称。スポーツも文化、もったいない精神も文化だという。だとすると文化は国によって分け隔てされるものではないと感じられる。「和食」もここトロントでおおいに社会に浸透し「WASHOKU」として開花する事を願ってやまない。昨年は、1036万人の外国人が日本を訪れた。日本からカナダに来ている僕たちにもその責任は、、、そうだ、鍋パーティーしよう(笑)!
日本からのユネスコ無形文化遺産:
1)能楽、2)人形浄瑠璃文楽、3)歌舞伎、4)雅楽、5)小千谷縮・越後上布、6)石州半紙、7)日立風流物、8)京都祇園祭の山鉾行事、9)甑島のトシドン、10)奥能登のあえのこと、11)早池峰神楽、12)秋保の田植踊、13)チャッキラコ、14)大日堂舞楽、15)題目立、16)アイヌ古式舞踊、17)組踊、18)結城紬、19)壬生の花田植、20)佐陀神能、21)那智の田楽、22)和食;日本人の伝統的な食文化の22件。
Today’s his Work
2006, installation view at Nuit Blanche 2006
武谷大介 Daisuke Takeya
トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現している。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、くうちゅう美術館、石巻線アートリンク、OuUnPo ゴジラと不死鳥、六本木アートナイト2013、福島現代美術ビエンナーレ2012、 MOCCA、 国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、プーチコーブファンデーション、ニュイブロンシュ(2006,2007)、六本木ヒルズクラブ、森美術館、京都芸術センター、ワグナー大学ギャラリー、SVAギャラリー、ソウルオークション、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、北九州市立美術館アネックス、セゾンアートプログラム/セゾン現代美術館、テート東京レジデンシーなどがある。
その他の活動に、大地プロジェクト共同ディレクター、遠足プロジェクトキュレーター、女川アートシーズン実行委員、明日:アーティストフォージャパン共同ディレクター、元アートバウンド大使 、元日系文化会館内現代美術館プログラミングディレクター、元にほんごアートコンテスト実行委員長、元JAVAリーダーなど、アートを媒体としたコミュニティーの活性化に取り組んでいる。 カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一茎書房)」がある。
www.daisuketakeya.com