カナダでの事業拡大を目指すDentsu Bos社【企業研究】
2012年カナダの企業を傘下におさめ、事業拡大を目指す日本のグローバル・カンパニーに注目です!
DentsuBos
フランス語圏の有力広告会社Bos買収し、カナダでの事業拡大を目指す
電通は伝統的な日本企業でありながら常に新しいことにチャレンジするフルサービスエージェンシー。テレビや新聞、Webなどの広告企画・制作、マーケティング戦略立案と実施、メディア、セールスプロモーションなどにとどまらず、オリンピックやワールドカップなどのスポーツビジネス、映画やタレント関連事業等のエンターテインメント・コンテンツビジネスほか、コミュニケーションに関わる全ての領域でビジネスを展開している。また近年のグローバル化に伴い海外進出にも積極的だ。昨年はカナダのモントリオールを中心に展開していた広告会社Bos社を買収し、新たにDentsuBos社としてトロントに約130人、モントリオールに約90人の従業員を抱えカナダでのビジネスを展開している。今回はDentsuBos社で唯一の日本人として業務にあたっている久保 恵一さんにお話を伺った。
フランス語圏を含めたカナダ全土で一貫したサービスを開始
1995年に設立された電通カナダが、冒頭の通り昨年6月、モントリオールを中心にクリエイティビティの高い広告を作ることで定評のあったBos社を買収。電通カナダと統合し、DentsuBos社として生まれ変わった。以前は英語圏を中心に、カナダ進出日系企業を主要クライアントとして事業展開をしていたが、Bos社買収後はフランス語圏にもワンストップで対応できる強みを活かし、National BankやFidoなどのカナダローカル企業の広告展開も担当している。カナダは世界で9番目に大きい広告市場であり、ここ数年で大幅な成長はないものの安定した需要がある。さらに、カナダの広告業界では大手が寡占することなく市場競争が成り立っているので、さらなる拡大を狙うDentsuBos社にとっても成長の余地があるという。
また、カナダの広告市場ではSNSを使った展開が発達しており、DentsuBos社でもFidoのプロモーションではFacebook上で広告に登場する犬のキャラクター募集キャンペーンを行い、結果として$200,000の募金をわずか48時間で集め、44,000の「Like(いいね)!」を獲得する等、想定を越える閲覧数を記録し大成功を収めた。
日本と海外の架け橋となる
海外展開によって現地採用の社員が増えるなか、電通は世界中のグループ会社社員の交流や能力向上にも力を入れている。世界各国から選抜された電通社員30人が日本に集まり、集中的にトレーニングプログラムを受けることもあれば、世界中に散らばるスペシャリスト達が提携してひとつのクライアントに対してソリューションを提供していくこともある。また、海外から日本への進出を狙っている企業に対して、電通や電通グループが持つコネクションが活用できるのも大きな強みである。その企業が日本で宣伝するとなれば日本の電通を通じて行うこととなり、長期的な交流を持つことも期待できる。
また電通グループ全体のメソッドとして特徴的なものの一つに、電通独自の消費者行動モデルがある。一般的にはAIDMA(Attention, Interest, Desire, Memory, Action)という (このActionがこの場合「購入」の意味で使われている)モデルに基づいて広告が制作されるが、電通はAISAS(Attention, Interest, Search, Action, Share)という独自の考え方を提案している。これはソーシャルメディアが一般化している社会における消費者行動モデルであり、消費者が購入前にサイトなどで商品やサービスの評判を調べ、購入後はサイト上で感想をシェアするようになったプロセスをモデル化したことに特徴がある。このモデルに合わせ、いかに消費者に能動的な動きを促して商品やサービスに関心を持ってもらうかが、広告コミュニケーションにおける成功の鍵である、としている。
電通のカナダに於ける展開は15年以上の歴史があるが、ビジネスチャンスはまだまだカナダ全土に広がっているという。フランス語圏に強いプレゼンスがあったBos社の買収により、公共語が2カ国語というカナダで、単なる英語翻訳ではないネイティブなフランス語で広告制作ができるという強みを持ち、カナダ全土で、ワンストップのサービスを提供できる体制を構築した。そしてそれを背景にカナダ企業との関係を強化すると共に、カナダ企業が日本に進出する際のサポートを実現していく。また、電通がここ1、2年で買収したデジタル分野の有力企業である電通イノベーション・インタラクティブ社、ファーストボーン社、ステーキグループ社などとの連携も一層強化し、デジタル領域に強いフルサービスエージェンシーとしてのビジネス拡大を目指していくという。消費者の行動やクライアントの課題が複雑になっていく中、コミュニケーションの領域全てでソリューションが提供できる電通の強さが、今後、カナダでも発揮されていくことになるだろう。