楓の森の歩き方 第34歩
ポーテージ(Portage)という単語をご存知ですか?
フランス語の動詞ポーターが由来で、英語では『運搬』『着用』などいくつかの意味があります。
そしてカナダの原野の中でのポーテージとは、カヌーや荷物を陸路で運ぶ技法のことを言い、カヌーをひっくり返して頭上に担いで陸路を歩くスタイルのことを言います。
ポーテージとは危険な急流や滝を避け、倒れた木等を迂回するために取られた歩く方法でした。その昔、先住民の方々が、獣道を利用したり、危険なものを取り除きながら作った生活道がポーテージのトレイルです。先住民の方々が、白樺で作られたカヌーを運び、更にはヨーロッパからの開拓者の毛皮取引や輸出航路として利用してきました。このポーテージのトレイルは、狩猟採集の時代より脈々とと続く歴史的な路なのです。ポーテージの長さが様々で、短いものではビーバーダムを超える為の5mほど、長いものでは13.7mのグランド・ポーテージが有名です。
ポーテージではカヌーを自分の方にひっくり返して載せられるかどうかが鍵となります。まず船首と船尾の中間点に立ち、船縁(ガンネル)を両手でしっかりと持ち、一旦膝の上に持ち上げ、その後一気に翻るように頭上にカヌーを持ち上げます。
もし1人出できない場合は2人でも出来ます。カヌーの船尾を軸に転がすように小屋の形を作り、1人がカヌーの下に入り、肩の上に載せましょう。
もう一つ、ポーテージで必要な技術は、カヌーを担いで様々な地形を歩くことです、例えば、倒れた木や枝を跨ぎ、岩場の多い川床の上を滑らないように歩き、ぬかるんだ泥地や苔で覆われた湿地の上をバランスを取りながら歩くこともしばしばあります。
そして、ポーテージのトレイルがどのようなものであれ、ムース(ヘラジカ)担った気持ちでどんどん前に進んでいかなければいけません!
安心して下さい、長いポーテージの途中には、カヌーを立てかけて、一息つく場所もありますよ。


ポーテージの終わりに重要になる作業は、カヌーをダメージなく水面に降ろすことです。カヌーを持ったまま水の中に入り、カヌーの前後に岩や障害物がないかを確認した後、一気に水面にターンさせて浮かせます。
このカヌーを一人で運搬する行為が、オンタリオでのカヌーの旅の醍醐味と言っても過言ではないと思います。経験したことのない種類の疲労感と達成感がカヌーイストとして、カナダの原野の中へ漕ぎ行った証です。
よく聞かれる質問に、『カヌーで川を下るのは楽しく楽そうだけど、なぜポーテージのようにわざわざ疲れるカヌーの運搬行為を一人でするのか?』という質問があります。
これはマラソンを愛好する人に、なぜ走るのか?と聞いていることと同じです。
そこには、自分の限界点を試すような疲労感の先に、清々しい達成感と辿り着いたことのない美しい光景が待っています。
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Holly Blefgen(ホリー・ブレフゲン)
オンタリオ・アウトドアアドベンチャーズの代表。ナチュラリスト。春から秋にかけてカヌーととトレッキング、冬はテレマークスキーでネイチャーフィールド へ。30年余りに及ぶガイド経験を持ち、オンタリオ州及び日本における文化・歴史・自然にフォーカスしたツアーを通して、クライアントとその情熱を共有することを愉しみにしている。