12月14日公演 Toronto International Ballet Theatre『くるみ割り人形』出演日本人ダンサーに直撃インタビュー |カナダと日本の架け橋ピープル
本公演では、ロシアのボリショイバレエ団からプリンシパルダンサーを招き、伝統的ロシアスタイルのバレエがお披露目となる。舞台では、ソロでスノークイーンとしての大役を4年連続で務める亀田晴美さん、花のワルツではデュードロップとして2年連続で緒方理穂さんが出演予定。その他、ボリショイバレエ出身の芸術監督タチアナ・ステパノーヴァ氏が東京で直々にオーディションを行い、そこで選抜された才能あふれる4名を含む日本人ダンサー9名が舞台に出演する。
本誌では公演に出演予定の日本人ダンサー、小笠原志さん、田部井瑞歩さん、佐々木萌音さん、堺晴佳さん、緒方理穂さんの5人にお話を伺った。
ー出演されるのは緒方さんは去年に続き2年目、他のみなさんは初めてですよね。今回の公演のオーディションを受けたきっかけを教えてください。
小笠原さん: 以前から海外で踊りたいという気持ちはありましたが、なかなか機会がなく、今回は日本でオーディションがあるということでチャレンジしてみようと思いました。海外で踊るというのは、バレエをやっている人の憧れです。
田部井さん: 高校2生次にアルバータ、3年次にトロントでバレエ留学を経験し、もう一度トロントに行きたいという思いがありました。そこでこのオーディションを見つけ、海外で踊れるチャンスだと思い受けました。
佐々木さん: 私はオーディションではなく東京で開催されたコンクールに出てスカラーシップ賞(出演権)をもらい、ここに来ました。そこにタチアナ先生が審査員として来ており、選抜されたことがきっかけです。
堺さん: 高校を卒業したあとは去年までバレエ留学をしていて、ドイツに渡りましたが怪我などもあり一度帰国し、東京で受けたコンクールで今回の出演枠をもらえました。
緒方さん: 去年は素晴らしい舞台だったので今年も出演することにしました。去年は、クリスマスにトロントでバレエができるというまたとない機会だと思い参加をしましたが、今年は去年の反省点を踏まえて練習に励んでいます。
ー『くるみ割り人形』は世界的にも有名な作品でロシアの伝統的なものや国により様々なスタイルがあると思います。皆さんは幼い頃から同演目にも出演をしてきていると思いますが、『くるみ割り人形』という作品はどういう存在でしたか?
緒方さん: 小さい頃出演したときは兵隊の役で、トゥシューズを履いて踊っていた主役のお姉さんに憧れがありました。年を重ねるにつれ役が変わっていき、昔憧れていた役がもらえたりと、夢の演目ともいえる、クリスマスの定番ですね。
堺さん: 日本だけでなくどこのカンパニーでもやっている演目です。海外のほうが日本よりもバレエが一般に広まっていますが、この時期が近づくとクリスマスの象徴なので観に行こうかな、となるようです。私自身も毎年、キャスト表が出ると『くるみ割り人形』の時期だな、と思いますね。
佐々木さん: 衣装もかわいいし、音楽も素敵だし、お話もハッピーで大好きです。絵本で読んだ『くるみ割り人形』の世界を踊りで表現できるのは嬉しいですね。
田部井さん: 12月は『くるみ割り人形』の時期で、発表会の定番でもありますね。小さい子がやるキャンディーボンボンの役から始まり、毎年出演してだんだんいい役をもらえるようになり、両親も『くるみ割り人形』を見ないと今年を終われないと言っています。毎年、今年が終わるんだなという感覚になります。
小笠原さん: 私はバレエを始めたきっかけが自分からではなく、レッスンで毎回泣いていたそうです。初めてバレエを舞台で観たのが『くるみ割り人形』だったらしく、その舞台で生の金平糖の踊りを食い入るように見ていたらしいです。そのあとからちゃんとレッスンを受けるようになったと聞いています。憧れの演目ですね。
ー芸術監督を務めるタチアナ先生の印象やレッスンの様子、日本との違いなどを教えてください。
緒方さん: 先生は人間的に奥深く、根が優しいですが、バレエのことにはストイックです。「In Ballet, EVERYTHING needs to be perfect.」と至近距離で言ってきたりします(笑)。私は役柄チュチュを着るのですが、「主演とあなたしか履かないからちゃんと足を強くしなさい」と指導してくださいますね。バレリーナとしての経験を直接私たちに経験してほしい、というのをひしひしと感じています。ロシア人の踊り方のスタイルのように、上半身の動きを大きく見せる踊り方が身についている踊り方だと思います。
