2022年トロント注目トピック|特集「エンデミック・カナダ2022」



私たちが暮らすトロントそしてオンタリオ州は2022年も成長を遂げ、ますます発展していく。衣食住はもちろん、ビジネスからカルチャーまで私たちのライフスタイルに関わる注目トピックを紹介。
トロントを圧巻したImmersive Exhibitの新作
「メキシコ人画家フリーダ・カーロ」展 
3月31日から5月まで

デジタルアートを駆使して壁一面に映し出される有名画家のアート。まるで絵画の中の世界に入り込んだかのような体感を楽しめるImmersive Exhibit。2020年からは世界的芸術家アイコン、フィンセント・ファン・ゴッホのImmersive Exhibitがトロントを圧巻した。コロナ禍でも大盛況を収めている中で2022年に訪れる新作が先日発表された。
その画家とは、カラフルな色彩とつながった眉毛のセルフポートレートで有名なメキシコ人画家フリーダ・カーロだ。フリーダ・カーロは、男性優位の社会で、アートを通して自己表現し、女性だからと眉毛や口ひげを処理することを拒否し独自のパーソナルブランドを構築した。それは当時の女性では珍しく、今なおフェミニストのシンボルとして多くの女性から共感を得ている。

フリーダの人生はまさに波乱に満ちていた。1907年にメキシコの首都メキシコシティで生まれた彼女は、幼い頃から不運の病気や事故にあい一人で時間を過ごすことが多かったという。その間、彼女は自分が映る鏡と向き合いながら自分自身を描き続けた。これが後の彼女の代表作となるセルフポートレートに影響を及ぼした。彼女は、「私はほとんどの時間を一人で過ごし、自分のことは自分が一番知っているから、自分を描くのです」と語っている。
その後、フリーダは21歳年上のメキシコの巨匠画家ディエゴ・リベラと結婚するも、浮気性のディエゴに悩まされる。挙句の果てにはフリーダの妹とも関係を持ったディエゴ。フリーダはその直後に自身がメッタ刺しにされた絵画「ちょっとした刺し傷」を発表している。
それだけではフリーダの苦痛は終わらない。若い頃に負った大事故の後遺症による3度の流産や背中や右足の痛みに悩まされ続け鎮痛剤の欠かせない生活、憎みつつも愛していたディエゴとの離婚からの再婚、自国のより良い将来を目指し政治的活動に貢献など、その都度キャンバスに描きつづけた彼女の苦痛と恍惚の作品は200点にもおよぶ。
そんな彼女の叫びを現代の技術と折り合わせて作られる「Frida: Immersive Dream」は3月31日から5月までトロントで開催される予定だ。
テスラがマーカム市にバッテリー製造装置の生産工場を開設

世界をリードする電気自動車メーカー、テスラ社がバッテリー製造装置の生産工場をオンタリオ州マーカム市に開設するという。ハイウェイ7とワーデンAveの西側の工業地帯に位置する新しい施設は、11万平方フィートの広さを誇る。
これまでに分かっていることは、この施設では、高容量車載電池 「4680」バッテリーセルを製造する機器の設計と形成をサポートするチームが置かれるという。ここで製造される機器は、最終的にギガテキサス、ギガベルリン、および新しいセルが製造される世界中の施設に送られる。マーカム市のフランク・スカーピティ市長はテスラ社をマーカム市の「未来の自動車クラスター」への素晴らしい参入だとし、同社を歓迎した。
また、今回の工場開設に伴い、テスラカナダは人材募集ビデオをリンクトインに投稿している。ビデオ内では、バッテリー開発、工場設計、充電インフラストラクチャー、バッテリーCNCマシンプログラミングなどに取り組んでいるマーカム工場の従業員への短いインタビュー形式になっている。重要なバッテリーの部品を製造しているということで自分たちの仕事が会社に大きな影響を与えていること、機械のプログラミングを担当し最新のテクノロジーに毎日触れられることなど、リーディングカンパニーで働く意義深さが語られている。
エトビコ・シャーウェイガーデンズに新しいコミュニティー計画

トロントの地価の高騰により、複合商業施設を取り巻く住宅市場への参入がますます注目されている。ミシサガのスクエアワン、トロントのスカボロータウンセンターとヨークデールモールなどを取り巻く新しいコミュニティー計画はすでに進行中であり、シャーウェイガーデンズがそれらに続くことになる。
エトビコのクイーンズウェイとウェストモールにある広大な敷地は、キャデラックフェアビューと不動産開発業者のダイアモンドコープが連携して住宅地として再開発するというマスタープランが発表された。ハリリポンタリーニ建築によって設計された、それぞれ45階、40階、35階、30階の高さの4つの新しいタワーは、エトビコの新しい目玉となるだろう。

