【特別インタビュー】東京パラ金メダル・道下美里選手の前半伴走者「相模原市職員 青山由佳さん トロントで走る」
東京パラリンピック女子マラソン(視覚障害クラス)で金メダルを獲得した道下美里選手。その前半の伴走者として快挙を支えた相模原市職員・青山由佳さんが、カナダ・トロントを訪れた。市の派遣ではなく、自らの「走りたい」という想いを実現した今回の挑戦では、トロントマラソンに出場するだけでなく、現地のブラインドスポーツ団体やトロント市関係者との交流を通じて、スポーツによる国際交流の可能性も深く感じ取ったという。
スポーツがつなぐまちと人──相模原とトロント、交流の未来を走って描く

ー今回の訪問は市の公式派遣ではなく、あくまでご自身の「トロントで走りたい」という想いから実現されたと伺いました。この思いの背景には、どのような気持ちがあったのでしょうか?
リオ・東京・パリと3大会でパラリンピックに携わらせていただきましたが、それができたのは職場(相模原市役所)のサポートがあったからだと強く感じています。長期間にわたる遠征や合宿があり、職場を留守にすることも多いのですが、いつも温かく送り出してくださったり、私の体調のことを気にかけてくださったりしていただきました。そこで、市にとって何かプラスになるようなことができないかなと考えたときに、私のトレードマークの「走る」を活かそうと思い、ちょうどロスパラリンピックへ向けて、東回りの時差を体感したかったので、トロントマラソンの出場を決めました。
ートロントマラソンの雰囲気や沿道の人々、街の空気を実際に走って感じた印象等を教えてください。
早朝のレースでしたが、沿道の応援も多く、街中・繁華街・自然の中・湖畔をバラエティ豊かなコースであっという間の42キロで、来年も出たくなりました。街もコンパクトで暮らしやすそうだと思いました。
ー市職員としての立場と、ランナー・伴走者としての視点の両方を持ちながら、トロント市やブラインドスポーツ団体の関係者との交流をどのように受け止めましたか?印象に残った話題などもあれば教えてください。
ブラインドスポーツ団体の方とのディスカッションで、パラスポーツの周知・普及に課題を感じていることを伝えたら、それは私たちも感じていますと回答を頂きました。日本でも、学校の授業でパラスポーツを体験したり、ショッピングモールで体験会を開催していますが、カナダでもそのようなことをやっているそうで、国は違っても課題は同じなんだなと感じました。
ー市職員として、今回のトロント訪問を通じて〝スポーツによる国際交流〟の可能性について感じることや、両市がスポーツやインクルーシブな社会づくりの分野で、どのような連携ができると感じましたか?
トロントは移民の方も多くいらっしゃると伺いました。様々な考え方や特性を持った方と接することは、その人の人生を豊かなものにするので、スポーツを通じて両市の交流ができればいいなと思います。また、「Variety Village」という素晴らしい施設を訪問させていただきました。障害の有無や年齢に関わらず、誰もが自由に使える施設なので、まさにインクルーシブな社会の縮図でした。このような施設が相模原市にもあるといいなと思いました。
東京パラで心を一つに──青山由佳さんが語る、伴走と勝利の舞台裏

コースもバラエティーに溢れ、あっという間の42キロでした。
ー東京パラリンピックで金メダルを獲得された道下美里選手の伴走を務められたとき、どのような思いでレースに臨まれましたか?
これだけやってきたのだから、大丈夫。私たちは強い!という意識でスタートラインに立ちました。コロナで1年延期になったこともあり、ついにこの日がやってきた!というわくわく感でいっぱいでした。
ーあの大舞台やトレーニングなどで、伴走者として最も印象に残っている瞬間や言葉があれば教えてください。
レース後の道下選手の「最高の仲間たち・世界一の伴走者たちがいてくれたおかげ」というコメントがとても印象に残っています。私こそ、世界一の選手に巡り合えてとても幸せです。
ー前半の伴走者として、後半へバトンをつなぐ際に意識していたことや、チームとしての連携の難しさ・喜びについて教えてください。

道下選手の勝ちパターンや、気象状況を考慮して、前半は体力温存して後半勝負という作戦でした。前半は先行されたとしても、見える範囲で泳がせる作戦です。ロシアの選手に抜かれたとき、フォームが少し疲れているように見えたので、先に行かせても大丈夫と判断し、自分たちのペースを貫きました。

「チーム道下」は、それぞれ自分にできることを精一杯やって、チームに貢献しています。マラソンは個人競技ですが、そういったところはチーム戦でもあると思うので、やっぱり結果を出すことができたときは喜びが2倍3倍になります。
海外レースは自分を磨く場──伴走者としての力を高めるために

ー視覚障害のある選手と一緒に走ることでご自身が得た気づきや価値観の変化はありますか?
日常生活で白杖を使っている方に気づきやすくなり、「何かできることはありますか?」と声をかけられるようになりました。また道路を歩いているときに、路面状況に敏感になり、段差や陥没しているところがあると、視覚障害者の方には歩きにくいだろうな…と考えるようになりました。
ーランナーとして世界のマラソン大会に出場し続けている理由と海外レースに挑む中で、伴走者という立場にどうつながっていると感じますか?

時差や不慣れな環境下(初めての場所や海外の食事、聞きなれない言葉の中で過ごすこと等)でも、自分のパフォーマンスを発揮できる強さが必要だと感じており、単独で海外マラソンにチャレンジしています。伴走者の走力は選手の走りに直結していきます。それは、走力が高ければ伴走にゆとりが生まれ、選手をより多角的に見ることができるからです。そのためにも、絶対的な走力を上げていくことはもちろんですが、走力以外のところ(今回の海外遠征等)も高めていきたいと思っています。













