デロイト & トロント日本商工会 共催 第3回カナダ・マネジメントセミナー

「在加日本企業のマネジメントに求められるカナダ最新ビジネス基礎知識」を開催!
日系企業3社から代表者を迎え、駐在員の役割に迫る
(左から)牧原貴宣さん/福岡宏之さん/吉川健一さん 北脇秀夫さん/澤村宣亮さん/深堀宗一さん

(左から)牧原貴宣さん/福岡宏之さん/吉川健一さん 北脇秀夫さん/澤村宣亮さん/深堀宗一さん


冒頭挨拶をする商工会の伊東専務理事

冒頭挨拶をする商工会の伊東専務理事

昨年に引き続き、トロント商工会とデロイトの共催によるマネジメントセミナーが6月6日に開催された。第一部の「リスクマネジメント基礎講座ー法人税およびその他費用編」では、デロイトの福岡宏之さんが法人税や公的費用、クロスボーダー取引を中心にマネジメントに関わる税金関連基礎知識についての解説を行い、多くの聴講者たちが熱心にメモを取っていた。そして第二部では、規模や業界の異なる日系企業から駐在経験豊富な管理職の方々をゲストスピーカーに招いての「在外日本企業における駐在員の役割とは?」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。ゲストスピーカーはSony of Canada Ltd. Senior Vice Presidentの澤村宣亮さん、Hitachi Construction Truck Manufacturing Ltd. CEO & Directorの北脇秀夫さん、OSG Canada Ltd. Presidentの吉川健一さんのお三方で、澤村さんは17年、北脇さん24年、吉川さん14年の各国での駐在経験を持つ。このお3方にデロイトの深堀宗一さん、福岡宏之さんがファシリテータとして在加駐在員にとってホットなテーマを投げかけ、パネルディスカッションが進められた。その模様を一部ご紹介していこう。

カナダの現場では、どのように人材を育てているのでしょうか?
パネルディスカッションでは、笑いの響く場面も

パネルディスカッションでは、笑いの響く場面も

吉川さん:僕は給料体系や従業員の活用法などを変えました。カナダの自己評価というと、ほぼ満点に近い数字をみんな出してきます。そのため、上層部としてはその評価を基本的に下げるということにどうしてもなってしまいます。ですから、5段階評価で基準の100点(通常業務をきちんとこなすこと)は3点で、それ以上はこちら側が決めるというプラス評価に変えました。この方法をカナダ人社員に理解してもらうため、まず僕は自分がいいと思った一人の社員に対して集中的に自分の考えを理解してもらえるよう働きかけ、その社員から周囲に伝えてもらうように促しています。現地の社員に、日本人、そして駐在の僕ではなかなかみんなに伝えることが難しいような細かいニュアンスを汲み取ってもらうことで、より周囲の理解を得やすい環境を作っています。

北脇さん:どの会社にも自分の会社を潰したくて会社に来ている人などいないということが共通としてあると思います。「評価する」というよりも、同僚がその社員がいてくれること、そして会社に来てくれることに感謝することが、結果として会社が楽しいから会社に来るというところに行き着きます。その環境を作るためには、それぞれ違う能力を持っている社員のいいところを互いに見つけ、その個性を尊重しながら仕事を割り振っていくことが大切。企業は人を管理することが目的ではなく、どのようにして利益を出していくのかが最終目的ですから、トップダウン方式でどうしても生まれてしまう中間層からの反発に対し、「マネジメント」と「命令」は違うということを理解させる必要があると思います。

澤村さん:僕は昨年、部下たちに僕の考え方をわかってもらう必要があると思い、半年以上かけて400人の部下全員と面談をしました。そのとき僕がお願いしたのは、まず一つ目に、実はここに在庫が眠っているだとか、このままだと悪い事態になってしまう恐れがあるだとか、そういった問題点を報告してほしいということ。そして二つ目に、中間層に対し部下だけでなく、直属の上司やマネジメントも含めた、360度のリーダーシップを発揮してほしいということを話しました。特に現地社員たちが雇用の形態上なかなかできない「上司に歯向かう」ということができているか、これは駐在員の大事な仕事だと思っています。一人一人と面談したことで、だんだんと従業員たちも僕の考え方を理解してくれるようになってきました。社員一人一人が会社から尊重されていると感じることで、個々のやる気がでると思っています。

