「挫折は人生の終わりではなく、もっと大きなことを成し遂げる力」アメリカンフットボール・キッカーの佐藤敏基選手(後編)|Hiroの部屋
早いもので佐藤敏基選手との対談も最終回となった。高校からアメリカンフットボールを始め、度重なる怪我、挫折を経験しながらもプレースキッカーとして2019年には日本最長タイ記録となる58ヤードのフィールドゴールを記録する。
昨年11月には自身CFL (Canadian Football League) デビュー選となるエドモントン・エルクス戦で1得点を記録し日本人2人目となる快挙を飾った。
最終回となる今回は、佐藤選手のプレーヤーとしての顔だけではなく社会人として、またカナダ在住日本人としての話も聞いていきたいと思う。
ヒロ: トロント滞在中、練習外の時間はどう使っているのでしょうか?
佐藤: 現在、日本の株式会社アスポというコーポレートウェルネス専門のプログラム提供会社に雇用してもらっているので、トロントではリモートで仕事をこなしています。企業フィットネス領域にサービスを提供しており、ジムで行われるようなレッスンをオンラインで行うのですが、私は主に動画編集などを担当したりしています。自分の挑戦をサポートしてくれ、フレキシブルに仕事をさせてもらえる環境にとても感謝しています。
ヒロ: トロントのチームでプレーしながら日本の会社員としてリモートワークをこなしているんですね。それこそ、NFL入りという夢の挑戦中という感じでかっこいいですね。
NFLといえば、史上最高のクォーターバックと言われているトム・ブレイディ選手が引退を表明されましたよね。
佐藤: そうですね。トム・ブレイディ選手は22年という長い間、現役で活躍され幅広い世代からも支持されていますし、アメフトがあまり報道されない日本でも彼が来日した際は、ニュースになるくらいだったので格別な存在だと思います。ブレイディ選手の言葉で「NFLのチャンスは1回しかないから逃すな」というメッセージがずっと心に残っています。私もセカンドチャンスはないという思いで日々挑んでいます。
ヒロ: アスリートによっては現役時代から、セカンドキャリアも意識したり、勉学に励む方もいるようですが、その辺は何かお考えですか?
佐藤: 学生アスリートをその道の一流の国へ送るサポートができる体制を作りたいです。私は高校からアメフトをプレーしていたものの、本場のアメリカへ行くという考えもありませんでした。でも、一流の選手になるにはその国で指導を受けることが大事だと思います。私がこれから海外で活躍して得たコネクションを使いながら自分のできることを次の世代に還元したいです。
ヒロ: 素晴らしいですね。微力ながら、僕も海外で働く美容師として、日本の次世代への海外サポート的な事もしています。なので、その考えにとても共感します。美容師に限らず、日本人なら海外に出て、日本を外から見て、貴重な経験も沢山してほしいです。海外では、僕と佐藤選手みたいに日本ではなかなか出会えない異業種との出会いもありますしね。
佐藤: 私は日本で就職活動しているときは、日本から出ることは全く考えていなかったんですけど、アメフトを通じて海外に来てからは言語の壁があり、周りに知り合いはなし、右も左も分からない中で見えてくるものがあるなと思いました。外から日本をみてわかることもありましたし、人間として成長できたと思います。快適さだけを求めず、「コンフォートゾーンから抜け出す」ということは本当に大切だと思います。
ヒロ: 成長するためには、時に居心地の良い場所から出るという事は必要だと、僕も強く賛成します。
ヒロ: CFLでの今シーズンのことも含めて、公私ともにどのような一年にしたいですか?
佐藤: NFL挑戦中のプレーヤーとしては、一試合でも多く試合に出て結果を出してアピールしていくしかないと思うのでそれが目標です。そして、多くの人に自分のプレーを見てもらいたいです。
トロントでのライフスタイルとしては、去年それこそヒロさんを通じて色んな業種の人と出会えたのですが、今年も人との繋がりを大事にして、日本人コミュニティーでも何か機会があれば参加したいと思います。
トロント在住の子供たちにも日本を背負って活躍するところをみてもらってスポーツ以外でも高い志をもって夢を追うようなきっかけになれば嬉しいです。
ヒロ: 最後にTORJA読者の皆さんにメッセージをお願いします。
佐藤: 私が人生を通して言えることは「挫折は人生の終わりではなく、もっと大きなことを成し遂げる力」であることですね。それこそ、僕も昨年は試合になかなか出られなくて悔しい思いをしました。
でも、皆さんに佐藤が頑張っているから自分も頑張ろうと思ってもらえればそれはスポーツ選手冥利に尽きると思いますし、そのためにもチャレンジしていきたいと思います。
(聞き手・文章構成TORJA編集部)
対談はサロンを貸切にし、撮影のため一時的にマスクを外して実施しています。
佐藤敏基選手
神奈川県出身。幼少期はサッカーと剣道を経験し、高校からアメリカンフットボールを始める。高校2・3年時は全国優勝、大学4年時には全国準優勝。大学引退後は一度不動産会社に就職するがNFLを目指すために辞職、海外挑戦と並行して日本ではxleagueの「IBM BIGBLUE」に所属しており、2019年には日本記録となる58ydのFGを成功している。2021年グローバルドラフトでトロントアルゴノーツから指名されて所属し、カナダでもプレーしている。
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。NYの有名サロンやVidal Sassoonの就職チャンスを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。ワーホリ時代から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再びトロントのTONI&GUYへ復帰し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今もサロン勤務を中心に、著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。世界的ファッション誌“ELLE(カナダ版)”にも取材された。salon bespoke
130 Cumberland St 2F647-346-8468 / salonbespoke.ca
Instagram: HAYASHI.HIRO
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