東京オリンピック・ 空手アメリカ代表 國米 櫻さん(中編)|Hiroの部屋
アメリカ代表として初の空手・女性選手として東京五輪に出場した國米さん。現在トロントでトレーニングに励む國米さんは14歳から米国の国旗を背負ってきた。母国・日本で開催されたコロナ禍でのオリンピックで感じたことを振り返ってもらう。
20各国以上の世界大会に出場し、
オリンピックの出場権を掴み取った國米さん。
しかし、世界は新型コロナウイルス感染拡大という未曾有のパンデミックに突入していった。
ヒロ:数え切れないくらいのアスリートが東京五輪には参加したと思いますが、代表に選ばれるまでの話を聞くと國米さんのケースは凄く珍しいですよね。まずそもそもオリンピックの種目にこれまでなかった空手が東京五輪で初めて正式種目に選ばれているわけですから。
國米:はい、せっかく正式種目に入ったのに五輪自体がキャンセルになるかもなんて…という思いでした。パリ五輪ではすでに空手は種目から外されていると知っていたので、約4年間を東京五輪を目標に体を壊してまで挑戦し続けてきた私たちの晴れ舞台が無くなってしまう可能性に不安な気持ちでいっぱいでした。友達に、「もしキャンセルになったら10分おきに電話をして私が大丈夫か確認して!」と、お願いしてました(笑)。
ヒロ:今でこそ笑って話せるようですが、人生を賭けてきたわけですからね。せっかくオリンピックが決まったのに、もしかしたら無くなるかもなんて想像を絶します。
國米:それでも空手で出場したオリンピック選手という前例がいなかったので、とにかく私の中ではインタビューやポッドキャストのオリンピック・チャンネルを毎日聞くことを習慣にして、自分を高めていました。自分の中の目指す場所に辿り着くにはどうしなきゃいけないか、ということをポッドキャストなど聞いて自分のスタンダードを上げることに努めました。
2021年に無観客で開催となる。
ヒロ:ご家族や友人たちは直接、観戦できない代わりに手書きメッセージ入りのアメリカ国旗をプレゼントしてくれたそうですね。実際にオリンピックを振り返っていかがでしたか?
國米:まず開催できたということがとても嬉しかったです。日本だからこそあの状況下でも開催できたんだと思いますよ。父と母そして弟は武道館のバスの出入り口を見つけてアメリカの国旗を振って待っていてくれました。窓越しで見ることができたのですが、今でもそのワンシーンが瞼の裏に残っています。
ヒロ:開会式も参加することはできたんですか?
國米:じつは開会式はロサンゼルスの家のリビングにいました。しかも一人で!部屋を真っ暗にしてテレビで見ていました。空手は五輪の最後の種目だったんですが、日本のルールで一週間前にしか選手村などに入ることができないのが基本でした。しかも米国代表は基本的には個人個人で動いていてチームとしてはあまり動けていませんでした。それでも国がしっかりしていた空手仲間は開会式にでていたところもあるので、国のルールや連盟のゴタゴタに少し巻き込まれてしまった感は否めませんね。
ヒロ:五輪代表になるまでの紆余曲折も聞いているので、更に複雑な気持ちですね。
國米:一人で見ていたというのもあってちょっと悲しかったですね。コロナ禍で空手仲間もコーチもそばにいなく、全部ZOOMだったので。もちろん感染してはいけないという状況だったのでなるべく人を避けていたというのもあります。それでもついに始まったんだなと思うともちろん嬉しかったですし、感動してちょっと涙がこぼれました。
ヒロ:空手が初めて五輪の正式種目に選ばれ、世界は100年に一度のパンデミックという全てが前代未聞という中でやり遂げた國米さんと、こうしてトロントで出会えているのは本当に光栄です。
國米:選手だけでなくボランティアの人も含めて日本のみんながいいオリンピックにしようと思ってくれていたんだと思います。だから東京五輪は成功したんだと思います。武道館ではOBの先輩が隣にいたり、サポートをしてくれるお付きの人は早稲田の後輩だったり、しかも日本語も分かるので、メンタルとフィジカルが一緒にゾーンにうまく入ることができました。場所だけでなく環境もコントロールできたのでとても心地よかったです。なので自分のパフォーマンスには全く後悔ありません。
ヒロ: オリンピックの素晴らしいところですね。良くも悪くもコロナという厳しい環境の中で日本という母国で開催されて、しかも空手は次いつ正式種目になるか分からない。きっと皆さん が悔いのない、完璧な大会にしたいという想いと、一致団結感を感じますね。
國米: はい。ときどき他の選手たちがどう感じていたのか思う時があります。武道館を見渡せばOBの先輩が言葉はなくても静かに見つめていてくれる。後輩や一緒に戦ってきた空手選手たちが一つの会場にいて、私はアメリカの国旗を背負っているわけだけどそれでも応援してもらえている気持ちになりました。日本人だから言葉がなくても伝わるものがありますよね。言葉は交わしていなくてもみんな、やるぞ!ここにいるぞ!そんな想いが一人ひとりから聞こえてくる感じでした。
(聞き手・文章構成TORJA編集部)
國米櫻さん
14歳で米国ジュニア代表。2012年、フランスのパリで開催された世界空手道選手権大会の個人形種目で銅メダルを獲得。2013年、ロシアのサンクトペテルブルクで開催されたワールドコンバットゲームズの女子形種目で銅メダルを獲得した。2019年、ペルーで開催されたパンアメリカンゲームズで優勝。2020年3月、女子形の部においてアメリカ代表として出場することが決定。東京オリンピックは5位。
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。NYの有名サロンやVidal Sassoonの就職チャンスを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。ワーホリ時代から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再びトロントのTONI&GUYへ復帰し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今もサロン勤務を中心に、著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。世界的ファッション誌“ELLE(カナダ版)”にも取材された。salon bespoke
130 Cumberland St 2F647-346-8468 / salonbespoke.ca
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