東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第37回
5月に行われ盛大なにぎわいをみせた日本酒フェスティバル、Kampai Toronto vol.4。
このイベントに参加した岩手県、南部美人の蔵は3.11東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。南部美人の5代目である久慈氏は震災直後から日本酒を通じて地域復興に様々な取り組みを行ってきた。TORJAでは久慈氏が体験したこと、復興に向けての取り組みなどを寄稿してもらった。
北限のゆず酒が完成し、そのお酒を披露したい、と陸前高田の農家の皆さん、関係者の皆さんからありがたい意見が出ました。すぐに陸前高田で北限のゆずのお酒を披露できないか、地元の皆さんが動いてくれました。しかし、震災からまだ間もない事もあり、陸前高田のシンボルでもあったホテルの「キャピタル1000」も被災し、陸前高田の方々はそういった集まりなどが出来る場所が無いと言っており、開催は難しいかと私は思っていました。調べていくと、被災の割合の大きな海岸沿いはダメなのですが、陸前高田の山沿いの方に比較的大きな公民館があり、そこを使えるという事がわかり、立派なホテルとかではありませんが、まずは手作りで北限のゆず酒を披露しようということになりました。
2013年3月15日、いよいよ第1回の北限のゆず酒を楽しむ会を開催しました。料理などは全て手作りで豪華なものはありません。さらには、北限のゆずを使ったクッキーやシフォンケーキなど、知的障害者施設のあすなろホームさんが通常作っているお菓子なども持ち込み、さらには、北限のゆず酒だけではなく、全国から集めたゆずのリキュールも並べ、勉強の意味も込めて行いました。
このように、小さな手作りの会でしたが、陸前高田市の戸羽市長はこの会に賛同していただき、公務がお忙しい中、来賓として公民館に来てくださいました。その際のあいさつでも、戸羽市長がこの北限のゆずに陸前高田の復興を象徴してほしい、という強いメッセージをいただき、さらには、この北限のゆずを新しい陸前高田の名物にして、今後は明るいメッセージとして発信していきたい、というありがたいお言葉もいただきました。
参加した陸前高田の関係者の皆さん、農家の皆さん、知的障害者施設の皆さん、そして陸前高田以外からもNTTドコモさんや東北博報堂さんなど、サポーターの皆さんも、震災後の大変な状況からこの北限のゆずプロジェクトを応援してくれており、その1つの成果の形を見ることが出来、とても喜んでいました。手作りの小さな会は、大きな笑顔と共に終盤を迎え、最後のあいさつで、北限のゆず研究会の会長から「来年はキャピタル1000が新しく復興して建設される。絶対に来年は復興したばかりのキャピタル1000で第2回北限のゆずを楽しむ会をやろう!!」と力強いメッセージを発信していただき、参加者一同その新しい夢に向かって進んでいく事を決意しました。
手作りの小さな第1回の北限のゆずを楽しむ会は、大きな夢と共に次のステージに進みます。今後はゆずを収穫するボランティアをどう確保していくか、リキュール以外にもっとお菓子や料理、特産品などに北限のゆずを使っていけるか、ゆず栽培の先進地はどうなっているか、そもそも量を拡大するには苗木を植えていかなければいけないが、その費用をどうするか、など問題もたくさんありますが、1つ1つクリアしながら前に進んでいきたいと思います。
オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人
http://www.nanbubijin.co.jp

東京農業大学客員教授
久慈 浩介