カナダ公演間近!「AGA-SHIO」スペシャルインタビュー

ピアニスト・塩谷哲氏と津軽三味線プレーヤー・上妻宏光氏が奏でるハーモニー

 日本音楽界で新しい試みとして注目を集めている「AGA-SHIO」。洋楽器のピアノと和楽器である津軽三味線とを組み合わせたコンテンポラリー・ミュージックは、いま日本のみならずヨーロッパをはじめ世界から高い評判を得ている。豊富な経験と素晴らしい実績をともに持ち幅広いジャンルで活躍している塩谷氏と上妻氏にカナダ初公演に向けてお話を聞いた。

8月23日 日系文化会館小林ホール(トロント)
8月24日 「ジャパンフェスティバル・カナダ2019」(ミシサガ)

ー和楽器津軽三味線と洋楽器ピアノのコラボという新しい価値を音楽業界に生み出し、お互いが世界で活躍の場を世界に広げています。自分達の音楽を通して世界に伝えたいことは何でしょうか。

塩谷: 三味線とピアノ、双方とも、吹奏楽器や擦弦楽器または歌のように音を延ばすことのできない、減衰音を扱う楽器です。三味線に至っては最初の破裂音(アタック音)が大きく、その後の実音は極めて小さい。しかし、その儚さの中に込められた微細なニュアンスこそが三味線の「和のワビサビ」ともいうべき魅力だと思うのです。かつてフランスでは「ジャポニズム」が起こりましたが、私は西洋音楽に親しんだ環境から、上妻さんの三味線の中におそらく彼らが感じたのと同じ様な異文化へのロマンを感じました。自国の音楽を「異文化」と言うのはおかしな話ですが、恥ずかしながらそれまで私は真剣に邦楽や雅楽に向き合ったことが無かったのです。

 私達が世界に伝えたいことは、日本の文化の素晴らしさは無論のこと、二人が本気でぶつかって生まれたものを、国境を越えて普遍的な価値として捉えた、音楽そのものです。最高の集中力によってのみ成立する三味線とピアノのコラボは、互いのこれまで信じてきた価値観をすべて受け入れリスペクトすることから始まっているのです。

上妻: 日本の昔からある音楽の良さと、和楽器と洋楽器が音楽という世界で一つになれることを聞いて体感してもらえたらと思います。

ーファースト・アルバムを出されたインタビューではユニット結成について、お互いに「音楽を俯瞰して見ている」や「民謡のバックグラウンドがありながらも、外側を見れている」と考え方に惹かれあった経緯を語っていましたが、改めて、お互いの音楽や考え方に惹かれるポイントや尊敬する点、敵わないと思う点は何でしょうか?

塩谷: 私が尊敬する音楽家は例外なく、自身が関わる音楽ジャンルだけでなくもっと広い視野で音楽をリスペクトする人達です。音楽に限らずとも、どんな文化・芸術でもきっとその道を極めた人がいて、その存在自体が人類の宝であり、私達はその芸術の深さに驚き、その真髄を学ぼうと努力する、その謙虚さが成長をもたらすのだと信じています。音楽で言えば他人の評判ではなく、自分の耳で「良い音楽」を評価し、自身の音楽へ取り込むことのできる人が真のアーティストと言えるのではないでしょうか。上妻さんはまさにその一人です。日本文化を正しく継承する力を持っていること、この一点においても全く敵いません。その上、新しいものを生み出しているのですから。

上妻: 塩谷さんが僕の音に寄り添ってくれるので、自由に奏でることができます。特にボーカルの曲は本当に気持ちよく歌えて毎回新鮮な気持ちで挑めます。

ー上妻氏は小学校での「生一丁」出張、塩谷氏は国立音楽大学講師やNHK子供向け番組への楽曲提供など、お二人とも子供や学生などと関わり次世代に音楽を伝えていく取り組みをしていますが、世界を見てこられたお二人から見て、日本の音楽教育についてどう思うか、そして今後も自身がどう関わっていきたいでしょうか?

塩谷: 先生の立場から「音楽を教える」ということについて常に考えています。そもそも音楽を学びたい、と思う者に対してであれば、作編曲の技術や演奏法の一端を教えることはできます。しかし、それは専門的な領域における知識であって、音楽を「感じる」ことは例えば「こう感じなさい」とは言えないし、もちろん正解などありません。従って普段私は「自分だったらこう弾くかな」とか「こういう解釈の方法もあるよね」というように自らの音楽性を提示し、そこから何かを掴んでもらうようにしています。

 またNHKの子供向け音楽番組への作編曲、そして演奏において、妥協は一切していません。音楽的には決して「子供向け」ではなく、今自分ができるベストの作品を提供すべく、全身全霊で作っています。それが結局、純粋な子供達の感性に一番響くと思うからです。

 日本の音楽教育に関しては、知識重視から感覚的に楽しい授業へと変わってきている印象があり、その方向性は間違ってはいないと思います。が、リズムを感じ、また自分の身体からリズムを生み出す、ということに関してとても遅れていると感じています。世界における多様な音楽をより多く紹介することで(その多くが歌や踊りと共に発展していったことを踏まえ)、人類固有の、普遍的な文化としての音楽を感じてもらうことができるのではないか。特にダンスからリズムを感じることは重要で、実はクラシック音楽にも当てはまることなのです。

