「Where Jazz Lives」The REXのジャズな夜。|トロント音楽散歩 with Cecili
トロントのクイーンストリート沿い、一番賑やかな通りを歩いていると、老舗の雰囲気満点の建物に、“Where Jazz Lives”と古びたフォントで色褪せた文字が見える。心地よいジャズの音色が流れてくるのは、トロントのジャズ・シーンを語る上で外せない老舗ジャズ・バー、“The REX”だ。
週末の夜、友人と「なんかジャズでも聴き行く?」と軽いノリで訪れたのがこの“The REX”だった。入口でドアマンに入場料を払い、中に入ると、温かみのある木目の内装と、すでにビールを片手に楽しそうにしている観客たちの姿が目に入る。カジュアルな雰囲気が心地よく、まるで長年通っている行きつけの店に戻ってきたかのような安心感。こういうジャズバーはクラブとは違い、皆が演奏に耳を傾け、音楽そのものを楽しんでる。その空気感がたまらなく好き。特にこのバーは客層がハードコアで、さっと店内を見渡せば生粋のジャズマニアたちが集まっているのがすぐにわかる。
ステージとの距離が近くて音楽がダイレクトに伝わってくる。ジャズのリズムに身を委ねながら、何気なくステージを眺めていると、ひときわ目を引く楽器があった。ギターのようだけど、横向きに置いて弾いている。琴みたいに見える楽器なのだけど、痺れるような、心に響く音を奏でてる。
演奏の合間に、その楽器を弾いていたミュージシャンが私たちのすぐ隣の席でビールを飲み始めたので、せっかくだからと、「あの楽器、なんていうんですか?」と聞いてみた。すると、彼はにこっと笑いながら「ラップ・スティール・ギターって言うんだよ」と教えてくれた。スライドバーを使って音を出す仕組みや、ブルースやカントリーでもよく使われることなどを、ビール片手に気さくに話してくれた。ギターなのか!
物理的な距離だけじゃなく、心理的にも近い。そんなふうに、演者と観客がごく自然に交わるのも“The REX”、というかトロントの音楽シーンの魅力だ。演奏が終わると、バンドメンバーが客席に混じって普通に飲んでいる。ステージと客席という垣根がなく、音楽を愛する人たちがその場に集まり、ただ楽しい時間を共有する。そんな空気がある。
結局、その夜は何杯もビールを重ねながら、ジャズのリズムに身を揺らし、友人と語り合った。ポテトを食べまくった気がするけど、そこは考えないことにする。ライブが終わる頃には、すっかり“The REX”の魔法にかかっていた。またすぐにでも訪れたい、そんな気持ちにさせられる場所だった。











