時代劇『多十郎殉愛記』のヒロインを務めた演技派女優 多部 未華子さん 特別インタビュー|トロントを訪れた著名人
時代劇『多十郎殉愛記』のヒロインを務め、樹木希林さん・黒木華さんと共に出演した『日日是好日』の二作品がトロント日本映画祭で上映!
今回の映画祭では、出演作『多十郎殉愛記』と『日日是好日』が上映された多部さん。6月8日に舞台挨拶に登壇し、上映後Q&Aセッションを行った多部さんに映画のお話や学生時代のエピソードなどを振り返ってもらいながら同世代の人たちへのメッセージを語ってもらった。
ー海外旅行が好きだと伺いました。カナダに来るのは何回目ですか?
カナダに来るのは、2回目です。だけど、今思い出したのですが、ある意味3回目です。以前にナイアガラの滝をアメリカ側から見に来て、カナダ側にもすこし寄っていたので、今まで2回と答えていましたが、実は3回目です!TORJAさんの独占情報になりましたね(笑)。
ー貴重な情報をありがとうございます!カナダの印象を教えてください。
のどか、道が広い、緑が多い、メープルシロップ…もちろん、ナイアガラの滝には感動しました!
ー中島監督はヒロインの「おとよ」を〝母性愛の強い女性〟と表現されていました。「おとよ」と素の多部さんご自身が重なるところなどはありますか?
正直に言って重なる部分はあまりありません。
監督が要求する〝愛する男のための母性愛〟に関しては撮影が終わるまでピンとはきていなかったです。撮影を重ねても、こういう人もいるのだろうなぁという感覚のままで本当におとよの気持ちがわかるというまでにはいたりませんでしたが、〝母性愛〟とはなんだろうと意識しながら演技をするように心がけました。
ー昨今の現代映画ではチャンバラのシーンなどではワイヤーアクションやコンピューターによる効果音などが積極的に多用されています。今回このような伝統映画に出演し、どのような感覚を得ましたか?
私自身、時代劇を見て育ったわけではなく、どちらかというと父や祖父母が見ていたという印象です。ですので、映画の仕上がりを実際にみて、音の入れ方や編集の仕方には新鮮な感覚を覚えました。こういった映画が、若い世代の人にとってどう思われるのかなと考えたとき、逆に彼らも私と同じように新鮮に感じられるのではないかなと思いました。
ー今回の映画が、日本人以外の人にとってどのような反応、反響が得られると思われますか?
日本の古典的な映画、昔の時代の映画が外国人にとってどうとらえられるかまったく想像がつきません。
ー多部さんが学生時代すでに女優として第一線で活躍していたなかで、6年間かけて大学を卒業されたエピソードは有名です。大学を辞めずに学業も続けられた理由はなんでしょうか?
大学を休学することになった時、実は退学届けも受け取っていて本当に退学する気持ちを持っていたこともありました。けれどもうすこし苦労してもいいかなと思う自分もいたので、復学を決めました。復学した時には、自分の意識や目的がより強くなったので、学校がつらいという思いはとくになく、絶対に卒業してやる!という気持ちでした。
また学業と仕事を同時にすることで、ある意味自分の中で上手な逃げ道をつくることができたと思います。学業と仕事を同時にすることは大変なことでしたが、仕事がつらいときは、学校での友達とのたわいもない会話もとても大切なひと時でした。
ー幼い時から芸能界で活躍されている多部さんですが、昨今では日本だけでなく世界で女性の活躍が叫ばれています。女性の視点から撮影現場などの社会的変化を感じることはありますか?
女性のスタッフさんが増えたと思います。昔は男性のスタッフさんの割合が多かったのですが、当時と比べると圧倒的に女性のスタッフさんの割合が増えた気がします。少しずつ社会が変わってきているなと感じています。
ー近年、日本には訪日観光客が非常に増えていますが、ここカナダからの旅行者も右肩上がりです。多部さんおすすめの日本のスポット、食べ物はありますか?
つい最近まで花見、桜が大きく話題になっていたと思いますが、私は、桜も好きですが、ぜひ日本の紅葉もおすすめしたいですね。やはり京都・嵐山の紅葉はカナダの人にも喜んでもらえるのではないでしょうか。食べ物は、あえて定番から外れて最近流行っている唐揚げはどうでしょうか?いま日本では唐揚げ専門店が増えてきて、いろいろな味が楽しめるんですよ。
ー今回の映画祭で多部さんの出演映画は2作品上映されます。多部さんの演技などを見て、観客の方が多部さんの他の作品もぜひ観てみたいと思った時に、ご自身がおすすめしたい作品はなんでしょうか?
