グルメの王様のおしゃれ美食道 第27回「ピッツァとの出会い」






私がピザと言う食べ物を知ったのは、中学一年生の時。父のアメリカ旅行のお土産の中の絵本「This is New York」の中にあったピザのお店の絵です。当時は何が何だか分かりませんでしたが、今思うとピザの生地なのでしょう、それを空中高く飛ばしている姿はとても印象的でした。日本におけるピザでは、父と仲の良かったニコラ・ザべッティさんが経営する六本木のニコラスが有名でした。各界の著名人が集う社交場の様なお店でしたね。しかし何故か子供が近づいてはいけない場所、という思いからお訪ねすることはありませんでした。反面私が足しげく通ったのは、ニコラス時代から大分後ですが、同じく父とも親交のあった青年実業家榊原さんが六本木に開いた「ラ・ストラーダ」です。
榊原さんは、「七つの海の白い女王」と世界中から絶賛された美しい客船をそのままホテルとレストランにした下田のフローティングホテル、スカンジナビア号でも活躍した私の憧れの人でもありました。父とビジネスの打ち合わせをする時は、いつも大型高級外車の中でさながらアメリカのギャング映画を彷彿とさせ、遠くで話し合いが終わるのを待っていた私をワクワクさせました。また同氏は当時国民的スターだった石原の裕ちゃんと四谷にステーキハウスを経営し一世を風靡した人でしたが、残念ながらお会いする機会がないまま、若くしてギリシャで亡くなりました。ピザに凝っていた頃、食べたくなるとよく「ラ・ストラーダ」まで車を飛ばして行きました。カナダでも入ったことがあるレインフォーレストのずっと前のお話ながら、店内に時々雷の音が響き渡るユニークでハイセンスなお店でしたね。今でこそ知らない人がいないピザですが、昔小学校の同級生が高校卒業後のクラス会で、恩師のアメリカ旅行記ご披露中、「アメリカではピザと言っても通じず困ったそうだ。外国ではピッツァと言わないといけないんだぜー。」と自慢げに話していたことを思い出します。料理における呼称の定着という思想を考えさせられますね。
さてそのアメリカのピッツァですが、お隣ニューヨークには名店が数多くあります。今回訪れたのは、ナポリを見ずして死すことなかれ、をもじって、ナポリピッツァを食べずして死すことなかれ、とばかりに勇んで出向いた Don Antonio by Starita 309 West 50th Street, New York, NY です。店内は活気に溢れ、ピッツァを作っている様子を大きなテレビ画面で見ることが出来る粋な演出もあり、それがまた自信に繋がっている様な気がしました。気さくなウェイターにお薦めピッツァを選んで貰ったのが、Montanara Staritaと名物のCapua です。ごく一般的には、ピッツァはいわゆるカジュアルなチェーン店で食べる機会が多いかもしれませんが、勿論それなりの味はあるものの、やはり歴史のある拘りを持ったお店の味には及ばないと思いました。ニューヨーカーが最も好む料理はイタリア料理であることは大昔から言い伝えられていることですが、その中でのピッツァの存在は余りにも大きいと感じます。
辻下忠雄
エッセイスト・生活礼儀情趣導師(生活開発プロデューサー)
1947年東京大田区に生まれる。成城学園出身。フランス料理界、ナイトクラブ界、中国料理界の大御所として多くの逸材を育てた父と、料亭経営の傍ら歌舞伎の舞台にも立った祖父の下で育つ。美食歴59年究極の美食家。紳士の中の紳士。ベストドレッサー。生活信条は「明るく・楽しく・仲良く」超楽天主義者。トロント在住。