タワーには、932戸のコンドミニアムユニットと、646戸の専用賃貸物件が含まれるという。また、タワーに面して3,061平方メートルの公園を含む公共スペースも提案されており、人々が行き交う賑やかなコミュニティーになると予想される。さらに将来的な計画として、現在駐車場として使用されている広大なエリアにさらに多くの住宅地を備え、最終的にはショッピングモールを取り囲む形になるという。
ハリウッド・ノースの中心トロント、最先端のメディアハブを建設し、さらなる成長を見込む
アメリカに次ぐ大きな映画の制作拠点として「ハリウッド・ノース」とも呼ばれるカナダの大都市トロントとバンクーバー。トロントの映画産業はかつてないほど急速に成長しており、2021年に同市で製作された1,500本以上の映画、テレビ、コマーシャル、ミュージックビデオのプロジェクトにおいて、2022年の生産額が2019年の記録である22億ドルを超える見込みだという。トロント市は、この成長をいくつかの新しく建設されたスタジオ、労働力の発展、環境にやさしい制作設備のおかげだとした。
さらに、ジョン・トーリー・トロント市長は、2億5000万ドルの最先端のメディアハブがトロントのポートランズに建設されると発表した。スタジオには、一連の制作オフィスとともに50万平方フィートの撮影スペースが含まれる。トロント市は、トロントが所有する撮影スペースに対する世界的な需要が非常に大きいと述べている。
背景には2021年にネットフリックスのカナダ本社がトロントにできたこと、アマゾンスタジオがトロントで成長し続けることでますます需要が伸びると予想されている。トロント発の大ヒットドラマ『Schitt’s Creek』のエグゼクティブプロデューサーで、Toronto Film Schoolの校長であるアンドリュー・バーンズリー氏はトロントにおける映画業界の成長はオンタリオ州の経済に貢献するだろうと述べている。
オンタリオ州総選挙
2022年6月2日または、それ以前に第43回オンタリオ州総選挙が行われる。2018年に行われた前回の総選挙では15年ぶりに自由党から、ダグ・フォード率いる進歩保守党への政権交代が行われ、ダグ・フォード州首相が誕生した。政策の一つ、コストを抑制する経済計画とともに当選した当政権だがコロナウイルスによるパンデミックが計画の障害となっているとみられ、パンデミック後のフォード政府がどういった動きを見せるか注目されている。
また、近年、突飛な高騰をみせているオンタリオ州のハウジングマーケットも今回の総選挙にどう影響するか関心を集めている。州の住宅販売価格がGTAを超えたところでも2年連続で2桁の上昇をみせている中、オンタリオ州での住宅購入をより手頃な価格にするというマニフェストが挙げられるかどうかが今回の総選挙のキーになっているのではないだろうか。前回の選挙では圧倒的な差を見せつけ勝利した進歩保守党であったがここにきて自由党が勢いを見せており、この2党の差は僅差となっている。
世論調査ではダグ・フォード州首相(40%)、自由党スティーブン・デル・デュカ党首(23%)と、ダグ・フォード首相への好意的な印象が有利していると見られるものの、自由党へ投票する予定だという31%の回答者と比較して、進歩保守党に投票する予定である人はわずか34%となっている。
カナダで最長の桟橋がミシサガに設置される
トロントの隣ミシサガ市に新しい人気スポットが登場する。カナダでは最長となる600メートルの桟橋がオンタリオ湖に設置されるというのだ。それは、ウォーターフロントに開発中の「レイクビュービレッジ」の一環として作られるという。完成図にはオンタリオ湖に伸びる桟橋に屋内で休憩できるスポットや、外にはガーデンパラソルや椅子も設置されており、湖の上で優雅な時間が楽しめそうだ。また桟橋から眺める街の夜景スポットにもなりそうだ。
また、レイクビュービレッジプロジェクト全体で70万平方メートルに及ぶかつての工業用地を住宅や小売店、文化施設、公園などを備えた多目的コミュニティーに変身させるという。石炭発電所として使われていたウォーターフロントに新たなコミュニティーを作り、土地と湖のつながりを深め、将来の世代も楽しめる持続可能なウォーターフロント体験をオンタリオにもたらすことが目的だとプロジェクト会社は述べている。完成すれば800もの新しい住宅ができ、大きな雇用も生まれると予想されている。
