グルメの王様のおしゃれ美食道 第38回
「ホールフーズ食堂」
ホールフーズというスーパーマーケットと初めて出会ったのはかなり最近で、2003年のクリスマス。ニューヨークのロングアイランドに住む義弟の案内で出かけたAmericana Manhassetでのことです。いやはや高級住宅地の中に忽然と現れたまるで五番街が越してきたような最高級ブランド店が立ち並ぶショッピングモール。余りの意外性に当時「てっきり映画のセットかと思った。」というジョークを多くの友人達に使いました。
ある日モールの道を挟んだ所にある、ロッキー青木さんのステーキハウス紅花に家族親類を招待した際立ち寄ったのがホールフーズでした。
スーパーマーケットというと我々日本人、特に東京人にとって長年にわたり明治屋・紀伊国屋という両巨頭ですばらしい食材とサービスに接しているので、どんな高級スーパーが現れても驚かないのですが、ここだけは東京に勝るとも劣らない清潔さと品揃えで、感心したことを思い出します。トロントへの進出は2002年の5月。ヨークヴィル店が第一号でしたね。その後店舗を増やし、いまやトロントの高級スーパーとしての地位を確立した感があります。ホールフーズと言えばオーガニックの代名詞。商品の殆どが他のスーパーでは見られないブランドばかりで、初めて訪れた人はその珍しさに時間が経つのを忘れるほど見入ってしまうに違いありません。
さて今回はこのホールフーズを、レストランとして見直して見ようと思いました。
WHOLE FOODS 4771 Yonge St.Toronto (Yonge東&Sheppard南角)
注目は目の前の食材を自分で選び調理してもらう、WOK& Sandwich コーナーです。
Sandwich コーナーでは、まずオーダーフォームに自分の好みを書き入れて行くのですが、マルチグレインを始めとする「パン」。次はハムやローストビーフなどの「お肉類」。パンにぬるスプレッド選び、チーズ選び、そして最後に野菜の中から三種選び完成。焼くかそのままかも注文できます。木曜が割引の日となっていてお得です。
さて今回のハイライト、WOKの方は、まずプラスチックのどんぶりを手にして、ご飯か麺類を選んで入れ、その後は豊富な野菜類から好みのものを加えて行きます。次にプロテインと称する牛肉・鶏肉・海老など主役を選び、調理の際お店の人に加えて貰います。最後はソース選びで自分でかけるのですが、日本風のテリヤキソースを始め各国のソースが揃っていて目移りしてしまいます。さーて準備が整ったらそのどんぶりを調理担当の人に渡し、手際よく炒めてもらいます。こちらは日曜日が割引デーです。
調理担当者達も一生懸命で好感が持てますが、私が密かにエグゼクティヴシェフと呼んでいるタイ出身のPawineeさんの調理が群を抜いています。彼女は調理だけでなく、その笑顔の素晴らしいことといったらありません。笑顔千両とはこのことですね。
私がホールフーズをレストランとして見てみたいと思ったのは、もし同じ料理を自宅で調理するとなったら、食材を揃えるだけでも大変だ、ということに加え、その食材は全てオーガニック売り場に並べられている、という信頼感でした。
辻下忠雄
エッセイスト・生活礼儀情趣導師(生活開発プロデューサー)
1947年東京大田区に生まれる。成城学園出身。フランス料理界、ナイトクラブ界、中国料理界の大御所として多くの逸材を育てた父と、料亭経営の傍ら歌舞伎の舞台にも立った祖父の下で育つ。美食歴59年究極の美食家。紳士の中の紳士。ベストドレッサー。生活信条は「明るく・楽しく・仲良く」超楽天主義者。トロント在住。