上妻: 日本の教育現場ではまだまだ和楽器に触れる機会が少ないのが現状です。
 大人の人でさえ和楽器の間違ったイメージを持っている人達が多いので、先ずは、できるだけ子供達に生の演奏を見聴きしてもらいたいと思っています。

ー今後の活動について、いま取り組んでいることや、今後挑戦したいことなどの目標や予定を教えてください。

塩谷: N響はじめここ数年でオーケストラとの共演の機会が増えました。更に自作のオーケストラ作品を増やしていきたいです。また、映画音楽やドラマ音楽など、ストーリーのあるものに対しての音楽制作にも更に関わることができたら嬉しいです。同時にアーティストとしての作品作り、コンサートも、という感じで…欲張りですね。

上妻: これからも、自身の軸となっている古典を大切にしながら、現代の風を取り入れて三味線の可能性を広げていきたいです。

ー多様性ある国と言われ、さまざまな音楽が溢れるカナダですが、「AGA-SHIO」の音楽を初めて聞く人に向けて自分達の音楽で特に着目してほしい点や、特に聞いてほしい作品などを教えてください。

塩谷: やはり津軽三味線という楽器から生み出される日本固有の空気感を味わっていただきたいです。そして私のピアノから生み出される全く違う世界観が三味線とぶつかった時、大袈裟に言えば二つの文化の「衝突」と同時にそれが「調和」してゆく感覚を体感していただきたいのです。それはそのまま私達が感じた感覚そのものであり、それを「面白い」と思ってもらえたら嬉しいです。「じょんがら」「ラプソディー」などは「AGA-SHIO」でなければ生まれなかった世界観ではないかと思っています。

上妻: 三味線とピアノの組み合わせは今までなかった世界です。まずその音を感じてください。演奏曲は日本の民謡からオリジナル曲、カバーと多岐に渡るので皆さんに受け入れてもらえることを望みます。

塩谷氏への質問

ー平井堅さんや今井美樹さん、絢香さんなどの歌手とコラボしたり、愛地球博でビッグバンドを率いたりと、さまざまな人と、また型にはまらない活動をされていますが、自身の音楽に対してここだけは変わらない・変えていないという取り組み方はありますか?

塩谷: 自分自身ではどの共演でも、どんな編成やコンセプトでも、自分の音楽を変えているつもりは全く無いです。そのアーティストと自分の共通の言語で喋り、冗談を言い合ったりしている感覚に近いです。もしかして、有難いことに共演者の素晴らしいところを見抜く能力だけはあるのかもしれませんね。

ーご自分のピアノが世界的にも評価されている点はなんだと思いますか?

塩谷: だとしたらとても嬉しいことですが、自分では全くわかりません。ただ音楽に対してウソだけはつかないように演奏しています。つまり…私の場合ほとんどが即興演奏になるのですが、心にも無い、聞こえてもない音は弾かない、ということです。

上妻氏への質問

ー日本伝統の和楽器津軽三味線の弾き手として、これまでさまざまな海外アーティストとコラボされてきましたが、カナダの伝統楽器とコラボしたい、またコラボしたいカナディアンアーティストなどはいますか?

上妻: 今まで様々なアーティストの方と共演してきたことは、とても良い経験や刺激をいただきました。これからも様々な方と共演してみたいので、オススメのカナディアンアーティスト方がいたら是非教えてください!

ー2016年7月にはカザフスタン「アスタナ万博」で自身プロデュースの公演など日本文化を海外に広める活動をされておりましたが、自身の演奏する三味線あるいは日本の音楽や文化のどういう部分が世界に受け入れられていると思いますか?

上妻: 自分にしか出来ない三味線音楽があり、そこには僕自身も大切にしている日本らしさが感じられつつ、海外の音楽要素もあるので、日本だけでなく世界で音楽として楽しんでもらえる部分があるからではないかと思います。

塩谷 哲 プロフィール

 東京藝術大学作曲科在学中より10年に渡りオルケスタ・デ・ラ・ルスのピアニストを務め、並行してソロアーティストとして現在まで12枚のオリジナルアルバムを発表。自身のグループの他、AGA-SHIOとしての活動や、リチャード・ストルツマンなど多数の演奏者とのコラボの経験がある。近年は絢香のサウンドプロデュースへの参加やNHK Eテレ『コレナンデ商会』(放送中)など数々のテレビ番組の音楽を担当している。

上妻 宏光 プロフィール

 6歳より津軽三味線を始め、数々の大会で優勝。2000年に本格的にソロライブ活動を開始し、初アルバム『AGATSUMA』のあとアメリカ東海岸ツアーも開催。これまでEU、アフリカ等、世界30ヵ国以上で公演。映画やドラマの様々なシーンへの楽曲提供、2013年の安倍内閣総理大臣主催の「TOKYO2020公式夕食会」での演奏、歌舞伎の本公演(主演:市川海老蔵)での演奏と実績を積む。2017年「いばらき大使」に任命され、日本全国の小学校において日本の伝統音楽の魅力を伝える授業を行うなど、ジャンルや国境を問わずマルチに活躍している。

コンサート詳細情報

公演①
日時: 8月23日(金)19時半開演
場所: JCCC小林ホール
チケット価格: 一般…………$25
       JCCC会員…$22
詳細ページ: jftor.org/aga-shio

公演②
日時: 8月24日(土)時間未定
場所: ミシサガ・セレブレーション・スクエア
 (Japan Festival Canada)
入場無料!!!
詳細ページ: japanfestivalcanada.com

AGA-SHIO公式HP aga-shio.com