大人気ゲーム 「リーグ・オブ・レジェンド」世界大会の準決勝戦スコシアバンク・アリーナで開催
アメリカではプロスポーツ選手用のビザが認定されるなど、プロゲーマーが競い合うEスポーツとして注目されているゲーム、「リーグ・オブ・レジェンド(通称:LoL)」。世界各地のリーグからトップチームが集い、世界王者の称号と優勝トロフィー「サモナーズカップ」をかけて戦う年に一度の国際大会、通称「Worlds」の2022年準決勝戦がトロントにあるスコシアバンク・アリーナで開催される。詳しい日程はまだ発表されていないものの、秋になる可能性が高いそうだ。
トーナメントはプレイインがメキシコシティ、グループステージと準々決勝戦がニューヨーク、準決勝戦がトロント、決勝戦がサンフランシスコで行われるそうだ。2016年にリーグ・オブ・レジェンドの北米リーグ大会がトロントエリアで開催されたものの、世界大会がトロントで開催されることは今回で初となる。
まだまだ多くの人に理解されていないEスポーツ。カナダのプロゲーマーIssac “Azael” Cummings-Bentley氏は「体を動かすスポーツで愛されているポイントはEスポーツにも当てはまる。子供から大人まで愛されるゲームの異次元の戦いをその目で見れるのは、刺激的で野心的な経験を体験できることになる」と述べている。
プライド・パレードがトロントに帰ってくる!
冬が長いカナダでは夏のイベントを心待ちにしているトロントニアンが多い。しかし、コロナウィルスの影響でこの2年間、ほぼ全てのイベントが延期、またはキャンセルとなり多くの人がため息をついてきた。しかし、2022年は嬉しい報告が入ってくる年となりそうだ。
その先立てとして、トロントの人気イベントの一つ「プライドパレード」が本格的に開催される予定だという。昨年は異例のオンラインでの開催となったが、主催団体の「Pride Toronto」はインスタグラムの投稿で6月1日からパレード・ウィークエンドの6月24・25・26日までフルスイングでプライドマンスが開催されると発表した。
スケジュールはコロナ前と同様、恒例の「プライドパレード」、トランスジェンダーの人権とプライドを訴える「トランスマーチ」、幅広く多様な女性セクシャル・マイノリティーの可視化を目指す「ダイクマーチ」、バイの人々の安全で社交的な場所作りを目指す「バイ+プライドプログラミング」、地元の黒人パフォーマーによって行われる「ブロコラマ」、アートやユニセックス商品などが並ぶ「ストリートフェア」、ドラッグクイーンのダンスやDJの音楽で盛り上がる「カバナ・プールパーティー」と、盛りだくさんだ。
その他にも、300人以上の2SLGBTQ+のアーティストとフィーチャリングしたステージが行われる予定だという。また、プライド月間を祝ってレインボーフラグが6月1日からシティホールに掲げられる。
トロント・ダウンタウン主要な交差点の混乱2029年まで続く見込み
2021年夏、グレーター・トロント・エリア(GTA)の道路及び、交通機関を管理しているメトロリンクスは、新しい路線「オンタリオライン(The Ontario Line)」を開業すると発表した。このオンタリオラインは、エクシビションプレイスから、オンタリオ・サイエンスセンター間の15.6kmを15駅、30分で移動を可能にするという。完成すればTTCの他線の混雑をスムーズにし、郊外から都心までの通勤・通学が簡単になり、多くの人に利便性をもたらすと期待されている。
一方で、便利なまちづくりには難事がつきもの。工事に伴う道路閉鎖は、主要な道路へ混乱を招く懸念がある。タイムラインは驚くことに2022年10月から2029年までの7年間で、リッチモンドST沿いの道路利用者はパーラメントSTからバサーストSTまで平均所要時間が午後のピーク時には22分から51分ほどの遅延が予想される。その他の場所でも、アデレードST(プラス24分)、ウェリントンST(プラス23分)、ダンダスST(プラス14分)、フロントST(プラス5分)の遅延が予想される。
また、道路沿いのローカルビジネスへの影響も心配されており、パンデミックで、トロントは今まさに回復する必要があるという時に、今後7年から10年の道路閉鎖では回復が見込まれず、建設期間を短縮すべきだという声も上がっている。

















