グルメの王様のおしゃれ美食道 第50回
オペラ座の外人







パリのオペラ座は世界的な劇場の一つです。オペラ座で思い付くのはかの有名な「オぺラ座の怪人」。原作は、私が昔々、海外推理小説の名作入門の際一番はじめに読んだ「黄色い部屋の謎」の作者であるガストン・ルルーが、1909年に発表した小説です。何度も映画化また舞台化されてきました。トロントでも公演されましたね。大分前になりますが、当地の有名な女性経営者から誕生日の贈り物としてチケットを頂き見に行ったことがありました。東京では数々のコンサートを見に行きましたが、最前列の中央でしか見ないという拘りがあったので、中央二列目の席に大満足。最前列には大和撫子の皆さんがおり熱心に観劇。始めから終わりまで泣きっぱなしだったのが印象的でした。観劇の後で記念に有名な仮面のブローチを買い求めました。子供の頃から仮面や覆面(特にプロレスリング)が大好きなので、このブローチは今も愛用していますが、この仮面ブローチこそが今回のユニークな美食旅行の案内人となりました。
さて、パリのオペラ座で食事を楽しんできました…と言うと「えっ、あのオペラ座で?まさか。」と思われる方も多いかも知れません。かくいう私も2011年までは同じようにそう思って来ました。
世界的に著名な三ツ星レストランを始め、訪問するレストラン選びに際し、この「レストラン・オペラ」を加えたのは、よくお話する「楽しく食事がしたい」という気持ちからでした。これほど話題満載のお店もないでしょう。
更に凝ってみたのは、著名なシェフ、クリストフ・アリベール氏の息が掛かったレストランでの、本格的なディナーでなく、サンデーブランチのバッフェを選んだことです。オペラ座でバッフェなど誰も思い付かないでしょうね。
トロントの名物料理の一つにバッフェがあります。特に中国香港系のバッフェはひとつの社会現象とも言えますね。ということで、遥々バッフェの本場?トロントからパリに出向いた外国人が、世界的な劇場でバッフェの他流試合。実に面白い!
レストラン・オペラの最大の特徴は、やはりインテリアでしょう。流石パリです。赤と白を基調にしたそのセンスは本当に見事でこれを見るだけでも価値があります。そしてお店を出た所にある、高級品揃いのオペラ座グッズ店とも合わせて、とにかくお洒落オンパレードの感がありました。
メニューはトロントに比べ少ないのですが、反面「食都パリ」に恥じない味を誇っています。特にパンやチーズは大変よく考えて並べられていると感じました。スタッフの皆さんはとても若く、少々驚きましたが、大変フレンドリーで好感が持てましたね。
このレストランを語る上で絶対評価しなくてはいけないことは、開店までの余りにも長い歴史です。2011年の開店まで、数多くの賛成反対意見があり、何と136年もかかりました。発想の素晴らしさに敬服しますが、その熱き思いをかくも長き間温め続けてきた人々に敬意を表したくなりました。世界中探してもこの様なレストランは無い筈です。食事中思わず、遥か昔の喧々諤々を思い浮かべてしまいました。やはり人に歴史あり、レストランにも歴史ありですね。
食事の楽しみ方としては、気軽なバッフェにはカジュアルルックで、そしてディナーには正装で出かけるのが良いかも知れません。私の場合は、当日は次の予定もあったので、一応スーツで参上しました。そして襟には勿論オペラ座の怪人のブローチ!とても楽しいブランチでした。
辻下忠雄 エッセイスト・生活礼儀情趣導師(生活開発プロデューサー)
東京大田区に生まれる。成城学園出身。フランス料理界、ナイトクラブ界、中国料理界の大御所として多くの逸材を育てた父と、料亭経営の傍ら歌舞伎の舞台にも立った祖父の下で育つ。美食歴61年究極の美食家。紳士の中の紳士。ベストドレッサー。生活信条は「明るく・楽しく・仲良く」超楽天主義者。トロント在住。




