グルメの王様のおしゃれ美食道 第37回
「河豚は食いたし命はおしし」






外国の人に日本料理を紹介する際必ず登場するのが「河豚(ふぐ)」です。「日本では猛毒のある魚を食べる。」と言ったら大抵の外国人は文字通り肝を冷やすに違いありません。
子供の頃は最高級日本料理として、銀座「千茂登」「やま祢」といった一流店に憧れたものです。ふぐは大変美味しい料理ではあるものの毒があり、調理法を間違えると命を落とします。そこで皆さんもご存知のように、日本では免許を取得した調理人にしか作ることを許されていません。昔は特に、そして今でも信頼のおける料理店が望まれます。
ふぐは多くの映画や落語に出てきます。落語ではそのままの「ふぐなべ」や名作「らくだ」。らくだという渾名のウマさんが自分勝手に調理をしてあの世行きという話ですね。テレビで忘れられないのが、現在も何度も見直している刑事コロンボシリーズの「美食の報酬」。大ファンのルイ・ジュールダンがポールというそれこそ美食評論家として登場。冒頭日本のふぐを料理番組で紹介するのですが、なんとそれがふぐでなくどう見てもハリセンボン。1977年の作品ですが、まだまだ日本料理が海外で知られていない時代だったのでしょうか?逆にアメリカ料理に関しても、東京から着いたばかりの実業家役として出演していたアカデミー賞ノミネートの経歴を持つ俳優MAKOが、ポールのふぐ料理のもてなしに対し「アメリカでふぐが食べられるなんて信じられない。東京の友人たちに話したらびっくりするでしょうね。何しろホットドッグととうもろこししかないと思っているので。」という台詞も驚きでしたね。
日本の映画では、アカデミー賞を獲得した「おくりびと」にも出てきました。主人公が、ふぐ料理の中でも高級かつ珍味とされる白子焼きを、美味しそうに食べるシーンがあり、「食べたーい!」と思った人も多いはずです。
さてそれではいよいよ、ふぐを食べてみることにしたいと思います。ふぐは確かに高級料理ではありますが、近年は気軽に味わえるお店も増えてきました。今回ご紹介するのは、そのふぐ料理入門に相応しい、最近発展目覚しい東京は大井町にある「玄品ふぐ」です。ふぐ料理のコースの定番というと、綺麗な大皿の模様が浮き出る程の薄つくりで知られる「ふぐさし(てっさ)」とお馴染みの「鍋物(てっちり)」で、これは必須科目ですが、同店には嬉しいことに格安で味わえる先ほどの「白子」、そして珍しい唐揚げまで付いたお得なコースがあります。少し慣れてきたら、玄海灘下関直送の、ふぐの王様「とらふぐ」コースがお勧めですね。
トロントでは味わえない本物の日本料理をよく取り上げますが、このふぐはその最たるものでしょう。ふぐを面白おかしく外国人に話すのも良いかも知れませんが、その前に自分自身もその味に接していると、より迫力が増します。
そして何事も初めが肝心。理想的にはその料理に関し、美食歴を持った人に案内されるのが一番ですが、それが叶わない場合に助けとなるのが、そのお店の人たちの解説です。いつの世も大切なのは、お客様と直に対面する従業員教育だと信じています。
辻下忠雄
エッセイスト・生活礼儀情趣導師(生活開発プロデューサー)
1947年東京大田区に生まれる。成城学園出身。フランス料理界、ナイトクラブ界、中国料理界の大御所として多くの逸材を育てた父と、料亭経営の傍ら歌舞伎の舞台にも立った祖父の下で育つ。美食歴59年究極の美食家。紳士の中の紳士。ベストドレッサー。生活信条は「明るく・楽しく・仲良く」超楽天主義者。トロント在住。