う~ん、難しい…。でも初めて出演した映画が宮部みゆきさん原作の『理由』という映画なのですが、現場での業界用語もよくわかっていない状況で、しかも1~2日くらいしか撮影にも参加していません。そんな初々しい頃の私を感じることができる『理由』をぜひみてもらいたいですね。
ー先ほど大学時代のエピソードが出ましたが、ここトロントにも休学をしてワーキングホリデーや留学中の若者がたくさんいます。ぜひメッセージをお願いします。
海外に住む、海外で勉強するということを実践していることは素晴らしいことだと思いますし、それ以前に海外に出ようと考え、実際に行動していること自体がすごいな!と思います。
【多部未華子プロフィール】
1989年生まれ。2002年に女優デビューし、「仰げば尊し」(TBS)、「先に生まれただけの僕」(NTV)、『ピース オブ ケイク』(15年)、『あやしい彼女』(16年)、『続・深夜食堂』(16年)、『日日是好日』(18年)、『トラさん~僕が猫になったワケ~』(19年)などドラマ、映画だけでなく、多数の舞台、CMなどに出演。今後は、『アイネクライネナハトムジーク』の公開が控えている。
『多十郎殉愛記』 舞台挨拶・観客Q&Aルポ
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観客Q&Aでは、まず始めに映画祭のプログラマーであるジェームズ・ヘロンJCCC館長から、多部さん自身この『多十郎殉愛記』という映画にどんな魅力があるのか、また中島監督について質問があがった。
多部さんは、「私自身このような古典的な日本映画をみる機会はあまりありませんが、出来上がりをみたときに音の入り方、編集の仕方、CGを使わないなどとても新鮮に感じました。若い世代の人にとっては見たことのない新鮮な映画になると思います。中島監督は20年ぶりに現場にたったと思えないぐらい、現場でいきいきと映画を撮っていました。京都の太秦のスタッフにとても愛されていて、私がこれまで色々な作品に携わってきたなかで、今まで感じたことがないぐらい、現場のスタッフ、キャストの皆さんが監督のために頑張ろうという監督愛をもの凄く感じました。撮影には実際10日間ほどしか参加していないのですが、監督は絶大な信頼をもって私たちに接してくれていることが毎日毎日伝わってきたので、なんとか期待以上に応えたいなと思っていました」と受け答えた。
観客からは、映画に関しての質問や多部さん自身についての質問があがり、ときおり考え込みながら、笑顔で丁寧に回答した。
ー多部さんの今までの長いキャリアの経験を通してどのジャンルで演じるのが好きですか?
映画、ドラマ、舞台とどのジャンルも魅力的だなと思うし、どのジャンルでもいつも苦労しながら、毎回新しい発見ができます。今年の秋に公開される作品では、普通のOLの役を演じています。
ー今回の映画で、髙良さんと共演してみて髙良さんの印象、思い出はありますか?
髙良さんとは3度目の共演でしたが、今までここまで深い関係で演技をしたことはありませんでした。髙良さんの印象としては、普段から多十郎みたいな性格を(普段からみんなの輪に入らない、一匹狼、ひとりでたたずんでいるタイプ)しているのかなと思っていましたが、実際に関わってみると意外となんでもお話ししてくださり、本当にたわいもない会話をしながら楽しく現場に参加していたという印象です。この作品に限らず、どの作品においても自分のキャラクターに対して真剣に向き合う方という印象を受け、楽しみながら共演できました。
ー以前出演されていた『君に届け』で1番好きなキャラクターはなんですか?またこれまでたくさんのキャラクターを演じてきて1番好きなキャラクターはなんですか?
「さわこ」が1番好きです。でも難しい質問ですね…。ある意味どのキャラクターもそのときは好きだけれど、撮影が終わると自然と忘れていきます。なので、どのキャラクターに対しても平等に思い入れがあります。今はドラマの撮影をしているので、そのキャラクターに思い入れがありますが、たぶん終わったらまただんだんと忘れていくと思います。
ーどのようなタイプのキャラクターを演じてみたいですか?
特にこの職業、この性格というこだわりはありません。色んな役を演じるためにプライベートで良くも悪くも様々な経験をしていないと活かすことができないかなと思います。なので、日常生活でたくさんのことを経験しそれを次に活かし演じていきたいです。どんな役を求められても、100%気持ちを理解することは難しいけれど、そのキャラクターの感情に少しでも寄り添えるようになりたいです。