第5回 南米ペルー(2)アマゾン体験|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』
ペルーの首都リマから飛行機で約3時間、アマゾンの玄関口プエルト・マルドナドに到着する。アマゾン熱帯雨林はペルーの全国土の60%を占める。国の半分以上が熱帯ジャングルだ。そこに日本が2個すっぽり入る、といえばサイズ感がでてくる。だから観光客が入れるのはほんの点にもならない部分と思った方がいい。ガイドなしに足を踏み入れると命取りになること間違いない。
アマゾン川くだりに大荷物は御法度。スーツケースを預けバックパックとカメラだけ持ってボート乗り場までバスで更に奥へ。アマゾン川は世界最長のナイル川に次ぐ川だが、支流を含めるとアマゾン川が最長という説もある。ブラジル、ペルー、ボリビア、エクアドルを通って流れるアマゾン川は幅100mのところが多い雄大な河川だ。約2時間で着いたのは5500平方㎞の広さを誇るタンボパタ自然保護区(Tambopata)に隣接したインフイエルノ村(Infierno)。我々を待っていたのは10代の先住民の少年。お客人数分のバックパックを一人で担ぎ、私達の前をさっさとロッジに向かって歩いて行く。アマゾンのおもてなしが始まった。
ロッジでは前もって鍵の有る部屋を頼んでおいたので、ドアには確かに鍵が掛かるようになっていた。しかし中に入ると廊下側と反対の方は壁が無い。つまり露天なのだ。自然の空気がいっぱい吸えると同時に動物がいつ入って来てもおかしくない、ということだ。私が先に猛獣に〝食われる〟役を引き受け露天側のベッドを使うことに。友達は安全な壁側。でも私のベッドの横にはハンモックがあり森からは鳥の歌声や猿の遠吠えがきこえてアマゾン気分を満喫できそう、と自分に言い聞かせる。村人たちによる歓迎の踊りが催された。大きな生きた亀を担ぎながら足踏みをするだけの簡単な踊りだが観客も一緒になって踊りだした。
食べ物を部屋に置かないことがロッジの鉄則。動物が嗅ぎ付けて入ってくるからだ。安全のため持って来たスナック類はすべてキッチンに預けた。 電気は夜10時で切れる。携帯の充電を済ませ、私は懐中電灯の光でシャワーを浴びた。ベッドには蚊帳がかかっていたものの、ジカ熱予防のため持参した蚊取り線香を一晩中つけ、肌には虫除けを塗って寝る。
ここを拠点にツアーが始まる。ロッジに備え付けの雨靴をはいて早朝、ボートでアマゾン川の支流タンポパタ川を下る。塩分やミネラルを求めて様々な種類のインコやパロットがコルパという粘土の岩壁に群がってやってくる。それを妨害しないように観察小屋から観賞する。自然の中で自由に飛び交う鳥達に感動しながらペットショップの籠のなかのパロットに思いを馳せる。ガイドが細切れにした鶏肉を糸に付けてピラニアを釣ってみせた。私達もトライしたが一匹もつれなかった。ラッコのようなカピバラがサーモンほどの大きな魚をかじっている。仲間達がそばでギャーギャーないても絶対にシェアしない。ワニ科のホワイトカイマンも目だけ水面上にぎょろつかせて私達の前を通り過ぎていく。
セントロ・ニャペ(The Centro Nape)という自然薬の治療クリニックがこの部落にある。治療用に使われている特殊な植物が保護されているところだ。ここは村人達が身近に自然薬で治療を受けられるようにと先住民連合によって設立された療養所。液体状の薬のサンプルをなめてみたが飲み易いとは言いがたい。
夜の散歩は懐中電灯を頼りにガイドについていく。彼は鉈で草を切りながら珍しい昆虫を探す。ここは動物図鑑でしか見たこともないような生き物たちの楽園だ。昆虫採集をするとこの国では逮捕されることを覚えておこう。もちろん植物も取ってはいけない。
一つ記しておこう。ロッジからのアマゾンツアーで一緒になったのは韓国出身の男性ペアとオーストラリアの女性ペア。 私の日常の生活環境になかった同性愛の人達と新しい繋がりが、遥か彼方のこのアマゾンで生まれたのも思い出深い。
石原牧子
オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daughter(CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”は全国巡回記念DVDを2018年にリリース。PPOC正会員、日本FP協会会員。www.makikoishiharaphotography.com
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