日本とカナダの 医師トレーニングの違い|カナダと日本の医療制度の違い
セントマイケル病院の医師、ボビー・ヤナガワと川口保彦です。今回は、日本とカナダにおける医師のトレーニングシステムの違いについてお話しします。
日本では、医学部卒業後に2年間の初期研修が義務付けられています。内科、外科、麻酔科、小児科などの複数の診療科をローテーションし、幅広い基礎トレーニングを受けます。この初期研修が終わると、医師として独立し、診療の制約はほとんどなく、アルバイトも可能です。その後、後期研修(専攻医期間)に進み、3〜5年で専門医資格を取得します。専門医取得後は、病院勤務や開業など自由にキャリアを選択することができます。
一方、カナダでは医学部卒業後、レジデントとして基礎トレーニングを開始します。家庭医は2年間で独立し、内科では一般内科(Internal Medicine)を経て、循環器内科や消化器内科などの各専門分野へと進みます。プログラム終了後は、多くの医師がフェローシップに進み、さらに専門的なトレーニングを積んでからスタッフ医師となります。特に心臓外科のようにスタッフ枠が限られている分野では、熾烈な競争が繰り広げられ、医学部入学前から希望の専門医とネットワークを築き、研究活動を通じて履歴書を強化することは珍しくありません。
日本では、卒後年数が増えるごとに役割や階級が上がっていく印象があり、卒後数年で給与面でも余裕が出てくることが多いのですが、カナダではスタッフ医師とトレーニング医師の間には明確な線引きがあり、給与や立場、責任なども大きく異なります。トレーニング中の立場では、家賃の高いトロントでは生活を切り詰めていても少しの出費で赤字になります。ヤナガワ先生、もう一声お願いします!(笑)
Q: なぜ日本からカナダにトレーニングで来るのですか?
A: 短期間で密度の高いトレーニングを受けられるからです。特にカナダでは心臓外科の手術が集約化されており、私が現在所属する施設では年間1200件程度の手術が行われますが、日本では平均100〜200件、多くても300〜500件程度です。そのため、カナダでははるかに多くの手術に参加することができます。現在日本で活躍している心臓外科医も多くが海外でトレーニングを積んでおり、海外経験は重要なキャリアパスになっています。また、分業が進んでおり外科医は手術、など自分の専門領域の研修に集中できることが大きなメリットです。日本で勤務していた病院では、術後の管理もすべて外科医が担当していたため、緊急手術が重なると非常に大変でした。さらに、日本の専門医資格と語学要件を満たせば、比較的容易にカナダで勤務でき、治安の面でも家族連れで生活しやすいなど、カナダが留学先として人気の理由だと考えられます。日本からだけでなく、同様の理由で各国からカナダにトレーニングに来ています。今の同僚はスイス、サウジアラビア、イタリアなど多岐にわたりスタッフの出身もカナダは勿論のこと、イタリア、インド、日本など本当に国際色豊かな職場です(笑)