グルメの王様のおしゃれ美食道 第46回
「カナダ料理の神髄」







東京に戻ると、「カナダ料理というものはあるのですか?」とよく尋ねられます。確かにジャンルとしてカナダ料理という名称は馴染みが薄く、いつも答えに窮してしまいます。今回ご紹介するレストランPARLOR(King 南/Blue Jays Way東)は、もしかするとカナダ料理の旗手になるのではと期待されるお店です。オーナーシェフのJason D’Anna氏は、世界的なシェフである、ジャン・ジョルジョ・ボンゲリヒテン等とも仕事を共にしたことがあるキャリアが光る人で、流石に研究熱心ですね。大都会にあるキャビンをイメージした拘りの店内を通り、調理場を始め、地階にある食品貯蔵庫や超高級品も秘蔵されるワインセラーも特別に見せてもらいましたが、特に肉類に関しては大変知識豊富で、さしずめお肉博士のようでした。
気さくなコオーナーのBrett Howson氏共々楽しく料理談義をさせて貰いましたが、この会話の中で最も多く使われた語彙は「ローカル」です。地元の食材を使う、これはその土地の食文化を大切にする料理人の皆さんの言わば鉄則ですが、このお店はカナダという国を愛し、カナダと言う国に敬意を払っている、そう感じました。
さてここでこのお店には無くてはならない存在をご紹介しましょう。オーナーシェフのパートナーで、ケータリング&イベント担当の武田真里さんです。「カナダで採れるローカル、旬の食材を駆使した美味しいカナダ料理を提供していますので日本からの来客があればぜひご紹介ください。」と熱く語りました。
このお店のメニューで注目したのは「馬肉」です。日本では桜(鍋)とか蹴とばしの異名を持つお肉です。昔東京の赤穂浪士で知られる泉岳寺に親友が経営する馬刺し店があり、よく通いましたが、こちらのお店ではいわゆるタルタルとして供されます。つまりドイツの名物で牛肉の特上部位を使ったタルタルステーキのカナダ版ですね。また初めての方は少々驚かれるかも知れませんが、骨の上に乗せられ、その上骨髄まで付いてきます。骨髄?そうですイタリア料理のオーソブーコのカナダ版です。将来は新鮮でヘルシーな馬刺しの登場も思わず望んでしまいます。
このお店のメニューはかなり工夫が凝らされており、美味しそうな料理が沢山目に飛び込んできます。もう一つの注目は、正にトロントNo.1との誇りを持っているに違いない他店では見られないバーガーです。キーワードはミディアムレアー。これは必見いや必味でしょう。そしてソースが凝っている獅子唐の粋なおつまみは、スペインタパスのカナダ版ですね。またユニークなカクテルも注目の的で、木のチップをバーナーで燃やし、それにグラスを伏せて香りを移す。カナダ産ライウィスキーをベースにした見事な発想のこれまたマンハッタンカナダ版もウィスキー党に人気が有るに違いありません。 そして地階のペストリー工場で作られるアイスクリームもユニークで、特にウィスキーやお馴染みメープルシロップを使ったものがお薦めです。
最後に、化粧室に案内された時のことです、通常なら単にドアーに男女の別が表記されているのに、ここではわざわざ壁に矢印と共に、男性は左、女性は右、と書かれてあり珍しいと思ったのですが、理由を聞かれ答えに困っていると、女性は右=Right. 常に正しい!ジョークの王様とも言われる私ですが、見事に一本取られましたね。真里さんのアイデアだそうです。素晴らしいチームワークとカナダを大切にするレストランの更なる発展を願います。
辻下忠雄 エッセイスト・生活礼儀情趣導師(生活開発プロデューサー) 1947年東京大田区に生まれる。成城学園出身。フランス料理界、ナイトクラブ界、中国料理界の大御所として多くの逸材を育てた父と、料亭経営の傍ら歌舞伎の舞台にも立った祖父の下で育つ。美食歴59年究極の美食家。紳士の中の紳士。ベストドレッサー。生活信条は「明るく・楽しく・仲良く」超楽天主義者。トロント在住。




