東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第35回
5月に行われ盛大なにぎわいをみせた日本酒フェスティバル、Kampai Toronto vol.4。
このイベントに参加した岩手県、南部美人の蔵は3.11東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。南部美人の5代目である久慈氏は震災直後から日本酒を通じて地域復興に様々な取り組みを行ってきた。TORJAでは久慈氏が体験したこと、復興に向けての取り組みなどを寄稿してもらった。

陸前高田市に昔からあった宝である「北限のゆず」。東日本大震災でも山側のほうにあった木々が残り、この「北限のゆず」を使って、新しい陸前高田の名物を作ろう、そしてその活動を復興につなげていこう、ということで、陸前高田の北限のゆずを栽培している農家の方々、そして福祉施設のあすなろホームさんが主となり「北限のゆず研究会」が立ち上がりました。そして2012年秋、北限のゆず研究会による最初のゆず狩りが行われます。
しかし、そのゆず狩りですが、思ったように行きません。なぜか。それは、陸前高田にある北限のゆずが、ほとんどが計画的な農業生産用のゆずではないためです。つまり、農家の方々や、一般の方々の庭に「生えているだけ」という状態で、剪定などの管理も行われておらず、木の外側に生っているゆずはすぐに狩れるのですが、木が大きくなりすぎて、木の中の方に生っているゆずは刈り取ることが出来ません。ゆずの木にはトゲがあるため、無理に木の中のゆずを取ろうとすると、トゲでケガをしてしまいます。
今までも、この北限のゆずは、生えている家の方が、外側の見える部分でトゲの影響の無い部分だけを自分で刈取り、おこづかい稼ぎのために、産直に持って行って売ったり、自分でゆず湯にしたりしていたそうで、計画的な農業生産ベースに乗っていないため、北限のゆず研究会が刈取りを推進しようとしてもなかなかまとまりませんでした。
さらには、北限のゆず研究会として、陸前高田のどこの家、どこの場所にゆずの木が生えているか、全てを把握しておらず、自分たちの農業用の北限のゆず以外の収穫がなかなか上手く行かなかったのが初年度でした。
しかし、岩手県大船渡農業改良普及センターの担当者である佐藤さんが歩き回り、ゆずの木がどこにあるかなどをまとめあげて、何とか収穫量をまとめていただけました。
初年度の北限のゆずの収穫量は約300㎏。これから計算すると、ゆずのリキュールはだいたい360mlで500本近く生産することが出来ます。
予想よりはかなり少ないゆずの量でしたが、それでもみんなで一生懸命狩ったゆずですので、大事に南部美人で糖類無添加「北限のゆず酒」を生産することにいたしました。
その裏側で、東日本大震災からまもなく1年経過するということもあり、この北限のゆずは震災復興につなげる商品でなければいけないと、私は当初から心に決めておりました。
そのために売り上げの一部を義捐金として陸前高田の農業復興に役立てていただこうと考えておりましたが、ゆずの収穫量が予定よりも少なく、初年度の製造本数があまりにも少ないため、売り上げの一部では義捐金も少なすぎると判断し、初年度の北限のゆず酒だけは、売り上げの全額を寄付することに決めました。2年目以降は売り上げの10%を永続的に寄付していく事にしています。
さらには販売についても検討をしました。北限のゆず酒の量が約500本と少ないため、南部美人で売ってしまってはすぐに売り切れてしまいます。そこで取った販売方法とは…
オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人
http://www.nanbubijin.co.jp
本文:南部美人 五代目蔵元東京農業大学客員教授
久慈 浩介