次に、カナダという成熟した市場で日系企業が成長拡大していくために駐在員が担う役割とはなんだと思いますか?
第二部のパネルディスカッション時の模様

第二部のパネルディスカッション時の模様

吉川さん:どれだけグローバルなことをローカライズしていくかということが肝だと思います。いかに自分たちと同じ感動をカナダ人に伝えていくことができるのか、そのために僕はここにいると思っています。カナダ人と一緒に仕事や生活をしていくことで得たことを世界に発信していくこと、感じることが重要だと思いますね。昨年弊社は25周年を迎え、次の25年への指針をカナダ人の社員たちと一緒に考えました。現地社員たちと目線を一緒にすることで、必然的に改善、成長していくと思います。また、昨年は社員全員を日本に連れて行き、日系企業で働いていることの素晴らしさや異文化を肌で感じてもらい、さらに、会社を大幅にリフォーム、壁の色を変えたりと、社内の雰囲気を変える試みも行ってきました。
この変革に対し、最初は保守的な人が多かったですが、楽しい会社にしようと自分自身が実行していったことで、だんだんとカナダ人たちも同調するようになってきて、彼らからもアイデアが出たりと、自分たち自身でペダルを漕ぎ出しました。やらされるのではなく、やりたいと思いながらやっていくようになりましたね。

北脇さん:海外の子会社というのは、親会社に対して、自分たちが発信したものが報われることが非常に少ないです。すると、親会社は現地の状況を知らずに、あらぬ方向へと行ってしまう可能性が高くなってしまう。ただでさえ日本の親会社からの情報量が圧倒的に多いのに、それでは双方間コミュニケーションではなく、一方的な命令となってしまい非常に具合が悪い。ですから、その情報量のアンバランスに対し、グループ全体に有益となるような情報を開示していく、そして必要であれば日本側から情報をもらうといったように、親会社と子会社を繋ぐこと、それが駐在員の役目として大事だと思います。また、いきなり管理職として現地に送られても管理者としてその会社に適応できるかというのは疑問で、会社の方針を現地の人たちと一緒に描いていくことで、今まで命じられていたものが自分たちのものに変わっていく。それが駐在員のトップのやることだと思います。

澤村さん:カナダの駐在員として大事なことは、まず自分の会社の世界中のオペレーションの中でカナダという国をどう特徴づけたいのかを考えるといいと思います。例えば僕の場合、市場規模では隣国のアメリカには敵わないのですが、オペレーションや従業員の質までもがアメリカよりも低かったらカナダの存在意味がないと自分に言い聞かしています。そのうえでこの部分はカナダのいいところにする、という特徴を社内外に宣伝することで、本社からも一目置かれるようにもなります。結果的に現地の人も注目されてやる気が出ると思います。

また、駐在員は自分の在任期間だけを考えるのではなく5年後、10年後の後任者たちに感謝されるような仕事とは何か?を意識するといいと思います。たとえば我々の場合は市場に対しての広告投資やその結果としてのブランドイメージ、また次の世代の従業員やオペレーションの質だったりします。一般的に、誰でも短期的なことの方が結果がすぐに出ますから評価されやすいわけで、現地人はこういう勝負が得意です。一方で日本の本社から派遣されている駐在員は短期の結果はもちろん中長期的なことも同時に考え行動することが大事です。僕は「血中現地人濃度」と呼んでいるのですが、見た目は日本人なのに、行動や考え方が現地人とでもいうような、短期志向に偏った状況になっていないか、いつも血中濃度を自問自答しながら確認するという能力が駐在員には求められると思います。短期的だけではなく、中長期のことにも取り組むことができる人間が結果的にビジネスの成功に貢献すると思います。

セミナーを終え、聴講者からは第一部に対し、「基本的なポイントを押さえることができた」「多くの情報が網羅され、かつわかりやすくまとめられていたのでいろいろと学ぶことが多かった」など、複雑な税金関連知識に対する理解を深めることができたこと、第ニ部に対しては「業種は違うが、駐在員の存在意義のディスカッションは大きなテーマであり、興味深く参考になりました」「共感できるものが多くあり、とても参考になりました」など、カナダで奮闘する駐在員としての共通する部分を感じるとともに、自身のこれからの駐在生活の一つの指針となったことが感想として寄せられ、いかに当セミナーが参加者にとって有意義なものとなったかが窺えた。

次回のセミナーは今年中にも開催予定。回を重ねる毎に、さらなる知識が深まるとともに、企業間の横の繋がりが広く、強くなっていくことで、カナダ市場における日系企業のさらなる躍進へと繋がっていくことだろう。