堺さん: カナダはあまりバレエのイメージはないですが、このスタジオはロシアンスタイルです。ロシアに留学した際に、ロシアンスタイルが一番きついと思いました。見てて惚れるバレエスタイルはロシアです。大変ですが、毎日タチアナ先生のもとでトレーニングして出演できるのはいい経験です。
佐々木さん: 日本でのレッスンと比べて、こちらでは2時間の中にもぎっしり詰まっていて、跳ぶし回るしかなりハードだなと思いました。ステップは派手でなく基礎が合わさった感じで見てる分には難しくないですが、いざやるときついことが分かりました。曲も長いですが、ロシアのワガノアバレエの『くるみ割り人形』を日本で見たときからロシアンスタイルに憧れていたので、嬉しいです。
田部井さん: ロシアンスタイルで曲が速いのと、振り付けもきついです。テクニックが必要ですね。2時間休む間もなく次から次へ踊ります。あとは、実際の舞台を想定して練習するスタジオの床が傾いているのが特徴的でした。
小笠原さん: 先生は優しく人間味あふれていて、厳しいけれど私たちのことを思って注意してくるのがすごく伝わってきますね。愛情をもって叱ってくれている部分が、すごく好きです。演目はとにかく曲が速く、その曲の速さに対して振りもすごく詰め込まれているので、次を考えながら踊らないと転びそうになります。
ーバレエとはどのような存在ですか?
小笠原さん: 高校一年生のとき、精神的に、体調的に続けるのが難しくなった時期はありましたが、結局そこから普通の生活に戻る前に、バレエをやりたい想いが先に出てきましたね。自分が生きていくうえでバレエは必要なものです。
田部井さん: 3歳から一回もやめることなく続けましたが、バレエは厳しい世界で、なんでこんなに頑張ってきたのに…と思うこともあり、高校を卒業してどうしようかと過ごした時期がありました。去年の3月に友達の舞台を見に行った際になんで自分は踊っていないんだと思い、もう一度チャレンジしようと思い、今ここにいます。
ー最後に、読者にメッセージをお願いします。
緒方さん: バレエを見たことない人も、見ると温かい気持ちになれます。私たちからのクリスマスプレゼントです。ぜひ観に来てください。
堺さん: 世界のいろいろな場所から来た人たちが舞台を作り上げているので、ぜひ観に来てください。
佐々木さん: 大きくて広い舞台で、小さい人からお年寄りまで誰でも楽しめると思います。
田部井さん: 見たことある人も見たことがない人も、みんなが楽しめると思います。
小笠原さん: 世界中で愛されていて、知られている感動の舞台です。私たちが練習に励んだ成果を見に来てください。
役柄
小笠原さん: スノー・コールド、花のワルツ・コールド、スパニッシュ
田部井さん: スノー・コールド、花のワルツ・コールド、チャイニーズ
佐々木さん: スノー・コールド、花のワルツ・コールド、パ・ド・トロワ
堺さん: スノー・コールド、花のワルツ・コールド、パ・ド・トロワ
緒方さん: スノー・コールド、花のワルツ・デュードロップ
Toronto International Ballet Theatreは来年の公演に向けて、12月の下旬にはタチアナ先生が再訪日し、新宿村でオーデイションを行うほか、来夏のトロントでのバレエサマーインテンシブプログラムのオーディションも開催を予定しているといるとのことだ。12月14日の公演は現在チケットも絶賛発売中なので、ぜひクリスマス気分を堪能してみてはいかがだろう。
Toronto International Ballet Theatre
バレエ『くるみ割り人形』公演
12月14日(土)2:00pm & 7:00pm
@Meridian Hall(Formerly Sony Centre)
HP: torontoballet.ca
Instagram: @tibtjapan
トロント『くるみ割り人形』公演に日本人ダンサー達が出演 | 芸術監督タチアナ・ステパノーヴァさん&日系バレエダンサー ジェマ・シャオさん 特別インタビュー
芸術監督であるタチアナ・ステパノーヴァさんと日系カナダ人ダンサーのジェマ・シャオさんのお二人に心境を語ってもらった。